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「他にはありますでしょうか?」

「えぇ、ありますわ。
まずは、そちらの方に関してですわね。」

セサミン神官様が、面倒だというような顔をグリスフィルドのご子息様へと向けられて...けれど直ぐに無表情となられまして、こちらへと問いかけられました。
問いかけられたお姉様はどの話しをしようかと迷われながら、グリスフィルドのご子息様の後ろで私達を睨み付けつつ、グリスフィルドのご子息様に対しては媚びるような笑みを浮かべる女性に気が付いたご様子ですわ。
忘れておりましたけれど、その方のこともございましたものね。

「プディング様、貴女にも婚約者がおられますわよね?
そちらのグリスフィルドのご子息様のパートナーとして、揃いの腕輪を着けてこの夜会へと参加なさるのは、婚約者様への不義理ではありませんか?
貴女の婚約者様は、本日の夜会にお1人で参加なさっておられますわよ?」

「...あ、そろそろ私の出番でしょうか?
すみません、失礼します。

神官様、私は、クロノヴィス侯爵家の3男ヘーゼルでございます。
一応、コーンスタンチ伯爵令嬢であるプディング嬢の婚約者となっております。
発言してもよろしいでしょうか?」

婚約者の不貞がやっと明らかとなりましたのに、なかなか現れず...また蕩けてらっしゃるのかしら?と、お母様の後ろの方を見てみましたら、ケーキなどの甘味を上品さなどなく乗せられるだけ盛ったお皿を持って嬉しそうに微笑むヘーゼル様がおられました。
ハァ...やはり蕩けてらっしゃいましたのね?
冷たそうな見た目に反して、相変わらず甘いものがお好きなのね...。
皆の視線が自分に向いているのにやっとお気付きになられたようで、キョトンとこちらを見つめてから、悲しそうな寂しそうなお顔をなさいまして...名残惜しそうにお皿を近くのテーブルに慎重に置いてからこちらへと参られましたわ。
えぇ、折角の好機なのですから、今はこちらを優先させるべきだと思いますわよ。
終えた後で、沢山お食べくださいませね?

あらら、ヘーゼル様ったら、一応・・はいらないかと思われますわよ?
ヘーゼル様のお言葉の間、ずっと水晶が光っておりますけれど...きっと、本心なのね。

「へ、ヘーゼル様?!
どうしてこちらにおられますの!?」

「え、招待されてるからですけど...どうして驚いてるの?
というか、招待されていない筈の君こそ、どうしてここにいるのかな?
婚約者である私は君をエスコートしていないし、他の招待された方々も皆様パートナーを伴われているし、他に君をこの夜会でエスコート出来る人はいない筈だけど...?」

「それは、グリスフィルド様がエスコートしてくださいましたの。
婚約者であるマーガレット様のお支度に時間がかかりすぎて困っていると仰られて...代わりに私が共に参りましたのよ。」

「グリスフィルド子息の婚約者であるマーガレット様の代わりに、私の婚約者である君がエスコートを受けたの?」

「えぇ、そうですわ。
ヘーゼル様ったら私のエスコートをお忘れになってましたもの...私、準備していたのに迎えがないから困っていましたのよ?
そしたら、グリスフィルド様が会いに来てくださってお話ししてましたの。
グリスフィルド様もパートナーがいなくて困っているって言うし、同じくパートナーがいなくて困っていた私をエスコートしてくれるって言うからお願いしましたの。」

あらまぁ、お2人とも馬鹿なのかしら?
そうね、馬鹿でなければ、こんな恥知らずなことはしませんわね...ヘーゼル様の目にも、怒りや呆れよりも憐れみばかりが浮かんでらっしゃいますわ。
プディング様、まだ貴族となって日が浅いとは言え夜会に参加するのならば最低限のマナーを知っていなければなりませんわ。
そして、グリスフィルドのご子息様?
貴方は高位貴族の生まれの筈ですのに、どうして最低限のマナーすら知らないのかしら?
お家で、どんな教育を受けておられますの?





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