上 下
9 / 15

9-

しおりを挟む
「おぉ!マーガレット・・・・・・、ミルフィーユ、ここにいたのか。
王太子殿下、ガナッシュ君、この度は巻き込んでしまって申し訳ない。」

「いえ、構いませんよ?
ただ、言葉が通じずに困ってはおりましたが...きちんと説明しても理解してくださらなくて、どうしようかと思っておりました。」

「えぇ、フィーユの愛する姉君を守ることも私の義務であり権利ですから。」

お父様とお母様も無事に到着されましたのね。
馬車には定員がございますから、両親とは馬車が違いましたのよ。
それにしても、お父様?お姉様の名前を呼ぶときに強調なさるのは、グリスフィルドのご子息様への当て付けかしら?
あぁ、お母様、どうかその扇は使わないでくださいませね?
いえ、表情を隠したりなどの通常の使い方であればよろしいのですけれど、どうかもう1つの使い方は慎んでくださいませ。

「さて、うちの可愛いマーガレット・・・・・・を、脅迫や権力などを用いて強引に婚約者としておきながら、このような衆目のある夜会で堂々と不貞ですか...グリスフィルドのご子息は、まだ子息であるというのに随分と偉くなったものですなぁ?

そちらのご令嬢と腕輪を揃いとしているようですが...どうやらその腕輪は、マーガレット・・・・・・とも揃いのようですねぇ?
婚約の段階で愛人など認める筈はないのに、その腕輪は何故そのご令嬢の腕にあるのでしょうか?
そもそも、婚約者であるマーガレット・・・・・・の名前もきちんと覚えていないようですし、この婚約は是非とも破棄することにいたしましょう。
いやぁ、諸々破棄に足る証拠を集めていたのだが...このように堂々となさっていただけて本当に助かりました。
どうも、ありがとうございました。」

お母様、自信満々に振る舞う格好よいお父様に見惚れるお気持ちは分かりますけれど、もう少し後にしてくださいませ。
恋する少女のようで可愛らしいのですけれど...場違いですわよ。

そしてお父様ったら、グリスフィルドのご子息様のことを随分と煽りますわね。
顔を真っ赤にして、お父様に怒鳴りつけたいご様子ですけれども、何も言い返せないわよね...腕輪やお父様、そしてお姉様と私を行ったり来たりする視線でよく分かりますわ。
ご自分で先程仰っておられましたものね、お姉様が夜会に来ないと思っていたのだと...招待されたのはお姉様ですのに、勘違いも甚だしいわ。

「一応、集めておいた証拠を出しておきますわね?
こちら、グリスフィルドのご子息様から本日届きましたの。
ご本人様曰く...先触れ?だったのだそうですけれど、宛先が婚約者であるマーガレットではなく、妹の方のミルフィーユとなっておりますのよね。
婚約者であるマーガレットではなく、その妹のミルフィーユ宛に送られてきた意味が分かりませんのよね。
それに、中身を読んでも意味不明なことしか書かれておりませんのよ。
まるで、ミルフィーユが自分の恋人であるかのように書かれておりますの。
ミルフィーユは、貴方に名前を呼ぶことすら許してはおりませんのに...気持ちの悪いこと。
気持ちが悪くて、読んでから直ぐにでも燃やしてしまいたくなりましたけれど、証拠としてこうして保管しておきましたの。
伯爵様もお読みになられますか?」

「おや、よろしいのですかな?
では、失礼して...読ませていただきます。」

伯爵様ったら、いつの間にお母様の後ろに移動なさっておられましたの?

「ほぅほぅ、たしかに...これは気持ちが悪いですなぁ。
あ、大事な証拠品ですから、お返しいたします。」

気持ちが悪いと言う割には、楽しそうにしておられますわよ?
お母様もなんだか楽しそうに見えますし、追い詰めるのがそんなに楽しいのかしら?
私は不愉快になるだけなのですけれど...まだ子供だということかしら。

「さて、そちらのプディング嬢は...婚約者様はどうされたのですかな?
私は、グリスフィルドのご子息様もプディング嬢のどちらも招待しておりませんが?」

「私、いつも参加しておりましたわよ。」

「婚約者様のパートナーとして...でしょう?
そちらの、グリスフィルドのご子息様も同様だった筈です。
どちらも、私は婚約者様を招待してはおりますが、ご本人を招待したという記憶はありませんから。
さて、お2人はお引き取り願えますかな?」

「そんな?!折角来ましたのに、酷いですわ!」

ドレスをフワッとさせながら座り込んで、まるで悲劇のヒロイン気取りですわね...可愛くも儚くもありませんけれど。
主催なされている伯爵様が招待していないと断言なさっておられますのに、この場に残れる筈がありませんわ。





*
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

突然伯爵令嬢になってお姉様が出来ました!え、家の義父もお姉様の婚約者もクズしかいなくない??

シャチ
ファンタジー
母の再婚で伯爵令嬢になってしまったアリアは、とっても素敵なお姉様が出来たのに、実の母も含めて、家族がクズ過ぎるし、素敵なお姉様の婚約者すらとんでもない人物。 何とかお姉様を救わなくては! 日曜学校で文字書き計算を習っていたアリアは、お仕事を手伝いながらお姉様を何とか手助けする! 小説家になろうで日間総合1位を取れました~ 転載防止のためにこちらでも投稿します。

処理中です...