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4 : 成績が良いのは王子妃教育の賜物ですわ。

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「...筆跡鑑定の方は終わりました。
ですが、この紙の束につきましては、後日改めさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?
今回とは関係の無い犯罪の記録ですので...別件として扱わせてください。」

「...そうか、分かった。
まずは、筆跡鑑定の結果を...。」

「はっ!」

鬼気迫るオーラの漂う文官さんは、その後も少しの間何やらブツブツと呟いておられましたが、おもむろに紙の束を2・3束纏めて持ち1つ深呼吸をなされてから、陛下に対して許可を請われました。
違法な顧客リストを見付けたのに、今回の裁判には関係無いからと放置してしまえば、証拠を隠滅されてしまうかもしれませんわ。
そうなれば、犯罪を犯した人間を野放しにしてしまいますものね。
リストに載っている者を、1人も逃さず捕らえていただきたいですわ。
ロリコン死すべし!ですわ!
まぁ...ロリコンだからと言いましても、死罪にはなりませんけれど...。

「私は、王城に勤めております、文書鑑定課課長のロベルト・シグ・イージスタと申します。
この手紙の内容に関しては別の人が書いておりますが、この署名に関してはこのノートの持ち主である、フェリス・ルビスの書いたもので間違いありません。」

「ブハッ!もぉー!苦しかったのよぉ?
あっ!私はぁ、そんなものぉ、書いてませんわぁ?
貴方ってぇ、きっとぉ、ユーティリカの手先ねぇ?!
皆でぇ、いじめるなんてぇ、酷いわぁ!!」

「...口を開く許可を出した覚えは無い。」

「んもぉー!私はぁ、やってないのよぉ?」

「そして、ユーティリカというつづりが間違えております。
これには、ユーテイリカと書かれております。
そして、この署名はフルネームではありません。
ユーティリカ・シグ・ルーベリンでは、不完全です。
これではユーティリカ様の署名にはなりえません。」

「え?ユーティリカの名前はぁ、ユーティリカ・シグ・ルーベリンでしょお?
間違えてなんてぇ無いわよぉ?
殿下にも確認したものぉ。」

「...綴りが合っているのか、第2王子に確認したのか?」

「そおよぉ?フルネームでえ、きちんとぉ、書かないとぉ?偽物になるってぇ、殿下が言ったものぉ。」

あら、ウフフ、自爆ありがとうございます!
そして、見事に殿下も被爆されましたわね。
相変わらずイライラする喋り方ですけれど、グッと我慢して聞いた甲斐がありましたわ。
教授宛てのお手紙を拾われて、私の署名を偽造することを殿下が入れ知恵されましたのね?
これで、この婚約は破棄・・ではなく、無かったこと・・・・・・にしていただけそうですわね。
...不幸中の幸いですわ。
それにしても、殿下...仮にも婚約者である私の正式なフルネームを、ご存知ありませんでしたの?
簡単なことですのに、殿下には覚えられませんでしたのね。
ユーティリカは名前で、シグは公爵の血筋を表していて、ルーベリンは領地の名称(苗字)で、誰しも同性の親の名前をミドルネームとして名乗りますわ。
ですから、私の正式なフルネームは、ユーティリカ・シグ・マーレイア・ルーベリンとなりますの。
平民の方は名前と苗字のみと短いですけれど、貴族には名前と爵位とミドルネームと苗字がありますからとても長いのです。
署名はこの正式なフルネームでなければ意味を成しませんから、招待状や要請などの正式なお手紙を書く際には、少々面倒ですけれど正式なフルネームが必要ですのよ?
家族同士などのやり取りであれば必要ありませんけれど...教授にお手紙を出す際には、フルネームが必須ですわ。





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感想欄にて教えていただき確認しましたところ、29話のみ2025年に公開する設定になっておりました。
ご指摘くださいました皆様、ありがとうございました!
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