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2 : わざわざ足をかけて転ばせるなんて面倒なこといたしません。
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「俺を愚弄するな!!」
「第2王子殿下ともあろうお方が、真実を語っている者を容易く偽りだと断じるのは浅はかに過ぎます。
ユーティリカ様やその周囲の方々のお言葉に怒りを向けるだけでなく、皆様のお言葉から我が身を省みられるべきです。」
片や王族、片や平民。
身分を考えれば、間違いだと判断されることもあるかもしれません。
けれど、彼のしている発言は、何も間違ってはおりませんわね。
それに、殿下による迷惑を被っていた同級生の方々が続々と援護してくださいっておりますもの...数というのは強いですわ。
持つべきは、腹黒い策士な知人と、優しく思慮深い友人達ですわね。
生憎、殿下の周りには権力に媚びる...有象無象ばかりが取り巻いておられますものね。
耳に痛い忠告は無視して、取り巻き方の耳触りの良い言葉ばかりに耳を傾けられていたのですもの、傲慢無礼な阿呆が出来上がっても不思議はありませんわよね。
「静粛に...。」
「学園長、ユーティリカ嬢の持っているような木槌はありませんか?」
「王妃陛下、私には予備がありますので、これをお使いになられますか?」
「あら、よろしいの?貸して頂けると有難いわ。
こうも一斉に話されますと、収拾がつかなくて...声も張り上げすぎると枯れてしまいますし...。」
「では、私が...。」
陛下が何度も静かにするように声を上げてましたけれど、皆様少しヒートアップしてしまっておりますもの...欠き消されてしまいましたのよね。
ハァー、これでは仕方ありませんわ。
この木槌は両陛下にお使いいただいて、私は予備の方を使いましょう。
この予備は、依頼した職人がなぜか繊細な彫刻を施してくださいましたから、あまり使いたくなかったのですけれどね?
なんだか勿体無いじゃない?
私の大好きな不思議な国の女の子の童話をモチーフにした彫刻なのですもの、お部屋で大事に飾りたかったのですけれど...仕方ないわ。
「ユーティリカ嬢、ありがとう。」
「この程度のこと、構いませんわ。
お役に立てましたならば、幸いでございます。」
「この雌狐の持ち物を使うなど、何か仕込まれていたらどうするのですか??!」
「ずっと思っていたのだが、最初から雌狐雌狐と喚いてばかり...礼儀にも欠けているし、なにより五月蠅いぞ?
王族としての教育も未了できちんとした礼儀も知らぬお前が、礼儀正しく王子妃教育もとうに済ませたユーティリカ嬢をその様に罵倒して良いと本気で思っているのか??」
「ッ?!」
「お前は、ユーティリカ嬢が罪を犯したのだと言っているが、私にはお前が罪を犯しているとしか思えぬ。
今回の訴えについても、ユーティリカ嬢に非はない。
他に訴えがあるのか?」
「?!あります!!」
「それもお前やその女性の勘違いや思い込みであろうが、一応聞いておこう。
さあ、申せ。」
学園長様が取りに来てくださいましたのでお渡しして、私は予備を取り出します。
これは、空間魔法を付与したポーチですが、何か問題でも?
私の自作でございますので、両陛下であろうとも誰にもあげませんわよ?
木槌を手にした陛下は、表情は変わらず少し嬉しそうなオーラをしていますわね。
それほど咽が痛かったのかしら?
陛下も王妃陛下も、王族という自らの身分を傲らず、謝罪も感謝もしてくださいますところは、好意が持てますわよね。
王命による婚約については、恨んでおりますけれど...。
ハァー、殿下ったら、まだ続けられますのね?
次は何を罪だと捏造されますのかしら??
少し楽しみになってきましたわ。
*
「第2王子殿下ともあろうお方が、真実を語っている者を容易く偽りだと断じるのは浅はかに過ぎます。
ユーティリカ様やその周囲の方々のお言葉に怒りを向けるだけでなく、皆様のお言葉から我が身を省みられるべきです。」
片や王族、片や平民。
身分を考えれば、間違いだと判断されることもあるかもしれません。
けれど、彼のしている発言は、何も間違ってはおりませんわね。
それに、殿下による迷惑を被っていた同級生の方々が続々と援護してくださいっておりますもの...数というのは強いですわ。
持つべきは、腹黒い策士な知人と、優しく思慮深い友人達ですわね。
生憎、殿下の周りには権力に媚びる...有象無象ばかりが取り巻いておられますものね。
耳に痛い忠告は無視して、取り巻き方の耳触りの良い言葉ばかりに耳を傾けられていたのですもの、傲慢無礼な阿呆が出来上がっても不思議はありませんわよね。
「静粛に...。」
「学園長、ユーティリカ嬢の持っているような木槌はありませんか?」
「王妃陛下、私には予備がありますので、これをお使いになられますか?」
「あら、よろしいの?貸して頂けると有難いわ。
こうも一斉に話されますと、収拾がつかなくて...声も張り上げすぎると枯れてしまいますし...。」
「では、私が...。」
陛下が何度も静かにするように声を上げてましたけれど、皆様少しヒートアップしてしまっておりますもの...欠き消されてしまいましたのよね。
ハァー、これでは仕方ありませんわ。
この木槌は両陛下にお使いいただいて、私は予備の方を使いましょう。
この予備は、依頼した職人がなぜか繊細な彫刻を施してくださいましたから、あまり使いたくなかったのですけれどね?
なんだか勿体無いじゃない?
私の大好きな不思議な国の女の子の童話をモチーフにした彫刻なのですもの、お部屋で大事に飾りたかったのですけれど...仕方ないわ。
「ユーティリカ嬢、ありがとう。」
「この程度のこと、構いませんわ。
お役に立てましたならば、幸いでございます。」
「この雌狐の持ち物を使うなど、何か仕込まれていたらどうするのですか??!」
「ずっと思っていたのだが、最初から雌狐雌狐と喚いてばかり...礼儀にも欠けているし、なにより五月蠅いぞ?
王族としての教育も未了できちんとした礼儀も知らぬお前が、礼儀正しく王子妃教育もとうに済ませたユーティリカ嬢をその様に罵倒して良いと本気で思っているのか??」
「ッ?!」
「お前は、ユーティリカ嬢が罪を犯したのだと言っているが、私にはお前が罪を犯しているとしか思えぬ。
今回の訴えについても、ユーティリカ嬢に非はない。
他に訴えがあるのか?」
「?!あります!!」
「それもお前やその女性の勘違いや思い込みであろうが、一応聞いておこう。
さあ、申せ。」
学園長様が取りに来てくださいましたのでお渡しして、私は予備を取り出します。
これは、空間魔法を付与したポーチですが、何か問題でも?
私の自作でございますので、両陛下であろうとも誰にもあげませんわよ?
木槌を手にした陛下は、表情は変わらず少し嬉しそうなオーラをしていますわね。
それほど咽が痛かったのかしら?
陛下も王妃陛下も、王族という自らの身分を傲らず、謝罪も感謝もしてくださいますところは、好意が持てますわよね。
王命による婚約については、恨んでおりますけれど...。
ハァー、殿下ったら、まだ続けられますのね?
次は何を罪だと捏造されますのかしら??
少し楽しみになってきましたわ。
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