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プロローグ

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「ユーティリカ・シグ・ルーベリン!!
これから、お前の犯した愚かな罪を断罪してやる!!
フハハハハ!!
この俺から逃れることなど出来はしない!!
コソコソと隠れていないで、潔く、前に出て来い!!」

そんなに大声を張り上げなくとも、ここは音の拡がりを考えて建てられた講堂ですのよ?
壇上にて少し大きめの声を出すだけで、講堂内の人間全てに聞こえておりますわ。
むしろ、響き過ぎていてなんだか耳障りですし、耳や頭が痛みますわ...。

現在は、私達の卒業式も無事に終わりまして、この後開かれる卒業記念パーティーの準備をする為に、友人達と講堂から出ようとしていた所ですの。
それなのに突然、荒い金髪をピッチリと撫で付けたオールバックに、円らな緑の目をキッと限界まで見開いた我が国の第2王子殿下が、勝手に檀上に出てきたかと思うと喚き散らし始めましたのよ?
あらあら、本当に正真正銘のおバカさんなのね...と、呆れるしかありませんわよね。
ハァー......こればかりは仕方ないのかもしれないわね...今、わたくしが出て行かなければ、あのおバカさんはずーっとここで皆様の足止めをし続けることでしょう。
そうなれば、卒業生や在校生のみならず...お忙しい中時間を遣り繰りしてお越しくださった来賓の皆様のご迷惑にもなってしまいますわ。
その辺りのことをあのおバカさんは何も考えていないのでしょうけれど、今後の私の評判にも関わって参りますし...早めに収めなければなりませんわね。

「......わたくしはここにおりますわ。
それで、私に何のご用でしょうか?
シルベルト第2王子殿下??」

「遅いぞ?!この俺を待たせるなど、ありえん!!
皆の者、良く聞け!
私はぁ!!この雌狐との婚約破棄をここに宣言する!!」

「まぁ、殿下は、私とではなく雌狐と婚約されておりましたの??
私、知りませんでしたわ!
知っておりましたら、殿下の数々の愚行の尻拭いなどをせずに済みましたのに...それならばそうと、早く教えておいてくださいませんか?」

きっと、おバカさんの言っている雌狐とは私のことなのでしょうけれど...指は指されておりますが名指しされてはおりませんので、ここはすっとぼけておきましょう。
本当に、学園での勉学に加えて王子妃教育を受けなければならない身でありながら、オツムのお粗末なおバカさんの尻拭いばかりさせられて、面倒な日々でしたわ。
ハァー、こんなことを仕出かしたのですもの...王家へと多少の慰謝料を申請したとしても、きっと文句など言われませんわよね?
今はそれだけが楽しみですわ!

「!!!何を言ってるんだ!!
雌狐はお前に決まっているだろうが!!
とぼけた顔をしやがって!!
お前が、私の!!愛しのフェリスにしたことは、涙ながらのフェリスの訴えから、全て知っているんだぞ!!!
観念して!!フェリスに誠心誠意詫びたらどうなんだ?!!」

本当にうるさい方ですこと...大声でしか話せないのかしら?
それと、私は一応貴方の婚約者ですのよ?
それなのに、″愛しのフェリス″だなんて...世迷言をよくもまぁ堂々と言えましたわね。
ハァー、それにしても、ピンクブロンドの髪をギュルッギュルにきつく巻いた縦ロールに、淡いピンク色の目をした...だらしない笑みを浮かべた伏せ目がちな横の女性がフェリスというのかしら?
ここは勉学に励むべき学園だというのにも関わらず、はしたなくも胸元をあらわにした女生徒の腰を我が物顔で抱いて...堂々と不貞をしていたと宣言するなど、恥ずかしくないのかしら?
私がしたことを全て知っているだなんて仰いましたけれど、何を知っていると言うのかしらね??
私、その方のお名前を噂で聞いたことはありましたけれど...特に興味もありませんでしたし、顔までは存じませんでしたわよ。





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