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1 : ハジマリ
ハジマリ1
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うーん、すこぶる体が痛い。
信号が青になったから横断歩道を渡ろうとしていたら、信号無視をした車が突っ込んできたっていうことは覚えてるけど...この沸き上がる記憶を見る限り、どうやら異世界に飛ばされてしまったみたいだね。
にしても、この状況には驚いたわー。
「いちゃい...。」
様々な記憶が次々と沸き上がってくるのが収まってから、右を下にして寝ていたらしい身体を、なんとか最小限の傷みになるように少しずつ動かして仰向けになる。
ゆっくりと息を吸って吐いてと繰り返してから落ち着いて記憶を辿ってみれば、身重の母や多忙な父に全く相手をしてもらえなくなったことにより、使用人達相手に癇癪を起こしてばかりいたワタシは、どうやら両親に見限られたってことらしい。
でもさぁ?子供が寂しくて癇癪を起こすのって、普通のことなんじゃーないのかな?
ワタシって、まだ3歳の幼子なんですよねー。
このくらいの年齢って、親が恋しくて親を求めるのは当たり前のことじゃない?
身重とは言え、まだ初期の段階から食事もお茶の時間も別々になるなんて可笑しくない?
ワタシの記憶的に、母の悪阻が酷いって事も無さそうなんだけど?
少しは娘のことも...あー、あの両親なら考えないんだろーね。
両親との記憶なんて、両親は話してるけどワタシだけは静かーにご飯食べてて、こっちが話しかけても
『あら、そうなの。』
とか、
『ほぉー、そうか。』
とか...生返事されるだけっていう、残念すぎる記憶くらいしか思い出せないんだもん。
ま、つまり、自分達の都合に合わせられない幼子に愛想を尽かして、領地に捨て置くつもりってことかな。
ハハハ、これは最低な親だね。
それにしてもさ?
馬車で領地に送るにしても、通常ならば1ヶ月はかかるらしい道程を2週間で...なんていう、大人でも厳しい強行軍にするとか、娘を殺そうとしたとしか思えないよね。
まぁ、そんな両親に義理立てする必要も無いわけだし、今後面倒なことを言われたとき用の証拠として、全ての記憶をキッチリと記憶玉に残しておこうかな。
ちゃっかり、今までのもチラホラ残してたみたいだし...ま、ワタシとしては魔法の練習のつもりだったみたいだけど、これ全部、見事に虐待の証拠になるんだよねー。
ワタシ、グッジョブ!!
「こりょしょうちょしゅりゅのにゃら、いしゃぎよきゅ、ちんでしゃちあげましゅわ!
[殺そうとするのなら、潔く、死んで差し上げますわ!]
でも、しゃいだいげんにていきょうしましゅわ!
[でも、最大限に抵抗しますわ!]
こんにゃいえ、ちょっちょちょ、でちぇいっちぇやりゅんぢゃから!!
[こんな家、とっとと、出ていってやるんだから!!]」
3歳にしては絶望的な滑舌はこの際置いておいて、先ずは、頼りになる大人の味方と諸々の情報を得ないといけないよね。
うーん、乗ってきた馬車は、町や街に行き着く度に小さくなったり大きくなったり粗末になったりと変わっていったし、この屋敷に連れてきてくれた馬車はもう戻った頃だろう。
癇癪の矛先となっていたからなのか使用人は誰一人として着いてこなかったし、宿で寝るときも野宿の時も雇われの馭者にも手助けなんてしてもらえなかった。
なんでも、
『使用人の有り難みを分からせなければならないから、自分のことは自分でやらせろ!』
って命じられてたらしいんだよねー。
いや、ワタシ、まだまだ3歳だよ?
なしてそんなに過酷なのか...3歳の頃に、自分は出来ていたのかねぇ?
へっ!怪しいもんだ。
最後とその1個前の馭者さんは、
『こんな幼い子に、こんなにも過酷な長旅を1人でさせるなんて...どんな鬼畜だよ。
まさか、この子を殺そうってことか?』
ってよく苛立たしげに呟いてたけど、ワタシには優しかったなぁー...ありがたや。
予算の都合もあってお風呂には入れなかったけど、汚れてるし疲れただろうからってお湯に浸した布で優しく身体を拭いてくれたの。
野宿の時はワタシを毛布で包んでから抱っこして眠ってもくれたし、馬車に乗ってると誰も支えてくれない3歳児はコロコロと転がるからって椅子には座らせず、床に絨毯を4つ折りくらいにして敷いてからクッションも沢山敷き詰めてくれたの。
なんて行き届いた配慮なの?!って今なら思うけど、あの時はただただ...あ、これだと座りやすいなーとしか思ってなかった。
ちゃんとお礼を言えば良かったね。
「起きておられましたか...。」
おぉ、きっと殺す気だろう強行軍で馬車に揺られてきた満身創痍の3歳の幼子相手に、清々しい程に立派な蔑む目ですね。
さてさて、どんな説明を受けていることやら...ま、あっちからは物凄い癇癪を起こす悪い子とでも聞いてるんでしょーけど。
でもさ?ワタシがしたことって、ワガママを言ってはそのワガママが通らなくてわめき散らしたり、地団駄踏んだり、故意的に自分の服を汚したりしてただけなんだけど?
破壊行動とか、使用人を傷付けたりとかはしてない筈よ?
まぁ、洗濯する人には申し訳ないことをしたとは思うけど...それ以外の使用人には特になにかをしたってことはないよね?
ワガママは言ってたけど実現は殆どしてないし、地団駄踏んでわめき散らしてるだけだもん。
ね、実害は何も無いでしょ?
*
信号が青になったから横断歩道を渡ろうとしていたら、信号無視をした車が突っ込んできたっていうことは覚えてるけど...この沸き上がる記憶を見る限り、どうやら異世界に飛ばされてしまったみたいだね。
にしても、この状況には驚いたわー。
「いちゃい...。」
様々な記憶が次々と沸き上がってくるのが収まってから、右を下にして寝ていたらしい身体を、なんとか最小限の傷みになるように少しずつ動かして仰向けになる。
ゆっくりと息を吸って吐いてと繰り返してから落ち着いて記憶を辿ってみれば、身重の母や多忙な父に全く相手をしてもらえなくなったことにより、使用人達相手に癇癪を起こしてばかりいたワタシは、どうやら両親に見限られたってことらしい。
でもさぁ?子供が寂しくて癇癪を起こすのって、普通のことなんじゃーないのかな?
ワタシって、まだ3歳の幼子なんですよねー。
このくらいの年齢って、親が恋しくて親を求めるのは当たり前のことじゃない?
身重とは言え、まだ初期の段階から食事もお茶の時間も別々になるなんて可笑しくない?
ワタシの記憶的に、母の悪阻が酷いって事も無さそうなんだけど?
少しは娘のことも...あー、あの両親なら考えないんだろーね。
両親との記憶なんて、両親は話してるけどワタシだけは静かーにご飯食べてて、こっちが話しかけても
『あら、そうなの。』
とか、
『ほぉー、そうか。』
とか...生返事されるだけっていう、残念すぎる記憶くらいしか思い出せないんだもん。
ま、つまり、自分達の都合に合わせられない幼子に愛想を尽かして、領地に捨て置くつもりってことかな。
ハハハ、これは最低な親だね。
それにしてもさ?
馬車で領地に送るにしても、通常ならば1ヶ月はかかるらしい道程を2週間で...なんていう、大人でも厳しい強行軍にするとか、娘を殺そうとしたとしか思えないよね。
まぁ、そんな両親に義理立てする必要も無いわけだし、今後面倒なことを言われたとき用の証拠として、全ての記憶をキッチリと記憶玉に残しておこうかな。
ちゃっかり、今までのもチラホラ残してたみたいだし...ま、ワタシとしては魔法の練習のつもりだったみたいだけど、これ全部、見事に虐待の証拠になるんだよねー。
ワタシ、グッジョブ!!
「こりょしょうちょしゅりゅのにゃら、いしゃぎよきゅ、ちんでしゃちあげましゅわ!
[殺そうとするのなら、潔く、死んで差し上げますわ!]
でも、しゃいだいげんにていきょうしましゅわ!
[でも、最大限に抵抗しますわ!]
こんにゃいえ、ちょっちょちょ、でちぇいっちぇやりゅんぢゃから!!
[こんな家、とっとと、出ていってやるんだから!!]」
3歳にしては絶望的な滑舌はこの際置いておいて、先ずは、頼りになる大人の味方と諸々の情報を得ないといけないよね。
うーん、乗ってきた馬車は、町や街に行き着く度に小さくなったり大きくなったり粗末になったりと変わっていったし、この屋敷に連れてきてくれた馬車はもう戻った頃だろう。
癇癪の矛先となっていたからなのか使用人は誰一人として着いてこなかったし、宿で寝るときも野宿の時も雇われの馭者にも手助けなんてしてもらえなかった。
なんでも、
『使用人の有り難みを分からせなければならないから、自分のことは自分でやらせろ!』
って命じられてたらしいんだよねー。
いや、ワタシ、まだまだ3歳だよ?
なしてそんなに過酷なのか...3歳の頃に、自分は出来ていたのかねぇ?
へっ!怪しいもんだ。
最後とその1個前の馭者さんは、
『こんな幼い子に、こんなにも過酷な長旅を1人でさせるなんて...どんな鬼畜だよ。
まさか、この子を殺そうってことか?』
ってよく苛立たしげに呟いてたけど、ワタシには優しかったなぁー...ありがたや。
予算の都合もあってお風呂には入れなかったけど、汚れてるし疲れただろうからってお湯に浸した布で優しく身体を拭いてくれたの。
野宿の時はワタシを毛布で包んでから抱っこして眠ってもくれたし、馬車に乗ってると誰も支えてくれない3歳児はコロコロと転がるからって椅子には座らせず、床に絨毯を4つ折りくらいにして敷いてからクッションも沢山敷き詰めてくれたの。
なんて行き届いた配慮なの?!って今なら思うけど、あの時はただただ...あ、これだと座りやすいなーとしか思ってなかった。
ちゃんとお礼を言えば良かったね。
「起きておられましたか...。」
おぉ、きっと殺す気だろう強行軍で馬車に揺られてきた満身創痍の3歳の幼子相手に、清々しい程に立派な蔑む目ですね。
さてさて、どんな説明を受けていることやら...ま、あっちからは物凄い癇癪を起こす悪い子とでも聞いてるんでしょーけど。
でもさ?ワタシがしたことって、ワガママを言ってはそのワガママが通らなくてわめき散らしたり、地団駄踏んだり、故意的に自分の服を汚したりしてただけなんだけど?
破壊行動とか、使用人を傷付けたりとかはしてない筈よ?
まぁ、洗濯する人には申し訳ないことをしたとは思うけど...それ以外の使用人には特になにかをしたってことはないよね?
ワガママは言ってたけど実現は殆どしてないし、地団駄踏んでわめき散らしてるだけだもん。
ね、実害は何も無いでしょ?
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