上 下
16 / 23
妹の方が良いと婚約を破棄されました。え、本当に?!

1

しおりを挟む
「申し訳ないのだが、君との婚約を破棄させてもらう。」

女癖の悪い貴方との婚約を、そちらから破棄してくださるのはとても嬉しいですわ!
どんなに有効な証拠を揃えても、何人もの女性と不貞を行っておられるのだと何度訴えても、公爵家の権力でもって軽く揉み消されましてしまいますのよね。
申し訳ないと仰っておられますけれど、全く申し訳なさそうに見えないのは何故かしら?
ここへは謝罪にきた筈ですのに、こうしてソファにだらしなく座り居丈高な態度をとられるだなんて、何をお考えなのでしょうか?
普段の言動から垣間見えてはおりましたけれど、公爵子息であるから自分は偉いと勘違いしているみたいですわね。
スペアですらない三男ですから、伯爵家を継ぐ私と婚姻させることにより体裁を保とうとして、殆ど無理矢理に結ばれた婚約でしたけれど、それを破棄してこの方はどうなさるのかしら?

「...何故でしょう?」

一応、理由を聞いておきますわね。
私にも理解できる内容ならば良いのだけれど...この方の思考回路は分かりませんわ。

「理由?あぁ、一応説明が必要か...。
君にも理解できるように簡単に言うと、君の妹君と婚約を結ぶことにしたからだ。」

「そうですか......え、正気ですか?!」

あぁ、そういう...ん?ちょっと待ってくださいませね?!
私の妹と婚約を結ぶことにしたですって??
理解できる範囲を軽々しく飛び越えないでくださいませ!
頭がおかしくなったとしか思えませんわ。

「正気に決まっているだろう!
失礼だぞ?」

失礼?いいえ、貴方が馬鹿な発言をなさったのは明白なのですから、正気を疑われるのは仕方のないことでしょう?
そもそも、私には既に婚約者がいたにも関わらず、存分にお家のお力をお使いになられて無理矢理に結ばれた婚約を、理不尽にもそちらから破棄されるのですよ?
全ての責はそちらにありますのに、とうしてこう偉そうなのかしら?
無理をして結ばれた姉との婚約を破棄なさるのに、その妹と婚約など結べる筈がありませんわ。

「私の妹は、まだ、生後半年ですのよ!
それなのに、貴方との婚約など、たとえ公爵家のお力をお使いになられたとしても結べる筈ありませんわ。」

そして、私が貴方の正気を疑う一番の理由は、私の妹が生まれたばかりだからですわ!
生まれたてのホニャホニャした状態から大分成長いたしましたので、首も座り、1人で座ることも出来るようにはなりましたけれど、まだ生後半年なのですよ?
婚約の可能な年齢ではありませんもの...頭が可笑しいとしか言えませんわ。

「君の妹君は、かの有名な魔女マグナレーダ殿の娘だろう?
我が家に利益をもたらすのは妹君の方だ。」

えぇ、たしかに、マグナレーダは有名な魔女ですし、妹の母ですわ。
...私の母でもありますけれども。

私が5歳の誕生日を迎えた直ぐ後に、とある教会の孤児の中から魔女見習いが現れまして、母はその方の教育の為にと、その教会へと足を運んでおりましたの。
それから10年経って、魔女見習いがやっと一人前の魔女となられましたので、2年前に我が家へと戻ってきましたのよね。
5歳以前の記憶は朧気ですし、母からの私に宛てた手紙などが来ることもありませんでしたわ。
父を含めた周囲の方々から、私の母は遠いところに行ったのだと言い聞かされておりましたから、10年も経てば母は亡くなったのだと理解しておりましたの。
今更、魔女見習いの教育をしていたから側にいなかったのだと聞かされましても、恋しい母とは思えませんわ。
あ、母って生きてたのね?と、そのことはとても喜ばしいと感じましたけれどね?
父や使用人による説明が大雑把すぎましたし、母も手紙くらいは送れたのではないかと思いますもの。
まぁ、私のことなどどうでもよろしかったのでしょうけれど...一応母として認識して欲しかったのならば、多少は努力していただきたいものですわ。
ま、妹を生んでくださったことには感謝しておりますのよ?
無邪気に懐いてくれる妹は、とても可愛いですもの。





*
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

(完)私を裏切る夫は親友と心中する

青空一夏
恋愛
前編・中編・後編の3話 私を裏切って長年浮気をし子供まで作っていた夫。懲らしめようとした私は・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風。R15大人向き。内容はにやりとくるざまぁで復讐もの。ゆるふわ設定ご都合主義。 ※携帯電話・テレビのある異世界中世ヨーロッパ風。当然、携帯にカメラも録音機能もありです。

たまに目覚める王女様

青空一夏
ファンタジー
苦境にたたされるとピンチヒッターなるあたしは‥‥

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

(完)愛人を作るのは当たり前でしょう?僕は家庭を壊したいわけじゃない。

青空一夏
恋愛
私は、デラックス公爵の次男だ。隣国の王家の血筋もこの国の王家の血筋も、入ったサラブレッドだ。 今は豪商の娘と結婚し、とても大事にされていた。 妻がめでたく懐妊したので、私は妻に言った。 「夜伽女を3人でいいから、用意してくれ!」妻は驚いて言った。「離婚したいのですね・・・・・・わかりました・・・」 え? なぜ、そうなる? そんな重い話じゃないよね?

処理中です...