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可及的速やかに、離婚したい。
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本日、式を執り行い婚姻したばかりの私は、可及的速やかに離婚したいのです。
あら、折角婚姻したというのに何故なのかって?
そんなの簡単なことよ!
私は、私の夫となった男のことが大嫌いなの。
貴女は、好きになれると言うの?
招待された夜会で、婚約者以外の女性と踊るのは普通にあることよね。
けれど、この男は、婚約者には諸事情あって参加できなくなったと連絡しておいて、婚約者以外の女性をエスコートしてきて、早々に2人で密室に籠るのよ?
それも、主催者への挨拶の前でしたから慌てていたのか、きっと盛大に乱れたのであろうことが丸分かりな格好で出てきましたのよ?
複雑に結い上げられていた筈の髪は簡単に纏められただけで、ドレスには小さいシワが多数寄り、コルセットはパッと見ただけですけれども明らかにユルユル、気合いを入れてキッチリとしていた筈の化粧は殆ど消え、ガバっと開いている首やデコルテには赤いアザが複数ありましたわね。
唇に紅が移っていることと髪のセットが多少異なる程度で、男の方はあまり身支度に違いはありませんでしたけれど、もう少し上気した頬を冷ましてから出てくればよろしかったのに...楽しんだであろうことが分かる表情はまるで獣でしたわ。
一度でも許せないというのに、この男は何度も同じ過ちを犯しておりますの。
そんな不貞を公言して回っているような男と、男の家が我が家よりも高位の貴族だったからというだけの理由で無理矢理に婚姻させられたのよ?
しかも、男の家が借金まみれで困窮しているから私の家に援助してくれとか宣っているくせに、高位の貴族である自分達が低位の貴族出身である見目のよろしくない私を貰ってやったとか思っているところが尚腹立つわ!
まぁ、義両親もそういう態度なのだから余計に...ね?
大嫌いですし、憎くて仕方ないのよ。
まぁ、私には王妃様より任ぜられた大事なお仕事がありますので、あの居心地の悪い家にいなくても良いところはありがたいですけれど...あんな男と子作りをするとか、断じて嫌だわ。
「あらあら、花嫁がそんなしかめっ面してたら駄目よ?」
憂鬱な式が終わると同時に、後片付けを見届けることもなく引き籠った私の部屋に、事前に渡しておいた合鍵を使ってシレッと入ってくるお姉様。
きちんと鍵を閉めてから、扉が開いたことにより霧散してしまった結界をキッチリ張り直してくれるお姉様が大好きよ!
でも、恨み言の1つも言いたいわ。
「あーら、お姉様ったら、逃げたくせに何の用なのかしら?」
「私は逃げたのではないわ。
貴女が嫁ぐことは、アチラさんからの指命だったのよ。」
「そんなことは知ってますわ。
そっちではなくって...私の愚痴から逃げたことですわ!」
「う...だって、貴女の愚痴っていつも長いんだもの!」
「望まない婚姻を強要されている可哀想な妹の愚痴くらい、聞いてくれても良いですよね?」
「可愛い妹の愚痴なら聞くわよ?
でも、可哀想な妹の愚痴は嫌よ!」
「お・ね・え・さ・ま?」
「......ごめんなさい。
たしかに、私は貴女の愚痴から逃げたわ。」
ウフフ、これでは、なんだかお姉様を虐めているみたいだわ。
普段はとても冷静でツンとした澄まし顔ばかりしているお姉様が、私の前では表情豊かにしておられるのが可愛らしくて、ついつい...これでは駄目ね。
でも、お話しを聞いてくださらなかったことはずっと根に持ってましたのよ?
「ウフフ、そんな優しいお姉様のことが大好きなのですわ!
あ、そうそう、お姉様に1番言いたかったことを忘れるところでしたわ!
私が王妃様に仕えているからか、義両親ったら王妃様との縁を結べとか言いますのよ?」
「あら、やっぱりあの人達って馬鹿なのね。」
「えぇ、そうみたいですわ。」
「以前より、貴女の婚姻に関しては王妃様が吟味して決めると幾度も仰っておられましたのに...今回強行なさったことでアチラさんは蛇蝎のごとく嫌われてましてよ?」
「えぇ、今回のことで、陛下より王妃様の私室のお隣に部屋を賜りましたの。
私を魔の手から護りやすくするためだと仰っておられましたわ。」
王妃様は、身内だと決めた人以外には酷く冷酷な方ですもの...たとえ私のことを身内と思って良くして頂いているとは言え、無理矢理に私の夫になった人間と無条件で縁なんて結ばないわ。
陛下も王妃様も、姪である私のことを実の娘のように良くしてくださっているけれど...私が愛してもいない方を、夫であるからと優遇なんていたしませんわ。
私が陛下の末の妹であり王妃様の従妹である母に似ているからか、病弱だった母を溺愛していた王妃様は特に可愛がってくださっておりますのよね。
*
あら、折角婚姻したというのに何故なのかって?
そんなの簡単なことよ!
私は、私の夫となった男のことが大嫌いなの。
貴女は、好きになれると言うの?
招待された夜会で、婚約者以外の女性と踊るのは普通にあることよね。
けれど、この男は、婚約者には諸事情あって参加できなくなったと連絡しておいて、婚約者以外の女性をエスコートしてきて、早々に2人で密室に籠るのよ?
それも、主催者への挨拶の前でしたから慌てていたのか、きっと盛大に乱れたのであろうことが丸分かりな格好で出てきましたのよ?
複雑に結い上げられていた筈の髪は簡単に纏められただけで、ドレスには小さいシワが多数寄り、コルセットはパッと見ただけですけれども明らかにユルユル、気合いを入れてキッチリとしていた筈の化粧は殆ど消え、ガバっと開いている首やデコルテには赤いアザが複数ありましたわね。
唇に紅が移っていることと髪のセットが多少異なる程度で、男の方はあまり身支度に違いはありませんでしたけれど、もう少し上気した頬を冷ましてから出てくればよろしかったのに...楽しんだであろうことが分かる表情はまるで獣でしたわ。
一度でも許せないというのに、この男は何度も同じ過ちを犯しておりますの。
そんな不貞を公言して回っているような男と、男の家が我が家よりも高位の貴族だったからというだけの理由で無理矢理に婚姻させられたのよ?
しかも、男の家が借金まみれで困窮しているから私の家に援助してくれとか宣っているくせに、高位の貴族である自分達が低位の貴族出身である見目のよろしくない私を貰ってやったとか思っているところが尚腹立つわ!
まぁ、義両親もそういう態度なのだから余計に...ね?
大嫌いですし、憎くて仕方ないのよ。
まぁ、私には王妃様より任ぜられた大事なお仕事がありますので、あの居心地の悪い家にいなくても良いところはありがたいですけれど...あんな男と子作りをするとか、断じて嫌だわ。
「あらあら、花嫁がそんなしかめっ面してたら駄目よ?」
憂鬱な式が終わると同時に、後片付けを見届けることもなく引き籠った私の部屋に、事前に渡しておいた合鍵を使ってシレッと入ってくるお姉様。
きちんと鍵を閉めてから、扉が開いたことにより霧散してしまった結界をキッチリ張り直してくれるお姉様が大好きよ!
でも、恨み言の1つも言いたいわ。
「あーら、お姉様ったら、逃げたくせに何の用なのかしら?」
「私は逃げたのではないわ。
貴女が嫁ぐことは、アチラさんからの指命だったのよ。」
「そんなことは知ってますわ。
そっちではなくって...私の愚痴から逃げたことですわ!」
「う...だって、貴女の愚痴っていつも長いんだもの!」
「望まない婚姻を強要されている可哀想な妹の愚痴くらい、聞いてくれても良いですよね?」
「可愛い妹の愚痴なら聞くわよ?
でも、可哀想な妹の愚痴は嫌よ!」
「お・ね・え・さ・ま?」
「......ごめんなさい。
たしかに、私は貴女の愚痴から逃げたわ。」
ウフフ、これでは、なんだかお姉様を虐めているみたいだわ。
普段はとても冷静でツンとした澄まし顔ばかりしているお姉様が、私の前では表情豊かにしておられるのが可愛らしくて、ついつい...これでは駄目ね。
でも、お話しを聞いてくださらなかったことはずっと根に持ってましたのよ?
「ウフフ、そんな優しいお姉様のことが大好きなのですわ!
あ、そうそう、お姉様に1番言いたかったことを忘れるところでしたわ!
私が王妃様に仕えているからか、義両親ったら王妃様との縁を結べとか言いますのよ?」
「あら、やっぱりあの人達って馬鹿なのね。」
「えぇ、そうみたいですわ。」
「以前より、貴女の婚姻に関しては王妃様が吟味して決めると幾度も仰っておられましたのに...今回強行なさったことでアチラさんは蛇蝎のごとく嫌われてましてよ?」
「えぇ、今回のことで、陛下より王妃様の私室のお隣に部屋を賜りましたの。
私を魔の手から護りやすくするためだと仰っておられましたわ。」
王妃様は、身内だと決めた人以外には酷く冷酷な方ですもの...たとえ私のことを身内と思って良くして頂いているとは言え、無理矢理に私の夫になった人間と無条件で縁なんて結ばないわ。
陛下も王妃様も、姪である私のことを実の娘のように良くしてくださっているけれど...私が愛してもいない方を、夫であるからと優遇なんていたしませんわ。
私が陛下の末の妹であり王妃様の従妹である母に似ているからか、病弱だった母を溺愛していた王妃様は特に可愛がってくださっておりますのよね。
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