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1話完結

婚約したい王子はお花畑な転生者?!

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「僕は、マゼンタ公爵家のリリーローザと婚約いたします!」

「ハァー、貴方は何を言っているの?
貴方が、一方的に酷い暴言を浴びせたのに、彼女と婚約出来ると思っているの?!
馬鹿も休み休み言いなさいな!」

「母上!僕は、事実を言ったまでです!」

「ハァ、プリジェロ、リリーローザ嬢は、悪女などではない。」

「近い将来、悪女となるのです!」

「何を根拠に...そのような世迷い言を言っているのだ?」

「僕の真実まことに愛する人を、虐める悪女となるのです!」

「もしもそうなのならば、何故?そのリリーローザ嬢と婚約したいなどと言うのだ?
将来悪女となるのなら、関わらない方が良いであろう。」

「真実に愛する人と出会うためです!」

「そのような者に...お前が出会う必要はない。
王族とは、常に政略により結婚するものだ...頭を冷やせ。

プリジェロ、お前が尊敬出来る者を婚約者として迎えろ。
今後、リリーローザ嬢に近付くことは、王として許さない。
このくらいは分かるな?」

「ぐぅっ!何故ですか!?
息子を幸せにしたいとは思わないのですか??!」

「まったく思わんな...。
プリジェロ、お前には一月の謹慎を言い渡す。王族としての誇りとは何かを、しっかりと学べ。
衛兵!...プリジェロを部屋へ連れて行け!」

「クッ!乱暴にするな!
僕は、自分の足で部屋へと向かう!」

何でだ?何でなんだ?!
父上も母上も、本当のことを言っただけの僕のことを、何故、あんな蔑んだ眼で見てくるんだ?
僕はただ、事実を言っただけなのに...僕には前世の記憶があるんだぞ?!
何も間違いなど犯していないんだ!

これは、前世で姉がしていた乙女ゲームなんだよ!
ヒロインは没落した某男爵家の生き残りで、他の男爵家に謀られて没落したというその境遇はとても悲惨だが、とても心優しく、愛らしく、平民という身分で育っていた。
本当に聖女のように清らかな少女だったんだ!
その子と、俺は真実の愛を誓うんだ!

それなのに、彼女と出会う為には、先ず、極悪非道の悪役令嬢と婚約しなければならないなんて...酷すぎる。
目が合った瞬間、叫んでしまっても仕方あるまい。
それだけ、あの悪女は酷いことをヒロインへとしていたのだから...。
あの悪女は、王子であるこの俺と婚約出来ることを誇りに思って、極悪非道な悪女として断罪されてくれないと困るんだ...。

「どうしたら...あの女と婚約出来るのか......やはり、こちらから王族として命じるのが一番早いか...。
全く、悪女らしいといえばそうだが、王族への敬意が足りないな。」

「プリジェロ様。」

「なんだ!」

「お召し替えを...。」

「あぁ、そうだな...。」

「................他にご用件はありますでしょうか?」

「無い、 下がっておれ!」

「では、失礼いたします。」

ふん!こちらは大事な考え事をしているというのに、あの従者は配慮が足りていないな!!
まぁ、楽な格好になったから良いか...。

それで、あの悪女の家には手紙を書くか?
うん、そうだな、そうしよう。
この俺が直々に書いてやるのだから、それはそれは有り難く思って、流石の悪女も早々に婚約するだろう。
やはり、転生者である俺は、天才だな。

なんて、軽く考えていたのたのだが...あの悪女は、快く婚約を了承するどころか、父上や母上に抗議までしやがった!

「何故だ!!何故婚約出来ないんだ!!」

「ハァ...当然でしょう?
王妃陛下主催のお茶会にて、慣例通りご挨拶に来られた初対面のご令嬢のことを、突然王子が悪女と罵り、熱いお茶まで掛けたのですから...。
城へも近付きたく無くなるでしょう。」

「悪女に悪女と言って何が悪い?
それに、あの時手元にあったのがお茶だったのだから、仕方が無いだろう?
あの程度の染みくらいなら、どうということも無い筈だ。

そもそも、あの者は将来悪女となるのだからな...。」

「将来の事など誰にも分かりませんので、将来を勝手に妄想なさって初対面のご令嬢を罵るのは、頭の可笑しい者のすることでしょう。
それと、私が申しておりますのはドレスの染みだけではなく、王子のかけられました熱いお茶により、ご令嬢に怪我を負わせたということを申し上げております。」

「将来悪女となることは決定事項だ!!
母親のいないあの者は、養子として親戚の男が兄となったことが許せず、その義兄を痛め付けるのだ!!
悪女以外の何者でも無いだろう?!」

「...あのご令嬢の母君はまだご存命ですが?
弟君も2人おられますし、妹君も2人おられた筈です。
もしも母君が亡くなられたとしても、跡取りとなられる弟君がおられるのですから、養子は必要無いでしょう。」

「何?!可笑しいぞ??!
あの女の母親は、アイツを産むときに死んだ筈だ!!」

「?確か...産後に一度危険な状態となった筈ですよ?
優秀な産婦がおられたようで、直ぐに持ち直したそうですけど。」

「何だと?!シナリオが、変わっている!??」

「それで、王子は取り敢えず、ご令嬢への無体を謝罪なさりませんと...困ったことになりそうですよ?
ご令嬢の生家である公爵家は古くからある名家でして、領地の自治権をお持ちです。
公爵閣下は、この度王子の犯された侮辱と愚行にお怒りになられまして、そろそろ領地を持って国から出て行かれるようですよ?
隣国のリシュバーン王家の者とも話しがついているようですし...この国としては困った事態です。」

「それは、あの家が謀反を企てていると言うことだな??!」

「いえ、それは違います。」

「領地ごと我が国から隣国へと行こうとしているんだろう??
立派な謀反じゃないか!!」

「...自治権をお持ちですと申し上げましたが?」

「自治権??それは領主なのだから当たり前だろう??」

「領主とは、領民の収める税の諸々に関してや起きた事故や災害などの状況等をその都度国に報告して、国の決定を待って国の指針に基づきその土地を治める代官としての役割が主でございます。
緊急の場合報告する前に動くこともありますが...通常であればそれは職務違反となり罰せられます。
領地に関しての決定権は一切持ちません。

しかし、国により領地の自治権を認められた場合は対応が異なります。
領民の収める税の種類や量、収める時期に関して領主が決定します。
そして、事故や災害に関しても即時対応が可能です。
国へと報告する義務はありますが、領地に関することであれば、領主が自由に決定することが出来ます。」

「はぁ?!」

「従って、かの公爵家は、この国を離脱し他国へと籍を移すことが可能なのです。
理由が理由ですので、諸外国にも理解されることでしょう。」

「くそ!なんてことだ?!」

「そろそろ諦めてください。
そして、王子にご報告があります。」

「なんだ?」

「先程、貴方の王位継承権が王により剥奪されました。
それにより、貴方は王子では無くなりますので、王子宮であるここから出ていかなければなりません。
併せまして、貴方の母方の親戚の養子となることも決定しました。
子のいない男爵家への養子入りですから、分不相応なものは持っていけません。
諸々の準備は侍女が行いますので、貴方は先に馬車で男爵領へと向かってください。

それでは、長らく面倒な貴方のお世話をしてきましたが、これで楽になります。
私は子爵家の者ですので、今後は貴方よりも身分が上になりますから、どうぞ分を弁えてくださいね?」

くそ!くそ!なんでだ?!なんでなんだ?!父上ー!!!





*~完~
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