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微糖
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私とあっくんは甘党だ。
私の好物はシュークリーム。あっくんの好物はショートケーキ。
けれど彼は、甘いコーヒーより少し苦いコーヒーが好き。
なんでも、
「ケーキの甘さが引き立つんだよ」
だ、そうだ。
そこで私も甘くないコーヒーを試しに買ってみた事があるけれど、苦くて飲みきれなかった。
そんな私にあっくんは、「大人の味だね」と言って笑う。
「たった4歳差でしょ」
唇を尖らせて反論すると、
「されど4歳差だよ」
あっくんはそう言ってくすくす笑った。
なんだかカチンときて、
「あっくん、おじさんくさい」
と毒づいたら、泣きそうになっていたのはまた別のお話。
◇
「私にだって飲めるもん」
庭方向の窓を開けて、縁側に座り足をぷらぷらさせる。
持ってきた缶コーヒーのタブに爪をかけて引けば、爽快な音とともに口が開いた。
鼻をかすめる苦そうな香り。一瞬怯んでしまったけれど、
(こんなの、経験値にしてくれるわ!)
思い切って、一口飲み込んだ。
「に、苦い……」
うげえ、と舌を出す。
もうだめ、飲めない。でも勿体無い。
(も、もう一回、)
ごくり。……うげえ。
やっぱり飲めない、と缶を置く。
本当に、大人の味なのかな。私はまだお子ちゃまなのかな。
「みーちゃん」
不意に頭上から降ってきた、心地の良い声。
顔を上げれば、そこには思った通りあっくんがいた。
「どうしたの?」
「コーヒーに再挑戦しておりました」
完敗でござりまする、とまだ中身の残っている缶コーヒーを差し出す。
あっくんは少しのあいだ驚いたような顔をしてから、すぐにやわらかく微笑んだ。
「飲もうとしたの?」
「うん……でも無理だった」
息を吐くようにふっと笑い、私の頭を撫でるあっくん。
「頑張ったね、みーちゃん」
唇にキスを一つ落とされれば、さっきまで苦かった口の中が砂糖でいっぱいになった。
甘い、甘い、私の旦那さま。
「あっくん」
「ん?」
「もう一回」
あっくんがコーヒーを一口飲んで、もう一回キスをする。
少しの苦味は大好きな人の甘さと混ざり合って微糖になった。
「……甘い」
「なにが?」
「みーちゃんが、甘い」
そう言ってはにかんだから、
「あっくんもだよ」
そう返して、今度は私からキスをした。
私の好物はシュークリーム。あっくんの好物はショートケーキ。
けれど彼は、甘いコーヒーより少し苦いコーヒーが好き。
なんでも、
「ケーキの甘さが引き立つんだよ」
だ、そうだ。
そこで私も甘くないコーヒーを試しに買ってみた事があるけれど、苦くて飲みきれなかった。
そんな私にあっくんは、「大人の味だね」と言って笑う。
「たった4歳差でしょ」
唇を尖らせて反論すると、
「されど4歳差だよ」
あっくんはそう言ってくすくす笑った。
なんだかカチンときて、
「あっくん、おじさんくさい」
と毒づいたら、泣きそうになっていたのはまた別のお話。
◇
「私にだって飲めるもん」
庭方向の窓を開けて、縁側に座り足をぷらぷらさせる。
持ってきた缶コーヒーのタブに爪をかけて引けば、爽快な音とともに口が開いた。
鼻をかすめる苦そうな香り。一瞬怯んでしまったけれど、
(こんなの、経験値にしてくれるわ!)
思い切って、一口飲み込んだ。
「に、苦い……」
うげえ、と舌を出す。
もうだめ、飲めない。でも勿体無い。
(も、もう一回、)
ごくり。……うげえ。
やっぱり飲めない、と缶を置く。
本当に、大人の味なのかな。私はまだお子ちゃまなのかな。
「みーちゃん」
不意に頭上から降ってきた、心地の良い声。
顔を上げれば、そこには思った通りあっくんがいた。
「どうしたの?」
「コーヒーに再挑戦しておりました」
完敗でござりまする、とまだ中身の残っている缶コーヒーを差し出す。
あっくんは少しのあいだ驚いたような顔をしてから、すぐにやわらかく微笑んだ。
「飲もうとしたの?」
「うん……でも無理だった」
息を吐くようにふっと笑い、私の頭を撫でるあっくん。
「頑張ったね、みーちゃん」
唇にキスを一つ落とされれば、さっきまで苦かった口の中が砂糖でいっぱいになった。
甘い、甘い、私の旦那さま。
「あっくん」
「ん?」
「もう一回」
あっくんがコーヒーを一口飲んで、もう一回キスをする。
少しの苦味は大好きな人の甘さと混ざり合って微糖になった。
「……甘い」
「なにが?」
「みーちゃんが、甘い」
そう言ってはにかんだから、
「あっくんもだよ」
そう返して、今度は私からキスをした。
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