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その4

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「僕に文句を言ってきたの、君が初めてです」
「……っ、あ、」


 なでなで、さらり。髪をすく指。
 ふわり、微笑む王子様。
 どきどき、どきどき。うるさい心臓。 

 さっきまであんなに腹が立っていたというのに、


「面白いね」


 頭を撫でられただけでどきどきしてしまう私は、ゲンキンなのでしょうか。

 恥ずかしくて、頭の中がふわふわして。
 細められた瞳から、思わず目を逸らしてしまう。


「……場所、変えましょうか」 


 ◇


 所変わって、裏庭へ。
 そこに着く頃には胸の鼓動もすっかりおさまっていました。

 とことこと、再び王子様の後ろをついて行く私。
 王子様は、特に何も喋りません。

 ……沈黙。少ししてから、


「それで?」


 設置してあるベンチに本を置きながら、口を開いた王子様。


「……それで、とは?」


 貧乳と言ったことについて、謝る気にでもなったのでしょうか?
 ははん、粘ったもの勝ちですね! と、少しだけ胸を張る。

 すると、王子様はふわふわと髪を揺らしながら、ゆっくりとこちらを向きました。 


「さっきの告白、なに?」
「……えっ!?」


 今さら掘り返されるとは思っていなくて、『貧乳』の漢字二文字に支配されていた脳みそが熱を上げる。
 だって、「興味ない」と一蹴したじゃないですか。

 何と説明しようか、どう言い訳しようか、それとも誤魔化そうか。
 もじもじと手を動かし目線を泳がせる。


「……はぁ」


 王子の口から吐き出された溜め息。
 びくりと肩を跳ねさせると、彼の眉間にしわができる。 
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