32 / 34
Savage襲来編
32.死の恐怖
しおりを挟む
はあっ、はあっ、はあっ――!
止まったままのエスカレーターを必死に駆け上がる者がいた。
多数の打撲により身体から顔面まで腫れあがり、脱臼した腕はだらんと垂れている。片方の視界が利かない状況で、しかし彼は駆け続けた。
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
脳裏に響くのは命の危険を知らせる音声。
残りHPは「2」となっており、それが彼の恐怖を煽り立てる。
やがて、後方から足音が響き、その彼に向けて声をかけた。
「おい、待てって! 俺は見ての通り美少女、それもお姫様として君臨する回復役だぜ」
ぐるりと彼は振り返る。
奇妙なポーズを決める少女。しかし、その薄紫色をした少女の後ろ、靴音を響かせて姿を見せる者がいる。五十嵐 重造の冷たい瞳を見て、彼の心臓は縮みあがった。
「オヒイイ! ヒイイイ!」
「あーーっ! なんっで逃げんだよ! この姿を見て悲鳴をあげて良いのは、俺の妹だけなんだよ。マジでもういい加減にしろよなお前!」
手足をつき、どうにか階段を上り始める様子に、誠は舌打ちしつつ駆け上がる。止まったエスカレーターというのは歩きづらく、泥に足を突っ込んだような思いをした。
「あー、クソ。五十嵐、あいつの足を撃ち抜いたら早いんじゃねーか?」
「そうだな、やってみよう」
躊躇無く構える様子に、ぎょっとした。
それから「ストーップ!」と両手を上げて静止する。
「じょーだんだ、冗談! おまえの銃なんかブッ放したら、マジで死にかねねえだろ!」
「……もちろん、私も冗談だ」
チャッと銃を持ち上げる様子に、誠は半目で現職警察官を見つめる。
どうも先ほどから彼の態度は淡白だ。本来であれば彼こそが助けてやろうと動くはずなのに。
敏捷は五十嵐のほうがずっと高く、その気になれば先行できる。それがどうも誠の頭に引っかかっていた。
「……まあいいや、事情がありそうだけど後で聞くわ。それより、とっとと捕まえて由紀んトコに戻るぞ」
こくりと頷かれ、それから誠を駆け出した。
実は陰キャなのかなー、こいつ。などと思いながら階段を踏む。短いスカートのせいで彼から丸見えだろうが気にしない。
エスカレーターは長く続いており、怪我をした奴になら追いつけそうだ。映画館を示す案内を通り抜け、カンカンと息を切らしながら進む。
ようやく追いつき、その這いつくばった背中を掴むと誠は荒いを吐いた。
「あーー、つかれたーー。うへへー、捕まえたぞー!」
ぎゃあぎゃあ喚かれるが、もう説得する気も無い。さっさと治癒をしてやれば、すぐ我に返るだろう。命の恩人として惚れられてしまうかもしれない。
そう呑気に考えていたとき、ぶつっと誠の腕に2つの穴があく。
たかたん――っ!
そして、細腕からは真紅の血や肉、そして骨の破片が飛び散る。己の腕が飛んでゆく様子に、誠は「あん?」と声をもらした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
どずん、と両膝が地面を打ち、遅れて壁に巨大な斧が突き刺さる。
爆発による空気の振動は、わんわん周囲へこだまを残す。最上級オークの上半身は消し飛び、だらんと背骨が垂れた。
壁に着地をし、両足で衝撃を逃した僕らはそのまま地面へと降り立つ。その向こうから現れる増援、2体の最上位オークを睨みながら。
金属音を鳴らして前を歩くのは、傷ひとつ無い全身鎧のゴツいやつ。4本腕を器用に使い、人間には持てない大型の盾、そして2本の剣を反対側に構えている。
もう一体は魔術師か。
4本の腕それぞれで印を組み、真っ黒いローブを着込んでいる。どちらもオークとして成り立っているのか分からない格好だ。
推定レベル20の最上級オークが2体。
対するこちらはレベル13の2人。
もう撤退するしかない。
せめて一体ごとに来てくれれば、姉と協力すれば道は見えたのに。奴らは愚鈍で、こちらの敏捷度なら逃げ切れるはずだ。
しかし、二階からは民間人を救い出すべく、ドアを焼き切る道具が火花を立てている。上級オークとの交戦中である彼らは、逃げることは難しい。
このまま下手に逃げたら大惨事になりかねない。
どうする、どうする。
判断する材料が欲しくて、ちらりと横目で姉を見る。
すると戦闘本能をむき出しにする美しい瞳を返された。まるで純粋な鉄のようだ。
「~~~……っ! 戦闘続行ッ!!」
姉の瞳を見た瞬間、気がつけばそう唾を飛ばしていた。
僕もまた魔術格闘家なるものの真髄を理解し始めており、全身をアドレナリンが駆け巡っている。
今であれば……いや、今でなければもう戦えない。
「はははっ、あっははは!」
今度は僕が目を見開く番だ。
もう魔物が迫ってきているのに姉は腹をかかえて笑い、ひとしきり笑い終えると、はあっと熱っぽい息を吐く。
「悔しいけど燃えちゃうわ。好きよ、あなたの振り絞った声は熱くて――アイテムセット・下級SP回復薬」
ぱきんと残り2つの回復薬を姉は消費する。
それから先ほどのように闘気刃で刀を輝かせると、絶望的な戦いは始まった。
――バチチチチッ!
魔術師オークの4本の腕は、それぞれ細かな雷光に包まれる。それを守るように騎士オークは前に立ちふさがった。
これから先、作戦を相談する時間は無い。互いに瞬間で判断し、連携をしなければならない。
奴らに勝てるのは、きっとその連携面だけだろう。
ゴツンと姉と拳をぶつけあい、左右に散る。
こちらは巨大な盾に向かい、姉は魔術師に向かって走る。
一度、雷の魔術を見たことがある。あれは直線状に飛来するもので、見てから避けるなんて芸当は決して出来ないと分かった。
だから僕は騎士の攻撃範囲まで踏み込み、その巨大な盾の影に逃れる。やはり、もう一方の姉に2本の腕は、ぴたりと向けられた。
『人ヲ食ラウ鬼ト化セ……黒雷撃!』
その人語と思わしき呪文詠唱に驚きつつも、僕の頭上からは剣が飛来する。死を思う間際、一瞬の閃きで回避したが、地面ごと貫いて破砕する様に、尻尾の先は膨れ上がる。
盾に覆われた向こうは、すさまじい雷光によりコントラスト差の強い視界に変わる。
姉の心配をする間もなく、グワリと巨大な盾が一気に迫り、地面に大きなひび割れを起こして押しつぶされた。
「――剣術、疾風」
ばり、と肩にスパークのダメージを残し、姉は魔術師の背後へ回りこんでいた。詠唱を終える間際、姉の持つ野性的な戦闘勘で距離を詰めたのだ。
一方の僕はというと、盾に押しつぶされないよう、わずかな隙間に逃れたところだ。そっと内側に腕を伸ばし、オークの手をわずかに触れる。
オグウ?
きょとんとした奴の手には、置き土産のように「業炎の罰LEVELⅠ」が残されていた。ちなみに発動までの秒読みは2秒で、さっと盾に隠れるなり起爆した。
すぐ上から、ずどどん!という激しい爆破。
さらに盾へ押しつぶされる格好となり、互いのHP減少を知らせるエフェクトが舞う。ダメージとしては向こうの方が大きいけれど、こちらのMPは7割を切った。
「由紀ちゃん、ちょっと御免なさいね」
かと思えば、ずざざと姉がスライディングして潜り込んでくる。そのまま盾を蹴り上げて、わずかな隙間を生み出してくれたけど――どうしたのと視線で問いかけると、「あっち」と指差された。
『吹キ荒レヨ、雷ノ暴レ牛……黒雷暴牛LEVELⅤ!』
残りの帯電する2本の腕を、魔術師は地面に叩きつけた。
瞬間、ホールには黒雷が吹き荒れる。
魔術師を中心に放たれた雷は、瞬時に範囲内すべてを焼き尽くす。円形に配置された三階までのガラスは焼けたただれ、残り少ない電球は瞬間破裂し、壁材や天井は一気に炎を噴き出した。
あちいぃぃーーっ!
盾で守られていても雷で焼けるっ!
騎士オークも噴き出す白煙とともに、ギオオオ!とたまらず悲鳴あげていた。これがあるから範囲魔法というのは取得しづらいんだよね。仲間まで巻き込む可能性があるし、あいつはどうやら躊躇もしない様子だ。
しかし、ギクリと身を強張らせる声がホールに響く。
『来イ、来イ、来イ、魔力増強LEVELⅣ、雷招来LEVELⅤ』
この詠唱速度、どうなっているんだ!
魔術師としての格は圧倒的に負けており、すぐさま4本腕に生み出されたスパークに目を疑う。
普通であれば10秒程度の詠唱時間は必須だ。それが分かっていたから姉は飛び込んだというのに、魔術を放った後の隙が極めて少ない……あいつ、まさか連続魔術師タイプか!?
以前に職業分岐をする際、そのようなものを見た事がある。MPを大量に使う代わりに、極端な短時間での火力を吐き出せるという職業だ。しかもレベル20ということなら、さらに上の職かもしれない。
すぐさま推定レベルを上方修正し、騎士オーク20、連続魔術師オーク25と推測する。残り2つの下級HP回復薬を呼び出しながら、僕らは一斉に盾から転がり出た。
ただの勘だったけど、間一髪で元居た場所は燃え上がる。
『人ヲ食ラウ鬼ト化セ……黒雷撃LEVELⅣ!』
バン!と破裂するような衝撃に、たまらなかったのはオーク騎士だ。盾は一気に燃え上がり、鎧の内側からさらに白煙をあげる。
しかしそれでも燃え盛る盾を構え、魔術師を守る姿勢を見せた。恐らく内部はぐずぐずに焼け爛れているだろうに。
ばくりと口を開き、乱杭歯のあいだから大量の煙が溢れる。
それを冷ますよう、どうと周囲一帯にスプリンクラーの散水が撒き散らされた。
止まったままのエスカレーターを必死に駆け上がる者がいた。
多数の打撲により身体から顔面まで腫れあがり、脱臼した腕はだらんと垂れている。片方の視界が利かない状況で、しかし彼は駆け続けた。
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
脳裏に響くのは命の危険を知らせる音声。
残りHPは「2」となっており、それが彼の恐怖を煽り立てる。
やがて、後方から足音が響き、その彼に向けて声をかけた。
「おい、待てって! 俺は見ての通り美少女、それもお姫様として君臨する回復役だぜ」
ぐるりと彼は振り返る。
奇妙なポーズを決める少女。しかし、その薄紫色をした少女の後ろ、靴音を響かせて姿を見せる者がいる。五十嵐 重造の冷たい瞳を見て、彼の心臓は縮みあがった。
「オヒイイ! ヒイイイ!」
「あーーっ! なんっで逃げんだよ! この姿を見て悲鳴をあげて良いのは、俺の妹だけなんだよ。マジでもういい加減にしろよなお前!」
手足をつき、どうにか階段を上り始める様子に、誠は舌打ちしつつ駆け上がる。止まったエスカレーターというのは歩きづらく、泥に足を突っ込んだような思いをした。
「あー、クソ。五十嵐、あいつの足を撃ち抜いたら早いんじゃねーか?」
「そうだな、やってみよう」
躊躇無く構える様子に、ぎょっとした。
それから「ストーップ!」と両手を上げて静止する。
「じょーだんだ、冗談! おまえの銃なんかブッ放したら、マジで死にかねねえだろ!」
「……もちろん、私も冗談だ」
チャッと銃を持ち上げる様子に、誠は半目で現職警察官を見つめる。
どうも先ほどから彼の態度は淡白だ。本来であれば彼こそが助けてやろうと動くはずなのに。
敏捷は五十嵐のほうがずっと高く、その気になれば先行できる。それがどうも誠の頭に引っかかっていた。
「……まあいいや、事情がありそうだけど後で聞くわ。それより、とっとと捕まえて由紀んトコに戻るぞ」
こくりと頷かれ、それから誠を駆け出した。
実は陰キャなのかなー、こいつ。などと思いながら階段を踏む。短いスカートのせいで彼から丸見えだろうが気にしない。
エスカレーターは長く続いており、怪我をした奴になら追いつけそうだ。映画館を示す案内を通り抜け、カンカンと息を切らしながら進む。
ようやく追いつき、その這いつくばった背中を掴むと誠は荒いを吐いた。
「あーー、つかれたーー。うへへー、捕まえたぞー!」
ぎゃあぎゃあ喚かれるが、もう説得する気も無い。さっさと治癒をしてやれば、すぐ我に返るだろう。命の恩人として惚れられてしまうかもしれない。
そう呑気に考えていたとき、ぶつっと誠の腕に2つの穴があく。
たかたん――っ!
そして、細腕からは真紅の血や肉、そして骨の破片が飛び散る。己の腕が飛んでゆく様子に、誠は「あん?」と声をもらした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
どずん、と両膝が地面を打ち、遅れて壁に巨大な斧が突き刺さる。
爆発による空気の振動は、わんわん周囲へこだまを残す。最上級オークの上半身は消し飛び、だらんと背骨が垂れた。
壁に着地をし、両足で衝撃を逃した僕らはそのまま地面へと降り立つ。その向こうから現れる増援、2体の最上位オークを睨みながら。
金属音を鳴らして前を歩くのは、傷ひとつ無い全身鎧のゴツいやつ。4本腕を器用に使い、人間には持てない大型の盾、そして2本の剣を反対側に構えている。
もう一体は魔術師か。
4本の腕それぞれで印を組み、真っ黒いローブを着込んでいる。どちらもオークとして成り立っているのか分からない格好だ。
推定レベル20の最上級オークが2体。
対するこちらはレベル13の2人。
もう撤退するしかない。
せめて一体ごとに来てくれれば、姉と協力すれば道は見えたのに。奴らは愚鈍で、こちらの敏捷度なら逃げ切れるはずだ。
しかし、二階からは民間人を救い出すべく、ドアを焼き切る道具が火花を立てている。上級オークとの交戦中である彼らは、逃げることは難しい。
このまま下手に逃げたら大惨事になりかねない。
どうする、どうする。
判断する材料が欲しくて、ちらりと横目で姉を見る。
すると戦闘本能をむき出しにする美しい瞳を返された。まるで純粋な鉄のようだ。
「~~~……っ! 戦闘続行ッ!!」
姉の瞳を見た瞬間、気がつけばそう唾を飛ばしていた。
僕もまた魔術格闘家なるものの真髄を理解し始めており、全身をアドレナリンが駆け巡っている。
今であれば……いや、今でなければもう戦えない。
「はははっ、あっははは!」
今度は僕が目を見開く番だ。
もう魔物が迫ってきているのに姉は腹をかかえて笑い、ひとしきり笑い終えると、はあっと熱っぽい息を吐く。
「悔しいけど燃えちゃうわ。好きよ、あなたの振り絞った声は熱くて――アイテムセット・下級SP回復薬」
ぱきんと残り2つの回復薬を姉は消費する。
それから先ほどのように闘気刃で刀を輝かせると、絶望的な戦いは始まった。
――バチチチチッ!
魔術師オークの4本の腕は、それぞれ細かな雷光に包まれる。それを守るように騎士オークは前に立ちふさがった。
これから先、作戦を相談する時間は無い。互いに瞬間で判断し、連携をしなければならない。
奴らに勝てるのは、きっとその連携面だけだろう。
ゴツンと姉と拳をぶつけあい、左右に散る。
こちらは巨大な盾に向かい、姉は魔術師に向かって走る。
一度、雷の魔術を見たことがある。あれは直線状に飛来するもので、見てから避けるなんて芸当は決して出来ないと分かった。
だから僕は騎士の攻撃範囲まで踏み込み、その巨大な盾の影に逃れる。やはり、もう一方の姉に2本の腕は、ぴたりと向けられた。
『人ヲ食ラウ鬼ト化セ……黒雷撃!』
その人語と思わしき呪文詠唱に驚きつつも、僕の頭上からは剣が飛来する。死を思う間際、一瞬の閃きで回避したが、地面ごと貫いて破砕する様に、尻尾の先は膨れ上がる。
盾に覆われた向こうは、すさまじい雷光によりコントラスト差の強い視界に変わる。
姉の心配をする間もなく、グワリと巨大な盾が一気に迫り、地面に大きなひび割れを起こして押しつぶされた。
「――剣術、疾風」
ばり、と肩にスパークのダメージを残し、姉は魔術師の背後へ回りこんでいた。詠唱を終える間際、姉の持つ野性的な戦闘勘で距離を詰めたのだ。
一方の僕はというと、盾に押しつぶされないよう、わずかな隙間に逃れたところだ。そっと内側に腕を伸ばし、オークの手をわずかに触れる。
オグウ?
きょとんとした奴の手には、置き土産のように「業炎の罰LEVELⅠ」が残されていた。ちなみに発動までの秒読みは2秒で、さっと盾に隠れるなり起爆した。
すぐ上から、ずどどん!という激しい爆破。
さらに盾へ押しつぶされる格好となり、互いのHP減少を知らせるエフェクトが舞う。ダメージとしては向こうの方が大きいけれど、こちらのMPは7割を切った。
「由紀ちゃん、ちょっと御免なさいね」
かと思えば、ずざざと姉がスライディングして潜り込んでくる。そのまま盾を蹴り上げて、わずかな隙間を生み出してくれたけど――どうしたのと視線で問いかけると、「あっち」と指差された。
『吹キ荒レヨ、雷ノ暴レ牛……黒雷暴牛LEVELⅤ!』
残りの帯電する2本の腕を、魔術師は地面に叩きつけた。
瞬間、ホールには黒雷が吹き荒れる。
魔術師を中心に放たれた雷は、瞬時に範囲内すべてを焼き尽くす。円形に配置された三階までのガラスは焼けたただれ、残り少ない電球は瞬間破裂し、壁材や天井は一気に炎を噴き出した。
あちいぃぃーーっ!
盾で守られていても雷で焼けるっ!
騎士オークも噴き出す白煙とともに、ギオオオ!とたまらず悲鳴あげていた。これがあるから範囲魔法というのは取得しづらいんだよね。仲間まで巻き込む可能性があるし、あいつはどうやら躊躇もしない様子だ。
しかし、ギクリと身を強張らせる声がホールに響く。
『来イ、来イ、来イ、魔力増強LEVELⅣ、雷招来LEVELⅤ』
この詠唱速度、どうなっているんだ!
魔術師としての格は圧倒的に負けており、すぐさま4本腕に生み出されたスパークに目を疑う。
普通であれば10秒程度の詠唱時間は必須だ。それが分かっていたから姉は飛び込んだというのに、魔術を放った後の隙が極めて少ない……あいつ、まさか連続魔術師タイプか!?
以前に職業分岐をする際、そのようなものを見た事がある。MPを大量に使う代わりに、極端な短時間での火力を吐き出せるという職業だ。しかもレベル20ということなら、さらに上の職かもしれない。
すぐさま推定レベルを上方修正し、騎士オーク20、連続魔術師オーク25と推測する。残り2つの下級HP回復薬を呼び出しながら、僕らは一斉に盾から転がり出た。
ただの勘だったけど、間一髪で元居た場所は燃え上がる。
『人ヲ食ラウ鬼ト化セ……黒雷撃LEVELⅣ!』
バン!と破裂するような衝撃に、たまらなかったのはオーク騎士だ。盾は一気に燃え上がり、鎧の内側からさらに白煙をあげる。
しかしそれでも燃え盛る盾を構え、魔術師を守る姿勢を見せた。恐らく内部はぐずぐずに焼け爛れているだろうに。
ばくりと口を開き、乱杭歯のあいだから大量の煙が溢れる。
それを冷ますよう、どうと周囲一帯にスプリンクラーの散水が撒き散らされた。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
実家が没落したので、こうなったら落ちるところまで落ちてやります。
黒蜜きな粉
ファンタジー
ある日を境にタニヤの生活は変わってしまった。
実家は爵位を剥奪され、領地を没収された。
父は刑死、それにショックを受けた母は自ら命を絶った。
まだ学生だったタニヤは学費が払えなくなり学校を退学。
そんなタニヤが生活費を稼ぐために始めたのは冒険者だった。
しかし、どこへ行っても元貴族とバレると嫌がらせを受けてしまう。
いい加減にこんな生活はうんざりだと思っていたときに出会ったのは、商人だと名乗る怪しい者たちだった。
騙されていたって構わない。
もう金に困ることなくお腹いっぱい食べられるなら、裏家業だろうがなんでもやってやる。
タニヤは商人の元へ転職することを決意する。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
雪花祭り☆
のの(まゆたん)
ファンタジー
記憶を失くし子供の姿に戻ってしまった黒の国の王 火竜王(サラマンデイア)
アーシュラン(アーシュ)に
愛された 白の国のオッド・アイの瞳の王女エルトニア(エイル)
彼女は 白の国の使節(人質)として黒の国の王宮で暮らしていた・・
記憶をなくし子供の姿になってしまった彼(アーシュ)黒の王に愛され
廻りの人々にも愛されて‥穏やかな日々を送っていた・・
雪花祭りの日に彼女はアーシュに誘われ女官長ナーリンとともに
出かけるが
そこで大きな事件が・・
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる