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天童寺 茜の章
な、内緒です!
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ガーッとシュレッダで刻まれていく紙をじっと見る。
眠い。すんごく眠い。
でも営業マンにとって机の整理は重要なんだ。書類でぐしゃっとしていたらそれだけで仕事ができなさそうだと思われてしまう。いや出来ますよ? 出来ますけど、そう思われたらなんか嫌でしょ?
それに眠いのだって完全に自業自得だし、あああと頭を抱えたい。
挙動不審な男になりかけているのには訳がある。実はこのあいだ弟の彼女と寝てしまったのだ。といっても浮気させたわけじゃない。間違えて弟ではなく俺の部屋に来てしまい、暗くて茜ちゃんが気づかないのを良いことに……!
あー、死にたい。
だけどシュレッダーの前でしゃがみこむほど憂鬱なのは、もしもまた同じ状況になったとしたら手を出してしまう予感があるからだ。それくらい彼女の身体はやわらかくて気持ちよくて、一介のサラリーマンを易々と骨抜きにするくらい……エッチなんだ。
「徹君、だいじょうぶ?」
うん、もう駄目だと思う。
顔を上げるとそこには俺の上司がいた。眼鏡をかけたキャリアウーマンという感じの人で、きりっとした目つきが少しだけ怖い。
そう思っていると彼女は手をのばしてくる。ぎゅ、と絞めつけてきたのは俺のネクタイだった。
「もう、しっかりして。この猛暑で受注が減っているし、成績をまともに出しているのはあなたくらいなんだから。それで相談なんだけど……」
「いや、ムリデス。いまからノルマを上げるのは」
「そこをなんとか! いやー、今日もかっこいいわねー徹君! いよっ、女ったらし! 憎いっ!」
うーん、古い。褒め方がものすごく古い。あと雑。
上司ではあるが彼女はそう年上でもなくて、優秀さから抜擢された人物だ。たぶん俺のふたつ上くらいかな。
美人だしスーツに包まれている身体は大人なのだが、上司という間柄なのでなんにも思わない。
「聞いてるの、徹君?」
「あ、はい。すみません、少し体調が悪くて」
「あら、夏バテ? 珍しくわね、いつも元気なのに」
そう言い、ぽんと肩に触れてきた。
しっかりなさいという意味であり、当たり前だけどこちらとしても異性として照れたりしない。でも昨夜の茜ちゃんはぜんぜん違った。触れられるとすごく嬉しくて、それだけでなんでもできそうな気がしたんだ。
ふむと目の前の上司はうなずいて、困った奴だと言うように眉間に皺を刻む。
「今日はダメそうね。早く帰って休んだら?」
「いえ、大丈夫です。時間のあるうちに書類を整理しておきたいですし」
と、そう答えたとき、胸ポケットのスマホがピロリロと鳴る。ほどほどにねと言いながら離れていく上司に頭を下げ、そして画面を見ると……。
「千夏ちゃん?」
こんな時間にかけてくることに驚いた。働いているのを当然知っているだろうし、向こうだって学校がある。このあいだの映画館で連絡先を交換したが、まだお昼前にかけてくるのは違和感があった。
きょろきょろ警戒して人に聞かれない場所に移動しながら電話に出ると、千夏ちゃんの第一声が耳に響く。
「助けてっ、トール!」
その震える声は、俺しか頼れる相手がいないと分かるものであり、保護者に似た感情がカッと芽生えた。理由なんてどうでもいい。助けなきゃと思ったんだ。
「分かった、すぐ行く! すみません、やっぱり体調が悪いので帰ります!」
「へ?」
眼鏡の奥で上司の瞳は真ん丸になった。しかし俺には説明する時間もない。自分の鞄を掴むや、ダッと駆け出して会社を後にする。
後に残された上司はぽかんとして、ぱちぱち瞬きをしながら呟いた。
「……元気いっぱいみたいだったけど」
その彼女の声に、うんうんと同僚らは一斉に頷く。しばらく「女だな」「あいつこじれた童貞だし」という根も葉もないあらぬ噂話が職場に流れたらしい。まったく心外である。
さて、電車に駆け込んだは良いが、なにがあったのかはまだ分からない。しかしあの強気な千夏ちゃんが助けを求めたということは、かなり困った事態になっているのだろう。
俺だってバカじゃない。いや基本的にはバカだけど、常識の範囲を分かっている男だと思う。それでも会社を飛び出したのは、とある違和感があったからだ。
知人や親御さんではなく、なぜこのあいだ友達になったばかりの俺に頼る。その時点でもうおかしい。
千夏ちゃんは頭の良い子だ。ちょっと生意気で、唯一の欠点はあのひっどい小説くらいだろう。さっさと将来の夢を「お嫁さん」に変えればいいのに。
おっと、それはどうでもいい。
接した時間は短いが、意味のない行動をしない子だと分かっている。ほら、考えれば考えるほど違和感がムクムクと膨らむだろ?
しかし事情がまったく分からないのは困る。なので電車の椅子に座るとスマホを取り出し、すぐにSNSを起動した。
すぐに「クポォ」というおかしな効果音と共に千夏ちゃんのアイコンが表示される。ちなみにアイコンはゾウムシの写真だった。すごく気持ち悪いな。
それには触れず、タタッと俺はボタンを押す。
「千夏ちゃん、何かあったの?(ぷおん)」
おかしな効果音と共に俺のチャット文が画面に表示される。ちなみに俺のアイコンは目がテンパってる機関車で、爆破が大好きなキャラクターだ。こいつ昔から好きなんだよねー。
「お姉ちゃんが部屋から出てこなくて(くぽぉ)」
「え、茜ちゃんが? 今日は平日だろうに。もしかして風邪?(ぷおん)」
「分かんない。ずっと泣いてるの(>_<)!(くぽぉ)」
なん、だって……!
あまりの事態にぐらりと視界がくらむ。また同時に「そういうことか」と周囲の目も気にせず呻く。
困っていたのは千夏ちゃんではなくてお姉さんのことだった。そして自分まで学校に行かないほど心配でたまらない状況らしい。
これは早退しておいて正解だったな。そう思い、開いたドアから俺は競走馬のように駆け出した。
えーと、確かこの辺だったような……。
しばらく住宅街をさまようと天童寺姉妹の家が見えてくる。まだ新しい家で、新築したばかりかもしれない。うちの倍くらい敷地が広く、また玄関の造りには一般家庭よりも上等な空気を感じた。
空の駐車場を眺めてからSNSで到着を知らせると、階段を下りるような音が聞こえてくる。そしてガチャっと開いた相手は、やっぱり泣きそうな顔の千夏ちゃんだった
「トール、ごめん! 来てくれてありがとう!」
パジャマ姿でサンダルを引っかけて、たたっと玄関から飛び出してくる。そしてためらう素振りもなく、だきっと脇の下に抱きついてきた。俺という援軍到来に勇気づけられたのか、キッと眉毛を吊り上げる。
「来て!」
「いや、よくよく考えたら俺が助けになるかどうか……」
「来て!」
あかん、無限ループだ。しかも相手は子供だから絶対に勝てない。断る選択肢を早々に潰されて、俺は再び天童寺姉妹の家にあがることになった。
二度目の来訪でも広い玄関に驚かされる。靴を履く以外、なにもすることがない場所に金をかけてどうすんの? なんて考えるから俺は一般人なんだ。
姉の部屋も二階にあるらしく、スリッパを履いてすぐに階段を上がっていく。お尻をぐいぐい押されると、なんだか逃げ場を封じられたみたいで嫌だなぁ。
えーと、茜ちゃんの部屋は、と……。
シクシクシク。
どんよりと空気が濁っている部屋からそんな泣き声が聞こえてくる。ぎょっとしたし、思わず階段を一歩下がったら後ろにいた千夏ちゃんからお尻をつねられるという……なんなのこれ。俺にどうして欲しいの。
困りつつ振り返ると、千夏ちゃんは眉をハの字にしていた。
「朝からずっとこんな感じ?」
「ううん、昨日の夜から。いくら呼んでも返事をしないし……ボク、心配だから一人にもできなくて……」
ぐしゅっと鼻を鳴らす様子を見て、つい柄にもなくその子の頭を撫でた。
涙まじりのびっくりした瞳が見あげてきて、てっきり怒られるかと思ったら彼女は服の裾をぎゅっと掴んでくる。そして顔を押しつけて、好きなように頭を撫でさせてくれた。
「お願い。助けて、とーるぅ」
その声を聞いて、間違っていたのは俺だと気づいた。
姉思いの優しい子が勇気を出して連絡してくれたのに、肝心の俺が腑抜けていてどうする。小さな子から頼られたときくらい本気を出さなきゃ男じゃないだろ。
ぽんぽんと背中を叩きながら、俺は意を決した。
茜ちゃんの部屋に振り返り、それからごくんと唾を飲みこんでからノックをする。
「あ、茜ちゃん。俺だけど、具合が悪いのかな?」
そう声をかけたが、妹の千夏ちゃんに対しても無反応だったのを考えると、かなりの長期戦になると覚悟している。下手をしたら日が暮れるまで居座ることになりかねないが……。
そのとき部屋から足音が聞こえてきて「ん?」と俺はつぶやく。勢いよく開かれた戸の向こうには茜ちゃんがいて、目をすっかり腫らしている様子だった。
そして声をかける間もなく襟を掴まれ、外見に合わない力で引き寄せられて……。
ちゅ、と彼女の唇が重ねられた。
驚くほどの柔らかさをしたそれは、このあいだの夜とまったく同じ衝撃を俺に与える。遅れてパジャマに包んだ身体が触れてくると、唇と同じくらい柔らかな感触が伝わる。
一瞬で腑抜けにされてしまった俺は、うっと呻くことしかできない。すぐ隣にいる妹さんから唖然と見あげられているというのに。
体温をみるみる上げていたとき、やっと俺は気がついた。
まさか、まさかまさか、またも声だけで弟と間違えられた!?
ついさっき「俺だけど」なんて言ったせいで彼女は間違えちゃったんだ。ぐあああ、茜ちゃんから公然キスをされるとか胸のバクバクが止まりません!
抱き返してこないのを不審に思ったのか、彼女は瞳をゆっくりと開く。そして茶髪でないことやスーツ姿などに気づき、唇を触れあわせたまま瞳を見開き、ぼっと体温を俺よりも高めた。
「んやああああーーーーっ!?」
天童寺姉妹の家に大きな悲鳴が鳴り響いたのは言うまでもない。
「ごめんなさいごめんなさい! 間違えてごめんなさい、お兄さん!」
そう言うパジャマ姿の茜ちゃんは、本当に申し訳なさそうに身体を小さくさせていた。
いやもうほんと、どんどん間違えてくれないかなーというのが正直な気持ちだよ。
平謝りをする彼女は、さんざん泣いていたらしく瞳を腫らしており、まだ頬に涙の跡を残している。それでも先ほどの勘違いのほうが衝撃だったらしく、顔を隠すのも忘れて謝っていた。
「いや、気にしないで。ある意味で元気そうな顔が見れて良かったよ。ちょっと近距離過ぎだったけど」
「はううっ!」
「お姉ちゃんって、どっか抜けてるよね。普通さぁ、声が似てるからってキスなんてする? ありえないってー」
むすっとしながら千夏ちゃんがそう言うと、返す言葉もないようにお姉さんは顔を赤くしたまま指をもじもじさせる。しかし文句を言いながらも姉の姿を見れて、どこか千夏ちゃんもほっとしているようだった。
ベッドに腰かけた茜ちゃんは、いつもより髪をボサッとさせている。
カーテンを閉めたままの部屋は薄暗いものの、きちんと整理整頓されている部屋だ。勉強机や本棚など彼女自身を表しているようで、正直なところ眺めているだけで楽しい。
視線を戻すとまだ顔を赤くさせた茜ちゃんがいて、ぱちんと瞬きをひとつする。うつむきながら彼女は小さな声でぽそぽそと話しかけてきた。
「あの、今日はお休みなんですか?」
「ううん、実は心配で駆けつけてきたんだ。茜ちゃんが昨日から泣いてばかりで部屋から出てこないって聞いたから」
「うっ、その、ごめんなさい……」
ちらりと妹の表情を見て状況を悟ったのだろう。眉尻を下げながら再び彼女の視線が向けられた。
つま先を揃えて座る彼女はどこか子供っぽくて、このあいだの夜に触れ合った子とは別人のように思う。熱い吐息を繰り返し、すがりついてきた色気が強すぎるあの裸体とは。
でも空気で分かる。
この部屋に満ちている彼女の香りは、いつの間にやら嗅ぎ慣れたものだ。彼女は何ひとつとして変わっていないし、どちらも本当の茜ちゃんなんだと分かっている。
そう思いながら俺は返事をした。
「いや、全然。今日は休もうと思っていたし、天童寺の姉妹は揃って美人だし、来て良かったと思ってるよ」
「ふーん、ついさっきは逃げようとしてたじゃん」
椅子に座った千夏ちゃんから素足で踏まれるのは、容姿を褒めた身としては納得できない。
床にあぐらをかいている俺に、茜ちゃんクスッと笑った。
「ずいぶん仲がいいですね。千夏、お兄さんのこと気に入ったの?」
「ぜんぜん、べっつにー、あんまりかっこよくないし」
「へー、かっこよくないのに、週末はあんなにお兄さんのことを話してたんだー。ふーん、不思議だなー。なんでかなー」
先ほどチクリと小言を聞かされたせいかもしれない。そっぽを向いたお姉さんの反撃に、千夏ちゃんは頬をカッと赤くして、悲鳴をあげそうな表情になる。
「違うって、あれはトールのことを言ったんじゃなくって、映画とか炒飯とか小説とかそういうの! 漫画の趣味だって合うし……じゃなくって、お姉ちゃんこそどうしたの? さっきまであんなに泣いてて心配したんだよ」
うっと茜ちゃんは呻いて、それからまた悲しそうな顔に戻ってゆく。ティッシュを手にすると赤い鼻に当て、グスグスと鳴らし始めるのを俺たちは眺める。
泣く子には勝てないし、こういうときはかけるべき言葉が見つからない。助けになりたくて何があったのか教えてくれるのをじっと待った。
「……れたの」
「え?」
「か、克樹君から、ふっ、フラれちゃったの……!」
顔をくしゃりと歪ませて、茜ちゃんが再び大粒の涙を流す様子に呆然とした。
もう泣き顔を見られて平気になったのか、あーんと大きく口を開けて茜ちゃんは泣く。子供みたいな泣き顔を見て、しかし俺は呆然とした。
最初に思ったのは「は?」だった。
なにかの冗談だと思ったし、彼女を泣かせた相手は弟だと知って驚いた。
常識的にありえないだろう、こんな天使みたいな子を振るなんて。だってこのあいだ弟に聞いたときも可愛くてたまらないとノロけていたんだぞ。
そして唐突に湧き上がったのは明確な怒りだった。
「……あいつに聞いてくる」
「待って! 駄目!」
茜ちゃんはベッドから落ちるような勢いで俺を掴む。泣き腫らした顔がすぐ近くに迫ってきて驚きはするが、俺はもうすべきことを決めていた。それは兄として事情をちゃんと聞いて、彼女が泣かないようにすることだ。
「事情があったんだろう。たぶんあいつに聞いたほうが早い」
「だ、だから、駄目っ! 聞いちゃ駄目っ!」
ぎゅううと強く腕を握られて、お願いと額をそこに当てられて、先ほどの怒りが簡単に消えていくのが分かった。
だけど事情が分からないのは相変わらずだ。じっと俺たちの視線を受け続けて、茜ちゃんは「あー」とか「うー」とか唸りながら心底困ったように身体を左右に揺らす。
「な、内緒です!」
大粒の涙を残しながら、きっぱりと彼女はそう言う。普段であれば姉の威厳でうやむやにできただろうけど、しかし学校と会社を休んだ二人を相手にしては難しいと悟ったようだ。
キッと決意に満ちた視線を向ける先は俺だった。
「お、お兄さん。会社を休んでまで来てくれてありがとう。すごく優しいんですね。私、嬉しかったです」
「トール、騙されちゃ駄目だよ。まず落としやすいほうを標的にされてるんだから。お姉ちゃんの常套手段ー」
「……お兄さん、妹はときどき変なことを言うんです。耳を貸さないでくださいね。それでお願いなんですが、しばらく事情は聞かないでください。これは私の問題なんです」
「うん分かった、事情は聞かない」
「徹っ! 速攻で籠絡されちゃってるじゃんっ! 駄目だっての! 徹、起きろーーっ!」
ガバッと反対側に抱きつかれても俺の意思は変わらない。なぜなら茜ちゃんは天使であり、彼女を守るためならたとえ相手が恐ろしい人食い巨人であろうと俺は全てを駆逐するのだから。
などと思っていたら、茜ちゃんまで腕にガシッとしがみついてくる。
「お兄さん! 初めて会ったとき、優しそうな人だなって思いました! その第一印象を壊さないでください!」
え、あ、ちょっと? なにをしてるのこの美人姉妹は。どうして二人しておっぱいを当ててくるの? もぎゅっ、ふかっ、という擬音が聞こえそうで、パジャマから谷間を見せるとか……ぐおお、幸せすぎて頭から鳩が飛び出しそうなんだけど。
だがこの勝負、圧倒的なまでに茜ちゃんが強い。なぜなら……なんて言うまでもなかったや。
「千夏ちゃん、ちょっと僕たちの邪魔だからあっち行ってて」
「バカーーーーッ!!」
耳をつんざくような大声、そして振りかぶってからの頭突きを妹は行使した。
可愛らしいおでこは凶器と化し、俺の顔面を強打するという……あー、やっぱり会社を休まないで書類の片付けをしていたら良かったなーと思いながら俺は床に沈んだ。
眠い。すんごく眠い。
でも営業マンにとって机の整理は重要なんだ。書類でぐしゃっとしていたらそれだけで仕事ができなさそうだと思われてしまう。いや出来ますよ? 出来ますけど、そう思われたらなんか嫌でしょ?
それに眠いのだって完全に自業自得だし、あああと頭を抱えたい。
挙動不審な男になりかけているのには訳がある。実はこのあいだ弟の彼女と寝てしまったのだ。といっても浮気させたわけじゃない。間違えて弟ではなく俺の部屋に来てしまい、暗くて茜ちゃんが気づかないのを良いことに……!
あー、死にたい。
だけどシュレッダーの前でしゃがみこむほど憂鬱なのは、もしもまた同じ状況になったとしたら手を出してしまう予感があるからだ。それくらい彼女の身体はやわらかくて気持ちよくて、一介のサラリーマンを易々と骨抜きにするくらい……エッチなんだ。
「徹君、だいじょうぶ?」
うん、もう駄目だと思う。
顔を上げるとそこには俺の上司がいた。眼鏡をかけたキャリアウーマンという感じの人で、きりっとした目つきが少しだけ怖い。
そう思っていると彼女は手をのばしてくる。ぎゅ、と絞めつけてきたのは俺のネクタイだった。
「もう、しっかりして。この猛暑で受注が減っているし、成績をまともに出しているのはあなたくらいなんだから。それで相談なんだけど……」
「いや、ムリデス。いまからノルマを上げるのは」
「そこをなんとか! いやー、今日もかっこいいわねー徹君! いよっ、女ったらし! 憎いっ!」
うーん、古い。褒め方がものすごく古い。あと雑。
上司ではあるが彼女はそう年上でもなくて、優秀さから抜擢された人物だ。たぶん俺のふたつ上くらいかな。
美人だしスーツに包まれている身体は大人なのだが、上司という間柄なのでなんにも思わない。
「聞いてるの、徹君?」
「あ、はい。すみません、少し体調が悪くて」
「あら、夏バテ? 珍しくわね、いつも元気なのに」
そう言い、ぽんと肩に触れてきた。
しっかりなさいという意味であり、当たり前だけどこちらとしても異性として照れたりしない。でも昨夜の茜ちゃんはぜんぜん違った。触れられるとすごく嬉しくて、それだけでなんでもできそうな気がしたんだ。
ふむと目の前の上司はうなずいて、困った奴だと言うように眉間に皺を刻む。
「今日はダメそうね。早く帰って休んだら?」
「いえ、大丈夫です。時間のあるうちに書類を整理しておきたいですし」
と、そう答えたとき、胸ポケットのスマホがピロリロと鳴る。ほどほどにねと言いながら離れていく上司に頭を下げ、そして画面を見ると……。
「千夏ちゃん?」
こんな時間にかけてくることに驚いた。働いているのを当然知っているだろうし、向こうだって学校がある。このあいだの映画館で連絡先を交換したが、まだお昼前にかけてくるのは違和感があった。
きょろきょろ警戒して人に聞かれない場所に移動しながら電話に出ると、千夏ちゃんの第一声が耳に響く。
「助けてっ、トール!」
その震える声は、俺しか頼れる相手がいないと分かるものであり、保護者に似た感情がカッと芽生えた。理由なんてどうでもいい。助けなきゃと思ったんだ。
「分かった、すぐ行く! すみません、やっぱり体調が悪いので帰ります!」
「へ?」
眼鏡の奥で上司の瞳は真ん丸になった。しかし俺には説明する時間もない。自分の鞄を掴むや、ダッと駆け出して会社を後にする。
後に残された上司はぽかんとして、ぱちぱち瞬きをしながら呟いた。
「……元気いっぱいみたいだったけど」
その彼女の声に、うんうんと同僚らは一斉に頷く。しばらく「女だな」「あいつこじれた童貞だし」という根も葉もないあらぬ噂話が職場に流れたらしい。まったく心外である。
さて、電車に駆け込んだは良いが、なにがあったのかはまだ分からない。しかしあの強気な千夏ちゃんが助けを求めたということは、かなり困った事態になっているのだろう。
俺だってバカじゃない。いや基本的にはバカだけど、常識の範囲を分かっている男だと思う。それでも会社を飛び出したのは、とある違和感があったからだ。
知人や親御さんではなく、なぜこのあいだ友達になったばかりの俺に頼る。その時点でもうおかしい。
千夏ちゃんは頭の良い子だ。ちょっと生意気で、唯一の欠点はあのひっどい小説くらいだろう。さっさと将来の夢を「お嫁さん」に変えればいいのに。
おっと、それはどうでもいい。
接した時間は短いが、意味のない行動をしない子だと分かっている。ほら、考えれば考えるほど違和感がムクムクと膨らむだろ?
しかし事情がまったく分からないのは困る。なので電車の椅子に座るとスマホを取り出し、すぐにSNSを起動した。
すぐに「クポォ」というおかしな効果音と共に千夏ちゃんのアイコンが表示される。ちなみにアイコンはゾウムシの写真だった。すごく気持ち悪いな。
それには触れず、タタッと俺はボタンを押す。
「千夏ちゃん、何かあったの?(ぷおん)」
おかしな効果音と共に俺のチャット文が画面に表示される。ちなみに俺のアイコンは目がテンパってる機関車で、爆破が大好きなキャラクターだ。こいつ昔から好きなんだよねー。
「お姉ちゃんが部屋から出てこなくて(くぽぉ)」
「え、茜ちゃんが? 今日は平日だろうに。もしかして風邪?(ぷおん)」
「分かんない。ずっと泣いてるの(>_<)!(くぽぉ)」
なん、だって……!
あまりの事態にぐらりと視界がくらむ。また同時に「そういうことか」と周囲の目も気にせず呻く。
困っていたのは千夏ちゃんではなくてお姉さんのことだった。そして自分まで学校に行かないほど心配でたまらない状況らしい。
これは早退しておいて正解だったな。そう思い、開いたドアから俺は競走馬のように駆け出した。
えーと、確かこの辺だったような……。
しばらく住宅街をさまようと天童寺姉妹の家が見えてくる。まだ新しい家で、新築したばかりかもしれない。うちの倍くらい敷地が広く、また玄関の造りには一般家庭よりも上等な空気を感じた。
空の駐車場を眺めてからSNSで到着を知らせると、階段を下りるような音が聞こえてくる。そしてガチャっと開いた相手は、やっぱり泣きそうな顔の千夏ちゃんだった
「トール、ごめん! 来てくれてありがとう!」
パジャマ姿でサンダルを引っかけて、たたっと玄関から飛び出してくる。そしてためらう素振りもなく、だきっと脇の下に抱きついてきた。俺という援軍到来に勇気づけられたのか、キッと眉毛を吊り上げる。
「来て!」
「いや、よくよく考えたら俺が助けになるかどうか……」
「来て!」
あかん、無限ループだ。しかも相手は子供だから絶対に勝てない。断る選択肢を早々に潰されて、俺は再び天童寺姉妹の家にあがることになった。
二度目の来訪でも広い玄関に驚かされる。靴を履く以外、なにもすることがない場所に金をかけてどうすんの? なんて考えるから俺は一般人なんだ。
姉の部屋も二階にあるらしく、スリッパを履いてすぐに階段を上がっていく。お尻をぐいぐい押されると、なんだか逃げ場を封じられたみたいで嫌だなぁ。
えーと、茜ちゃんの部屋は、と……。
シクシクシク。
どんよりと空気が濁っている部屋からそんな泣き声が聞こえてくる。ぎょっとしたし、思わず階段を一歩下がったら後ろにいた千夏ちゃんからお尻をつねられるという……なんなのこれ。俺にどうして欲しいの。
困りつつ振り返ると、千夏ちゃんは眉をハの字にしていた。
「朝からずっとこんな感じ?」
「ううん、昨日の夜から。いくら呼んでも返事をしないし……ボク、心配だから一人にもできなくて……」
ぐしゅっと鼻を鳴らす様子を見て、つい柄にもなくその子の頭を撫でた。
涙まじりのびっくりした瞳が見あげてきて、てっきり怒られるかと思ったら彼女は服の裾をぎゅっと掴んでくる。そして顔を押しつけて、好きなように頭を撫でさせてくれた。
「お願い。助けて、とーるぅ」
その声を聞いて、間違っていたのは俺だと気づいた。
姉思いの優しい子が勇気を出して連絡してくれたのに、肝心の俺が腑抜けていてどうする。小さな子から頼られたときくらい本気を出さなきゃ男じゃないだろ。
ぽんぽんと背中を叩きながら、俺は意を決した。
茜ちゃんの部屋に振り返り、それからごくんと唾を飲みこんでからノックをする。
「あ、茜ちゃん。俺だけど、具合が悪いのかな?」
そう声をかけたが、妹の千夏ちゃんに対しても無反応だったのを考えると、かなりの長期戦になると覚悟している。下手をしたら日が暮れるまで居座ることになりかねないが……。
そのとき部屋から足音が聞こえてきて「ん?」と俺はつぶやく。勢いよく開かれた戸の向こうには茜ちゃんがいて、目をすっかり腫らしている様子だった。
そして声をかける間もなく襟を掴まれ、外見に合わない力で引き寄せられて……。
ちゅ、と彼女の唇が重ねられた。
驚くほどの柔らかさをしたそれは、このあいだの夜とまったく同じ衝撃を俺に与える。遅れてパジャマに包んだ身体が触れてくると、唇と同じくらい柔らかな感触が伝わる。
一瞬で腑抜けにされてしまった俺は、うっと呻くことしかできない。すぐ隣にいる妹さんから唖然と見あげられているというのに。
体温をみるみる上げていたとき、やっと俺は気がついた。
まさか、まさかまさか、またも声だけで弟と間違えられた!?
ついさっき「俺だけど」なんて言ったせいで彼女は間違えちゃったんだ。ぐあああ、茜ちゃんから公然キスをされるとか胸のバクバクが止まりません!
抱き返してこないのを不審に思ったのか、彼女は瞳をゆっくりと開く。そして茶髪でないことやスーツ姿などに気づき、唇を触れあわせたまま瞳を見開き、ぼっと体温を俺よりも高めた。
「んやああああーーーーっ!?」
天童寺姉妹の家に大きな悲鳴が鳴り響いたのは言うまでもない。
「ごめんなさいごめんなさい! 間違えてごめんなさい、お兄さん!」
そう言うパジャマ姿の茜ちゃんは、本当に申し訳なさそうに身体を小さくさせていた。
いやもうほんと、どんどん間違えてくれないかなーというのが正直な気持ちだよ。
平謝りをする彼女は、さんざん泣いていたらしく瞳を腫らしており、まだ頬に涙の跡を残している。それでも先ほどの勘違いのほうが衝撃だったらしく、顔を隠すのも忘れて謝っていた。
「いや、気にしないで。ある意味で元気そうな顔が見れて良かったよ。ちょっと近距離過ぎだったけど」
「はううっ!」
「お姉ちゃんって、どっか抜けてるよね。普通さぁ、声が似てるからってキスなんてする? ありえないってー」
むすっとしながら千夏ちゃんがそう言うと、返す言葉もないようにお姉さんは顔を赤くしたまま指をもじもじさせる。しかし文句を言いながらも姉の姿を見れて、どこか千夏ちゃんもほっとしているようだった。
ベッドに腰かけた茜ちゃんは、いつもより髪をボサッとさせている。
カーテンを閉めたままの部屋は薄暗いものの、きちんと整理整頓されている部屋だ。勉強机や本棚など彼女自身を表しているようで、正直なところ眺めているだけで楽しい。
視線を戻すとまだ顔を赤くさせた茜ちゃんがいて、ぱちんと瞬きをひとつする。うつむきながら彼女は小さな声でぽそぽそと話しかけてきた。
「あの、今日はお休みなんですか?」
「ううん、実は心配で駆けつけてきたんだ。茜ちゃんが昨日から泣いてばかりで部屋から出てこないって聞いたから」
「うっ、その、ごめんなさい……」
ちらりと妹の表情を見て状況を悟ったのだろう。眉尻を下げながら再び彼女の視線が向けられた。
つま先を揃えて座る彼女はどこか子供っぽくて、このあいだの夜に触れ合った子とは別人のように思う。熱い吐息を繰り返し、すがりついてきた色気が強すぎるあの裸体とは。
でも空気で分かる。
この部屋に満ちている彼女の香りは、いつの間にやら嗅ぎ慣れたものだ。彼女は何ひとつとして変わっていないし、どちらも本当の茜ちゃんなんだと分かっている。
そう思いながら俺は返事をした。
「いや、全然。今日は休もうと思っていたし、天童寺の姉妹は揃って美人だし、来て良かったと思ってるよ」
「ふーん、ついさっきは逃げようとしてたじゃん」
椅子に座った千夏ちゃんから素足で踏まれるのは、容姿を褒めた身としては納得できない。
床にあぐらをかいている俺に、茜ちゃんクスッと笑った。
「ずいぶん仲がいいですね。千夏、お兄さんのこと気に入ったの?」
「ぜんぜん、べっつにー、あんまりかっこよくないし」
「へー、かっこよくないのに、週末はあんなにお兄さんのことを話してたんだー。ふーん、不思議だなー。なんでかなー」
先ほどチクリと小言を聞かされたせいかもしれない。そっぽを向いたお姉さんの反撃に、千夏ちゃんは頬をカッと赤くして、悲鳴をあげそうな表情になる。
「違うって、あれはトールのことを言ったんじゃなくって、映画とか炒飯とか小説とかそういうの! 漫画の趣味だって合うし……じゃなくって、お姉ちゃんこそどうしたの? さっきまであんなに泣いてて心配したんだよ」
うっと茜ちゃんは呻いて、それからまた悲しそうな顔に戻ってゆく。ティッシュを手にすると赤い鼻に当て、グスグスと鳴らし始めるのを俺たちは眺める。
泣く子には勝てないし、こういうときはかけるべき言葉が見つからない。助けになりたくて何があったのか教えてくれるのをじっと待った。
「……れたの」
「え?」
「か、克樹君から、ふっ、フラれちゃったの……!」
顔をくしゃりと歪ませて、茜ちゃんが再び大粒の涙を流す様子に呆然とした。
もう泣き顔を見られて平気になったのか、あーんと大きく口を開けて茜ちゃんは泣く。子供みたいな泣き顔を見て、しかし俺は呆然とした。
最初に思ったのは「は?」だった。
なにかの冗談だと思ったし、彼女を泣かせた相手は弟だと知って驚いた。
常識的にありえないだろう、こんな天使みたいな子を振るなんて。だってこのあいだ弟に聞いたときも可愛くてたまらないとノロけていたんだぞ。
そして唐突に湧き上がったのは明確な怒りだった。
「……あいつに聞いてくる」
「待って! 駄目!」
茜ちゃんはベッドから落ちるような勢いで俺を掴む。泣き腫らした顔がすぐ近くに迫ってきて驚きはするが、俺はもうすべきことを決めていた。それは兄として事情をちゃんと聞いて、彼女が泣かないようにすることだ。
「事情があったんだろう。たぶんあいつに聞いたほうが早い」
「だ、だから、駄目っ! 聞いちゃ駄目っ!」
ぎゅううと強く腕を握られて、お願いと額をそこに当てられて、先ほどの怒りが簡単に消えていくのが分かった。
だけど事情が分からないのは相変わらずだ。じっと俺たちの視線を受け続けて、茜ちゃんは「あー」とか「うー」とか唸りながら心底困ったように身体を左右に揺らす。
「な、内緒です!」
大粒の涙を残しながら、きっぱりと彼女はそう言う。普段であれば姉の威厳でうやむやにできただろうけど、しかし学校と会社を休んだ二人を相手にしては難しいと悟ったようだ。
キッと決意に満ちた視線を向ける先は俺だった。
「お、お兄さん。会社を休んでまで来てくれてありがとう。すごく優しいんですね。私、嬉しかったです」
「トール、騙されちゃ駄目だよ。まず落としやすいほうを標的にされてるんだから。お姉ちゃんの常套手段ー」
「……お兄さん、妹はときどき変なことを言うんです。耳を貸さないでくださいね。それでお願いなんですが、しばらく事情は聞かないでください。これは私の問題なんです」
「うん分かった、事情は聞かない」
「徹っ! 速攻で籠絡されちゃってるじゃんっ! 駄目だっての! 徹、起きろーーっ!」
ガバッと反対側に抱きつかれても俺の意思は変わらない。なぜなら茜ちゃんは天使であり、彼女を守るためならたとえ相手が恐ろしい人食い巨人であろうと俺は全てを駆逐するのだから。
などと思っていたら、茜ちゃんまで腕にガシッとしがみついてくる。
「お兄さん! 初めて会ったとき、優しそうな人だなって思いました! その第一印象を壊さないでください!」
え、あ、ちょっと? なにをしてるのこの美人姉妹は。どうして二人しておっぱいを当ててくるの? もぎゅっ、ふかっ、という擬音が聞こえそうで、パジャマから谷間を見せるとか……ぐおお、幸せすぎて頭から鳩が飛び出しそうなんだけど。
だがこの勝負、圧倒的なまでに茜ちゃんが強い。なぜなら……なんて言うまでもなかったや。
「千夏ちゃん、ちょっと僕たちの邪魔だからあっち行ってて」
「バカーーーーッ!!」
耳をつんざくような大声、そして振りかぶってからの頭突きを妹は行使した。
可愛らしいおでこは凶器と化し、俺の顔面を強打するという……あー、やっぱり会社を休まないで書類の片付けをしていたら良かったなーと思いながら俺は床に沈んだ。
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