ヨッシーのショートshort

ヨッシー@

文字の大きさ
上 下
12 / 31

耳人(みみびと)2

しおりを挟む
ヨッシーのショートshort「耳人(みみびと)2」

「反対側にはな、別の耳人が住んでいるからな」
えっ!誰だろう?……

あの日以来、
私は、ずっと気になっていた。
もう一人の耳人、
いったい誰なんだろう?

ある日、
反対側の耳から耳垂れが出た。
ダラダラと垂れてくる。いろいろ対処したが、いっこうに耳垂れは止まらない。
「もうダメだ、病院へ行こう」
私は耳鼻科へと行った。

「どうしました?」
「はい、耳から耳垂れが止まらないのです」
「そうですか、どれどれ」
先生は、私の耳の中を覗いた。
「ははーん、」
「これは、耳人がお風呂のお湯を溢したのですね」
「耳人!?」
私は驚いた。
「先生は、耳人を知っているんですか?」
「当たり前だよ、私は耳鼻科医だよ」
「それなら話が早い。こちらの耳の耳人を出してくれませんか?」
「何故?」
「一度、話がしたかったんですよ」
「ほ~、君は耳人と話をしたことがあるのかい?」
「はい、」
「それは、珍しい。耳人は滅多に外には出てこないんですよ。特に宿主とは一生話もしません。君は運がいい」
「そうですか、たまたま偶然に話をしただけですけど」
「しかし、難しいね。私でも出来るかどうか」
「お願いします、先生」
「解りました。何とかやってみましょう」
「ありがとうございます」
すると、先生は、棚から細長い器具を取り出した。そしてそれを、私の耳の中に差し込んだ。
「シーキューシーキュー耳人さん、耳人さん、こちら耳鼻科医。耳人さん、出てきてちょうだい!耳人さん、出てきてちょうだい!」
何だ、本当にこれで耳人が出てくるのか?
私は。不安に思った。
すると、
ガサッ、ガサガサ、ガサ
耳の中から大きな音がした。
「何ですか~」
「何か用ですか~」
ゴソゴソ、ポン
突然、私の耳の中から、女性の耳人が出て来た。
「おおっ、珍しい。男性の耳から女性の耳人が出て来るなんて」先生は驚いた。
「あなたが、私の耳人ですか?」
「う~ん、そう」
女性は、気だるそうに答えた。
「あなた、お風呂のお湯を溢したでしょう?」先生が言う。
「あれ~、バレた?ちょっとだけなんだけどなぁ~」
「ちょっとじゃないですよ、耳垂れになりましたよ」
「ごめ~ん」
「しかし、何故、女性のあなたが男性の耳の中にいるのですか?」
「う~ん、雰囲気、気まぐれ」
「そんな、」
「うっそ~」
「実は、私は耳人の王女なのです」
「王女は、男性の耳の中で4年間修行を積まなければなりません」
「そうなのですか」
「珍しい、私も知らなかった」先生がメモをとる。
「でも、もうすぐお別れです。私は、耳人の女王になるために、国へ帰らなければなりません」
「ええっ、」
「じゃあ、その後は、誰が私の耳の中に入るのですか?」
「安心して下さい。隣の耳人が兼任で仕事を行います」
「大丈夫かな」
「大丈夫ですよ、彼は二刀流耳人ですから、名前はオオタニ」
「そうだったのですか、それは安心です」
「よかった、よかった」先生。

その後、
耳人の王女は、耳人国に戻り戴冠式を行った。
世界各国の耳人の来賓が集まり、それは盛大に行われた。耳人国民たちは国をあげてお祝いをし、私も僭越ながら、その儀式に立ち会った。
王女は緊張しながらも無事、王冠を受け取り王位を継承した。
反対側の耳人も正装をして、私の耳の中から敬礼をしていた。

しばらくして、
反対側の耳人は、たまに耳の外に出て来るようになった。
どこか、遠くを見つめ、
誰かを思い出しているような……

そう言えば、王女の前は誰が私の耳人だっんだろう?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【短編】怖い話のけいじばん【体験談】

松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。 スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

処理中です...