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第69話
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一体どれだけの時間が経過したのだろうか。
視界がゆっくり元に戻ると、辺りは静寂に包まれていた。
目の前のインヴィランド軍からも物音一つしない。
抱きかかえたアナスタシアに目をやると、安らかな表情で静かに寝息を立てている。
「おい、アナスタシア! 大丈夫か?」
「う、う~ん……」
そっと身体を揺すって呼びかけると、アナスタシアは静かに目を開いた。
「……スグル。どうして貴様が私を抱きかかえているのだ? 離せ、この童貞が」
目を開けて早々、俺にそんな悪態をついてきた。
「うっさいわ。ったく、一人で無茶しやがって」
目を覚ました嬉しさを誤魔化すために俺もぞんざいな口調で返した。
「魔法、かけておいてやったぞ。とびっきりのやつをな」
「そうか、ありがとう。なら、私はまた救国の英雄になれるというわけだな」
そう言うとアナスタシアはにっこり微笑んだ。
「お、おう……」
これまでに見たどの笑顔よりも可愛いその表情にドキッとした俺は、ぶっきらぼうに答えるのが精いっぱいだった。
一方、沈黙を守ったままだったインヴィランド軍がにわかにざわめきだした。
「う、嘘だろ……。俺、童貞になっちまったのか?」
「心が、身体が、まるでピュアになったようだ……」
「セックス? 何それ、おいしいの??」
「故郷に帰ったら俺、かみさんにまた筆下ろししてもらうんだ!」
そんな声があちこちから聞こえてきた。
どうやら、インヴィランド軍の兵士たちは悉く純潔になってしまったようだ。
それって明らかに、さっき俺が放った魔法のせいってことだよね。
怒りに任せて物凄いやつをぶっ放したつもりだったけど、まさかインヴィランド軍のみんなを純潔にしてしまうなんて……。
我ながら、何と恐ろしい魔法なのだと背筋がぞくぞくする思いがした。
そう言えば、クリス・マキアはどうなった!?
攻城塔の上に目を凝らすと、クリス・マキアはぺたんと座り込み、震えながらながら何ごとかをぶつぶつと呟いているようだが、ここからではそれを聞き取ることができない。
だがあの様子だと、どうやら彼女にも魔法の効果はあったようだ。
ということは、ついに俺は二人の女神を純潔に戻して欲しいというギガセクスの依頼を達成したことになる。
あぁ、これでやっと元の世界に戻れるのか。
そうすれば由依ちゃんともまた……。
「どうしたのだ、スグル。涙など流して」
抱きかかえていたアナスタシアの顔にぽたぽたと涙がこぼれ落ちている。
えっ? 俺、泣いてるのか!?
「い、いや……、目にゴミが入っただけだ」
俺はバレバレの言い訳で誤魔化した。
「ところで、いつまで私を抱きかかえているのだ? 早く離せ、気持ち悪い」
「なっ!? 俺だって、いつまでもお前の面倒なんて見ていられるか!」
ちょっとムッとした俺はアナスタシアを雑に突き放す。
そうこうしているうちに、インヴィランド軍が撤退し始めた。
「スグル君。まさかこの私が君に純潔にさせられてしまうとは思わなかったわ。今日のところは私の負けね。また会いましょう」
ようやく正気を取り戻したクリス・マキアは、そう言い残すと威儀を正して立ち去っていった。
「あのクリス・マキアを退けるとは大したものじゃ。さすがは我が旦那様と見込んだ男だけのことはある」
いつの間にか隣にいたエスタが俺にねぎらいの言葉をかけてきた。
「くっくっく……。これであやつもまた我と同じ純潔じゃ」
いつにも増して下衆な笑みを浮かべるエスタに思わずドン引く。
「すぐるん♡ さっきのあれって何なにぃ~?♡ あの魔法でぇ~純潔に戻れるのぉ~?♡ だったら私にもかけてかけてぇ~♡」
ヴィニ姐さんが目を輝かせながらぐいぐい迫ってきた。ちょ、だから近いんだってば!
ていうか、さっきの魔法で恐らくヴィニ姐さんも純潔になってると思うのだが、面倒臭いことになりそうだから黙っておくとしよう。
「うわっ、うっざ。そんなことより、早く帰ってヤリゾンで買った本読みたいわ~」
アルティナがだるそうにしてそうぼやいた。
「お前、今回は何にもしてないよね?」
「はぁ? 喧嘩売ってんの? こうしてここに来てやってんじゃん。マジでうざいんですけど」
くそっ、本当にムカつく女だ。いっぺん本気でわからせてやろうか。
ぐうううううううううううううう……。
アルティナの態度にキレそうになったところに、アナスタシアのお腹が盛大に鳴り響いた。
それに釣られて何だか俺も急に腹が減ってきた。
「さて、我らも帰ってご飯にでもするかの」
「はい、エスタ様。そうしましょう!」
「よし、それじゃあ熊肉料理で盛大にパーティーといくか!」
「えっ、熊肉料理ぃ~?♡ 何それ美味しそぉ~♡ あたしも食べたぁ~い♡」
「あたしはいらな~い」
「おいアルティナ。お前、さっきこの戦いが終わったら熊肉料理を食べたいって言っていただろう?」
「はぁ? うっざ、そんなの知らないし」
しばらくの間、俺たちはそんなことを言い合いながらその場に留まり、撤退するインヴィランド軍を見送ったのだった。
視界がゆっくり元に戻ると、辺りは静寂に包まれていた。
目の前のインヴィランド軍からも物音一つしない。
抱きかかえたアナスタシアに目をやると、安らかな表情で静かに寝息を立てている。
「おい、アナスタシア! 大丈夫か?」
「う、う~ん……」
そっと身体を揺すって呼びかけると、アナスタシアは静かに目を開いた。
「……スグル。どうして貴様が私を抱きかかえているのだ? 離せ、この童貞が」
目を開けて早々、俺にそんな悪態をついてきた。
「うっさいわ。ったく、一人で無茶しやがって」
目を覚ました嬉しさを誤魔化すために俺もぞんざいな口調で返した。
「魔法、かけておいてやったぞ。とびっきりのやつをな」
「そうか、ありがとう。なら、私はまた救国の英雄になれるというわけだな」
そう言うとアナスタシアはにっこり微笑んだ。
「お、おう……」
これまでに見たどの笑顔よりも可愛いその表情にドキッとした俺は、ぶっきらぼうに答えるのが精いっぱいだった。
一方、沈黙を守ったままだったインヴィランド軍がにわかにざわめきだした。
「う、嘘だろ……。俺、童貞になっちまったのか?」
「心が、身体が、まるでピュアになったようだ……」
「セックス? 何それ、おいしいの??」
「故郷に帰ったら俺、かみさんにまた筆下ろししてもらうんだ!」
そんな声があちこちから聞こえてきた。
どうやら、インヴィランド軍の兵士たちは悉く純潔になってしまったようだ。
それって明らかに、さっき俺が放った魔法のせいってことだよね。
怒りに任せて物凄いやつをぶっ放したつもりだったけど、まさかインヴィランド軍のみんなを純潔にしてしまうなんて……。
我ながら、何と恐ろしい魔法なのだと背筋がぞくぞくする思いがした。
そう言えば、クリス・マキアはどうなった!?
攻城塔の上に目を凝らすと、クリス・マキアはぺたんと座り込み、震えながらながら何ごとかをぶつぶつと呟いているようだが、ここからではそれを聞き取ることができない。
だがあの様子だと、どうやら彼女にも魔法の効果はあったようだ。
ということは、ついに俺は二人の女神を純潔に戻して欲しいというギガセクスの依頼を達成したことになる。
あぁ、これでやっと元の世界に戻れるのか。
そうすれば由依ちゃんともまた……。
「どうしたのだ、スグル。涙など流して」
抱きかかえていたアナスタシアの顔にぽたぽたと涙がこぼれ落ちている。
えっ? 俺、泣いてるのか!?
「い、いや……、目にゴミが入っただけだ」
俺はバレバレの言い訳で誤魔化した。
「ところで、いつまで私を抱きかかえているのだ? 早く離せ、気持ち悪い」
「なっ!? 俺だって、いつまでもお前の面倒なんて見ていられるか!」
ちょっとムッとした俺はアナスタシアを雑に突き放す。
そうこうしているうちに、インヴィランド軍が撤退し始めた。
「スグル君。まさかこの私が君に純潔にさせられてしまうとは思わなかったわ。今日のところは私の負けね。また会いましょう」
ようやく正気を取り戻したクリス・マキアは、そう言い残すと威儀を正して立ち去っていった。
「あのクリス・マキアを退けるとは大したものじゃ。さすがは我が旦那様と見込んだ男だけのことはある」
いつの間にか隣にいたエスタが俺にねぎらいの言葉をかけてきた。
「くっくっく……。これであやつもまた我と同じ純潔じゃ」
いつにも増して下衆な笑みを浮かべるエスタに思わずドン引く。
「すぐるん♡ さっきのあれって何なにぃ~?♡ あの魔法でぇ~純潔に戻れるのぉ~?♡ だったら私にもかけてかけてぇ~♡」
ヴィニ姐さんが目を輝かせながらぐいぐい迫ってきた。ちょ、だから近いんだってば!
ていうか、さっきの魔法で恐らくヴィニ姐さんも純潔になってると思うのだが、面倒臭いことになりそうだから黙っておくとしよう。
「うわっ、うっざ。そんなことより、早く帰ってヤリゾンで買った本読みたいわ~」
アルティナがだるそうにしてそうぼやいた。
「お前、今回は何にもしてないよね?」
「はぁ? 喧嘩売ってんの? こうしてここに来てやってんじゃん。マジでうざいんですけど」
くそっ、本当にムカつく女だ。いっぺん本気でわからせてやろうか。
ぐうううううううううううううう……。
アルティナの態度にキレそうになったところに、アナスタシアのお腹が盛大に鳴り響いた。
それに釣られて何だか俺も急に腹が減ってきた。
「さて、我らも帰ってご飯にでもするかの」
「はい、エスタ様。そうしましょう!」
「よし、それじゃあ熊肉料理で盛大にパーティーといくか!」
「えっ、熊肉料理ぃ~?♡ 何それ美味しそぉ~♡ あたしも食べたぁ~い♡」
「あたしはいらな~い」
「おいアルティナ。お前、さっきこの戦いが終わったら熊肉料理を食べたいって言っていただろう?」
「はぁ? うっざ、そんなの知らないし」
しばらくの間、俺たちはそんなことを言い合いながらその場に留まり、撤退するインヴィランド軍を見送ったのだった。
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