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第47話

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「――それでは、総額480万フリンとなります」
「……はい?」

 俺たちはクエストの結果を報告したのだが、それに対して受付のお姉さんから衝撃的な金額を告げられたのだった。

「ですから、ワース湖レタス漁ギルドからお客様方のパーティーであるチェリー&バージン様へのご請求が、総額で480万フリンになりますとお伝えしております」

  えっ!? 俺たちパーティーへの請求だって??

「ちょちょちょちょちょ! ちょっと待ってください! レタス漁ギルドからの請求って一体何なんですか?」

 今回レタス漁をするにあたって、俺たちはレタス漁ギルドからボートや漁具一式を借りた。

 その費用は確か5千フリンほどで、それは収獲したレタスをギルドへ売却した利益、つまりクエストの報酬から天引きされることになっている。

 けれど、今回は湖賊との戦いのごたごたでレタスを収穫することができず報酬もなかったため、まだギルドへの支払いができていないのは事実だ。

 それにしても、480万フリンもの請求というのはいくらなんでも納得できる金額じゃない。

「あの……。その請求って何かの間違いじゃないんですか?」
「いえ、ご請求の金額に間違いはございません」

 受付のお姉さんは努めて事務的に、そして異論反論苦情の類は一切受け付けないといったオーラをにじませつつ答えた。

 だが俺たちとしても、このままはいそうですかと受け入れるわけにはいかない。

「ならどうしてそんな金額になるのか、その内訳を詳しく説明してください!」

 受付のお姉さんはため息をつくと、面倒臭いといったような顔で語りだした。

「まず、チェリー&ヴァージン様についてですが、ワース湖を全面的に凍結させてしまったため、それによってレタス漁ができなくなり、レタス漁ギルド及びギルドに所属する漁師の方々へ甚大な損害を与えてしまいました。今も湖は凍結中でレタス漁再開の目途も立っておらず、その間の漁師の方々への補償も含まれております。さらに、湖の凍結により湖上の船舶の航行も不可能となり、現地の流通にも多大な影響が出ております。それら関係各所への損害賠償等も含んでおります。これらを合計した総額が、お伝えしております480万フリンということになります」

 ちょ、ま……。な、何なんだよ、それ。湖が凍結してレタス漁ができない? ギルドや漁師、その他損害を受けた所への補償だって??

 話がリアル過ぎて全然笑えないんですけど……。

 俺は頭の中が真っ白になり、アニメや漫画などでよくある口から魂のようなものがゆらゆらと抜け出ていく感覚がした。

「ですがチェリー&ヴァージン様は、長い間ワース湖を荒らしまわっていた湖賊を撃退なさるという快挙を成し遂げられました。その功績を称えて、本来でしたら請求総額が1000万フリンを超えるところを、480万フリンに減額で妥結ということになりました。良かったですね」

 うなだれる俺を見かねた受付のお姉さんが慰めるようにそう付け加えた。

 減額されても480万フリンって、日本円に換算すると……だいたい7億2千万くらいになるのか。

 無理無理無理! ぜーったいに無理っ!!!

 一生かかっても返せる金額じゃないでしょ、これ……。

 頭を抱える俺の目の前にすっと一枚の紙切れが差し出された。

「旦那様よ。その480万フリン、我が何とかしようではないか」

 顔を上げると、エスタがこれまでに見たことがないほどの、それはもうゲスの極みのような笑みを浮かべて婚姻届けをひらひらさせている。

「その代わり分かっておるの? くっくっくっくっくっ……」

 俺の耳元で悪魔のように囁くエスタ。こいつ……。

 あのおっさんの姉だけあって、やっぱり性格の悪さはよく似てやがる。ていうかエスタの奴、480万フリンもの大金を持っているというのか?

 どんだけパイタケで稼いでるんだよ!

 だが、もしそれだけの金を持っているとして、こいつに借りを作ったら本当に結婚しなければならなくなる。

 俺はエスタの手から婚姻届けを奪い取るとビリビリに破り捨てた。

「ちょ! にゃ、にゃにをする!?」
「ふんっ、480万フリンは俺たちパーティーの借金だ。それなら俺たちみんなで返す。それが筋ってもんだろう」

 俺はすっくと立ちあがると、エスタとアナスタシアへ鋭い視線を送った。

「うむ、貴様の言うとおりだ。私たち三人で返していこうではないか」

 アナスタシアが大きくうなずいて賛同した。

 こういう時のものわかりの良さは、素直にこいつのいいところだ。

 でも元はと言えば、お前の魔法のせいでもあるんだけどな。

 まぁそれを言ったら、作戦を考えてその魔法に期待した俺にも責任があるわけだが。

「よし。気持ちを切り替えて、これからクエストをたくさん引き受けて借金を返してくぞ!」
「「おー!!」」

 俺とアナスタシアは勢いよく拳を振り上げたが、エスタはふくれっ面をしてぷいっとそっぽを向いたのだった。
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