異世界でも童貞確定した俺が【処女膜再生】という超絶に使えない最強魔法を与えられて魔王を倒しにいくお話。

伊勢池ヨシヲ

文字の大きさ
上 下
39 / 70

第39話

しおりを挟む
「あっはははははは! そいつは面白い!」

 突然、沈黙した酒場の空気を打ち破るかのように大きな笑い声が響き渡る。

 振り向くと、そこにはすらっとした長身の美女が立ってた。

 出で立ちは冒険者というよりも荒くれ者といった格好で、左右の腰には剣と短銃の入ったホルダーを帯びている。

 その美女がブーツのヒールをカツカツと響かせながら近づいてきた。

「筋金入りの童貞っていうのがどういうモノなのか興味があるねぇ」

 気付けば見上げるほどの距離に立っている。

 で、でかい……。いや、身長じゃなくて胸がね。アナスタシアの巨乳よりもでかいぞ、これ。

「どれ、見せてもらおうかい。その実力とやらを」

 ――はい?

 美女はやにわに大股を広げてしゃがみ込むと、俺のズボンをパンツごと一気に引きずり下ろした。

 ――!?

 酒場内の視線が俺のに集中してざわめきだす。

「ふーん。こいつは確かに筋金入りだ」

 美女は不敵な笑みとともに舌舐めずりした。

「ちょちょちょちょちょ! あ、あんた、何してくれてんの!?」

 ようやく思考が追いついて何が起きたのか理解した俺は、慌ててズボンを引き上げた。

 あまりの恥ずかしさで顔から火が出そうなんだが! 

 ていうか、筋金入りってどういう意味だよ?

「旦那様よ、諦めるのはまだ早い。我が伴侶と見込んだ男なのじゃ。必ずや一皮剥けた男になると信じておるぞ」

 エスタが訳の分からない励ましの言葉をかけてきた。

「ちょっと待て! 色々と誤解を招くようなことを言うんじゃない! 俺は断じて……」
「大丈夫だ、スグル。いざとなれば手術もあるし、大きい小さいで貴様の童貞としての価値が変わるものではない」

 アナスタシアが俺の肩にぽんと手をのせて、同情と憐み、そして微かな侮蔑も含んだ笑みを浮かべた。

「ちょ、まっ……、お前まで何言ってんの? お、俺は被ってなんかいないし、その……ちょっとしか? そ、それに大きさだってその、平均よりは……ごにょごにょ」

 股間を押さえてもじもじする俺に、アナスタシアとエスタ、さらには謎の美女までもが生温かい視線を向けてきた。

 くそっ。一体何の罰ゲーム、いや羞恥プレイだよ……。

「おい、俺のズボンを引きずり下ろしたそこのあんた! 思いっきりセクハラだぞ、これ! ていうか、あんたは一体何者なんだ!?」


 見たところ只者でないことだけは分かる。エロさで言ってもアナスタシアの三割増し、いや五割増しといった感じだ。

「あたいが誰だか知りたいのかい? いいだろう、筋金入りのアレを見せてもらったお礼に教えてやろうじゃないか」

 美女は腰に帯びた剣を鞘から引き抜くと、黒い瞳に妖艶な色を湛えつつ剣の腹にねっとりと舌を這わせた。

「じゅるるるるる……。あたいの名はメートウ。この辺りじゃ湖賊の頭目だとかでちょいとばかり恐れられているようだけど」

 湖賊の頭目だって!?

 酒場内が一気に騒然として、俺の周りにいた客らが慌ててその場から逃げ出した。

 俺も逃げ出したいところだが、蛇に睨まれたカエルのように体が硬直して動けない。

 近くにいたアナスタシアは剣の柄に手を掛け、エスタも慌てて身構える。だが、二人ともそれ以上は身動きが取れない様子だ。

 目の前にいるこの女のせいで今日の儲けがなくなったのかと思うと、俺は恐怖とは裏腹にふつふつと怒りが込み上げてきた。

「おや? どうしたんだい、そんな怖い顔で睨みつけて。そんな目で見つめられたらあたい、ゾクゾクしちまうじゃないか」

 メートウは身をよじって悶えだした。

 その一瞬の隙を突いてアナスタシアが鞘から剣を引き抜き、エスタも勢いよく飛び掛かったのだが――。

 メートウは目にも留まらぬ速さで腰のホルダーから短銃を取り出すと、それをくるりと翻してアナスタシアには銃口を、もう片方の手に持っていた剣をエスタに向けた。

「動くんじゃないよ! 少しでも動いてみな。その可愛い顔にどでかい風穴が空いて、おチビちゃんも串刺しだよ!」
「……くっ」
「むむむ……」

 アナスタシアとエスタは完全に動きを封じ込まれ、にわかに緊張が高まった。

「あたいはそこの筋金入りの坊やに用があるんだ。邪魔するんじゃないよ!」

 そう言って凄むメートウの気迫に圧倒されて、場内はしんと静まりかえる。

「――さて。坊やはさっき、湖賊と戦うって随分と威勢のいいことを言っていたじゃないか。それはこのあたいとやり合うってことでいいのかい?」

 メートウは二人へ向けた銃と剣の構えを崩すことなく片足を俺の方へすっと伸ばすと、つま先で下半身の辺りをゆっくりと撫で回してきた。

 えっ!? あ、ちょ……。

 俺は恐怖とエロさに圧倒されてぴくりとも動くことができない。

 だがそれとは裏腹に、ある部分だけは素直に反応してしまっている。

「おや? どうしたんだい。ここに筋金が入ってきたようじゃないか」

 ニンマリと淫靡な笑みを浮かべて、さらに艶めかしくつま先を動かすメートウ。

 ま、まずい……。身体は動かないけれど、これは前のめりにならざるを得ない。

「や、止めろおおおおおおおお!」

 俺の叫び声でメートウが足の動きを止めた一瞬の隙を突いて、アナスタシアが剣を真一文字に振り払い、エスタもメートウ目がけて飛び掛かった。

 メートウはそれらをしなやかな身体の動きでひらりひらりとかわしつつ、再びその場で剣と短銃を二人に向けて構え直した。

 その身のこなしは曲芸のように美しく、しかもかなり戦闘に慣れているといった感じで、さすがは湖賊の頭目だけのことはある。

「ふん……。何だか興が削がれちまったねぇ」

 メートウはすっと構えを解くと、やれやれといった仕草をして見せた。

「いいモノを拝ませてもらったことだし、今日のところはこれで引き上げようじゃないか。そこの筋金入りの坊や。もしもあたいと本気で戦うっていうならいつでもかかってきな!」

 メートウは手にした剣を俺に向けると、殺気を帯びた鋭い目つきで睨みつけた。

「何なら、戦うのは湖の上じゃなくてあたいのベッドの上でもかまやしないよ?」

 今度は一転してエロい顔つきになり、片手に持っていた短銃の銃口を舌先でれろれろと弄んだ。

 それを見て俺はぞくぞくっとするのと同時に、ベッドの上での戦いというのを想像してちょっとだけ前のめりになる。

 だってしょうがないじゃない、童貞なんだもの……。

「ふふん、坊やのソレはやる気満々じゃないか。楽しみにしてるよ」

 メートウはくるりと身を翻すと、高笑いを浮かべて悠然と立ち去って行った。

 俺は全身の力が一気に抜けてへなへなとその場に座り込んだ。

 メートウの圧倒的なまでの気迫とエロさを前にして、何もできなかった自分がひどく情けない。

「……スグル。筋金入りの坊やなのにあの女とやり合って本当に勝てるのか?」

 何やら含みのあるジト目でアナスタシアが問いかけてきた。

「おい、それはどういう意味だ? ていうか、筋金入りの坊やって言うのは止めろ! そもそも、お前のせいでそんな風に呼ばれたんだぞ!」

 アナスタシアはそんなの知ったことかとぷいっとそっぽを向いた。

「我は旦那様があの女とやり合うのには反対じゃ! ましてベッドの上でなどもっての外じゃぞ!」

 エスタはエスタで何か勘違いしているようだ。

「ベッドの上で戦うわけないだろう! 真正面からぶつかり正々堂々と戦って勝つ。だから、そのためにもお前たちの協力が必要だ!」

 俺は強がってそう言ってはみたものの、ガタガタと震えが止まらなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...