異世界でも童貞確定した俺が【処女膜再生】という超絶に使えない最強魔法を与えられて魔王を倒しにいくお話。

伊勢池ヨシヲ

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第23話

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 晩メシを食べ終えると、辺りはもうとっぷり陽が暮れていた。

 焚き火がパチパチと音を立てて勢いよく燃えている。

 俺たちはしばらくの間、無言のまま焚き火を見つめていた。

 あぁ。いいな、この雰囲気。焚き火を見ていると何だか落ち着ついてくる。

 体育座りのように膝を抱えて座っているアナスタシアは、お腹がいっぱいになって眠くなってきたのか、炎を見つめる目がとろんとしていた。

 そういえば、俺はまだこいつのことを何にも知らないんだよな。

 自分のことを救国の英雄とか言っている、痛くて面倒臭い奴ってこと以外は。

「なぁ、アナスタシア」
「ふぁい?」

 アナスタシアがよだれをこすりながら寝ぼけた顔を上げた。

「お前はどうして一人で旅なんかしているんだ? 救国の英雄になるとか言っていたが」

 さっきまで眠たげな顔をしていたアナスタシアは、急に真顔になると静かに語りだした。

「私の目的はただ一つ。それは偉大なる祖国フリンスに忠誠を尽くし、悪逆無道のインヴィランドからこの国を守ることだ」

 アナスタシアの語るところを要約すると、つまりはこういうことだ。

 俺たちが今いるここはフリンスという国で、海を挟んだ島国インヴィランドとの間で千年にもわたって戦争が続いている。

そんな中、今から300年ほど前にアナスタシアの故郷がインヴィランドによって攻められ、大きな被害を受けたという。

 それからというもの、アナスタシアの故郷ではインヴィランドへの復讐を誓い、その地から神によって選ばれた救国の英雄が現れて、フリンスをインヴィランドの侵略から守り戦争を終結へと導く。

 その神に選ばれし者こそが自分なのだと。

 ふむふむ。神に選ばれて救国の英雄になり祖国を救うか。なるほどなるほど……。

 って、やっぱりこれって完全に拗らせてる奴じゃねーか!

 さっき食材を買い込んだ雑貨屋の親父にチラッと聞いた話だと、確かにフリンスとインヴィランドは千年近く戦争をしていたらしい。

 だが、今は事実上の休戦状態になっていて、両国の国民は普通に行き来しているという。
 
 つまり、フリンスは別に危機的な状況にある訳ではない。

 それなのに、アナスタシアは自らを神に選ばれた救国の英雄だと思い込んでいる。

 そのためインヴィランド人を敵視して、見かけると手当たり次第に戦いを挑んでいるという訳か。

 俺がこの世界へ飛ばされてきた時もまさにそういう状況で、アナスタシアは逆に返り討ちに遭い、男たちに襲われていたのだな。
 
 そんなの命が、いや、純潔しょじょがいくらあっても足りないだろう。

 それでも、自分は神に選ばれし者だからと、頑なに純潔であることにこだわり続けているんだな。

 改めて、こいつはあまりに痛過ぎる。

 そんなアナスタシアの方へ目をやると、すでに横になって寝息を立てていた。

「おい、こんなところで寝ると風邪引くぞ。起きろ!」
「う、う~ん……私は神に選ばれし者。祖国フリンスを……むにゃむにゃ」

 俺はアナスタシアをテントへ連れて行こうと、その腕を取って肩へと回す。

 時折り柔らかい感触が俺を襲い、その度によろめきながらも、どうにかこうにかアナスタシアをテントまで運び入れた。

 寝袋に入れてやるのも面倒なので、そっとそれを掛けてやった。

「スグル……」

 ん? 起きたのか??

「カレーヌードルおかわり! むにゃむにゃ……」

 ったく、寝言かよ。

 よだれを垂らして満足そうな顔で眠るアナスタシアを見て、やっぱりこいつのことを放っては置けないと改めて思うのだった。
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