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第17話

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 ボンクエを後にした俺たちは今後の生活拠点を確保するべく、不動産屋のような場所をいくつか回ってみた。

 だが、当然ながら物件の家賃はどこも高くて、所持金では初期費用すら賄えない。

 そもそも現在の所持金は、ゴブリンを倒して得た150フリンから、二人分の入市税100フリンを差し引いた50フリンしかない。

 ちなみに、この国の通貨の単位はフリンというらしい。1フリンは日本円に換算すると、感覚的にだいたい150円くらいだろうか。

 とにかく、今の手持ちの金では宿屋にも泊まれない。

 どうする……。

「おい、アナスタシア! これからどうしたらいいか、お前も少しは考えろよな!」

 ――って、あれ?

 振り返ってみるとアナスタシア姿が見えなくなっている。

 さっきまで『死にたい、殺してくれ』と念仏のように呟いて、俺の後をゾンビのようについてきていたはずなのに。

 一体どれだけ面倒かけるんだよ、あの女……。

 いや、待てよ?

 これはあいつとおさらばできるまたとないチャンスじゃないのか?

 そうだ、そうだよ!

 今度というこそ、あの面倒臭い女から解放されて俺は自由になれるんだ! 

 よーし、ここからが俺の本当の異世界生活の始まりだ!

 ………………。

 だぁああああああああああああああ!

 くそっ! やっぱり放っては置けないか……。

「おーい、アナスタシア! どこ行ったぁ?」

 俺は来た道を戻り、立ち寄った場所をあちこち探して回ってみたものの、アナスタシアの姿はどこにも見当たらない。

 あいつのことだから、また誰かに襲われているなんてことも十分にあり得る。二度あることは三度あると言うからな。
 
 そんな不安が頭の中をよぎったその時、路地裏の方から何やら騒がしい物音が聞こえてきた。

 そこから漏れてくる男の下卑た声に嫌な予感しかしない。

「アナスタシア!?」

 俺は急いでその路地裏へ駆け寄ってみると、案の定嫌な予感は的中した。

 街のチンピラといった風体の男二人に、アナスタシアが襲われているじゃないか!

「ひっひっひっ。すげーエロい身体してるじゃねーか、ねーちゃんよぉ」
「死にたいってんなら、その前に俺たちがたっぷりと可愛がってやんよ! ぐひひひひ」

 男のうちの一人は、すでにアナスタシアの上に覆いかぶさり激しく動いている。

 あぁ~もう! またこれかよ……。
 
 この状況からして、もう完全に手遅れな感じなのだが、かといって放って置くこともできない。

 ふと辺りを見回すと、またまた都合よく手頃な木の棒が落ちているじゃないか。

 俺はその木の棒を手に取り《ネェル・伝説の剣》と名前を付けると、男たち目がけて飛び掛かっていった。

 さすがに三度目ともなると俺も手慣れたもので、チンピラどもを一瞬で叩きのめした。

 そしてアナスタシアはというと――。

「あは、あはは、あははははは……」

 レ○プ目の色がさらに濃くなり、仰向けのまま虚空を見つめ笑い声を上げている。

 一日に三回もこんな目に遭えば、そりゃこうなるよな。

 それにしても、何て残念で痛い女の子なのだろう……。

「アナスタシア。ほら、起きろ」

 俺は彼女の手を取って起き上がらせようとするものの、もはや本人にはその気力もなく、その場にぐにゃりと倒れ込んでしまう。

 しょうがない、背負ってやるか。

 ――ずしっ。

「お、おんもっ!」

 鎧を着ているからなのか、それとも推定Hカップの乳のせいなのか、背負ってみるとアナスタシアは案外重かった。

「今日はその……、色々と大変だったな。明日になったらまた魔法をかけてやるよ。そうしたらまた純潔しょじょに戻れる。だから今は少しだけ我慢しとけ。いいな?」

 正直なところ、今の俺にはこれくらいの言葉しかかけてやることができない。

「……うん」

 背中から小さなうなずく声と、ずずっと鼻水をすする音が聞こえた。
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