異世界でも童貞確定した俺が【処女膜再生】という超絶に使えない最強魔法を与えられて魔王を倒しにいくお話。

伊勢池ヨシヲ

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第8話

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「ならば、わしに魔法をかけてみよ」

 ギガセクスは大事なことなので二回言いました的に繰り返した。

「いやいやいや。リヴァージンって処女膜を再生する魔法なのだろう? ならおっさんにかけても意味ないし、魔法の効果も確認できないじゃないか」
「だがここにはわしとお主しかおらぬ。魔法を試したいのであればわしにかければよい。効果のありなしは……まぁ本番で確かめればよかろう」

 おいおい。それが一番大事なことなんだが!

 ほんっと適当だな、このおっさん。

「分かったよ。なら言う通りおっさんに魔法をかけてやる」

 確か取説に、魔法の発動には詠唱が必要だと書いてあったっけ。
 
 えーっと、どれどれ……。

 取説の巻末に詠唱リストが載っているのだが、どれもあまりに痛々しくて声に出して詠唱したくない。

 人前で詠唱したら恥ずかしさで死ぬレベルだぞ、これ。まぁ、もう死んでるけど。

「何をぐずぐずしておる。ちゃっちゃと魔法を試してさっさとと異世界へ行かんか」

 あくびをしながらしっしと追い払う仕草をするギガセクスを見たら、イラッときて詠唱する恥ずかしさが若干薄れてきた。

 よし、これならやれそうだ。

 とりあえず、詠唱リストの中から一番恥ずかしくなさそうなやつを選んでみた。

「し、至高にして清浄なる白き……」

 やべっ、緊張と恥ずかしさで思いっきり声が裏返っちゃったよ。

「だーっはっはっは! 気持ちの悪い声を出しおって、だはははははは!」
 
 ギガセクスは抱腹絶倒し、俺の声真似をしてさらに笑い転げた。

 こいつ……。マジでぜってぇぶっ倒す!

 込み上げてくる怒りで恥ずかしさは一瞬にして吹き飛んだ。

「至高にして清浄なる白き者よ、この声に応え汝の力を以って、この穢れし者を浄化したまえ! リヴァージン!」

 詠唱を終えると、ギガセクスの身体が一瞬ぼわっと青白く光った……だけだった。

 えっ? それで終わり??

 全宇宙最強の禁断魔法っていうからどれだけすごい発動エフェクトなのかと思ったら、一瞬光っただけかよ!

 いくらなんでもしょぼ過ぎるだろ、これ。

 ギガセクスにも特に何の変化もなさそう……!?

「……ひゃん!」

 短く奇声を発したギガセクスは片手で胸を、もう片方の手で股間のあたりを押さえてもじもじしている。

「わ、わし、純潔になっちゃったかもしれん……」

 そう言って恥じらう乙女のように頬を染めるギガセクスに、またしてもほんのり殺意が湧いてきた。

 とりあえず魔法は成功ってことでいいのか、これ……。

   ※   ※   ※

「さて、これで準備は整った。あとはさっさとお主を異世界へ飛ばすだけだ」

 ギガセクスは乙女モードからすっかり元のイラッとくるおっさんに戻っていた。

「それではわしの可愛い女神むすめたちをしっかり純潔しょじょに戻してくるのだぞ。あっ、そうそう。そのついでにサクッと魔王も討伐してきてくれ」

 ――はい?

「ちょちょちょちょちょ、ちょっと待て! 魔王討伐って何だよそれ!? ここに来てさらっとハードル上げてんじゃねぇよ!」

「なぁに、問題ない。お主には最強の禁断魔法を授けたではないか」
「いやいやいや。それって戦闘の役には立たないだろう。俺に魔王討伐は無理だって!」
「大丈夫、大丈夫。ほれ、歯を食いしばれ」

 ギガセクスは俺の両肩に手を乗せてぽんぽんと叩きながら妙なことを言った。

 歯を食いしばれ?

 おっさんが気色の悪い笑みを浮かべたその瞬間、みぞおちに強烈な衝撃が走った。

「ごっふううううううううううう!」

 ギガセクスの腹パンで意識が薄れていく中、俺は復讐を誓った。

 あのおっさん、いつか絶対にぶちのめす――。
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