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知らない世界(後編)~アベノミックス~

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(何者って聞かれても…。)

「ただのさえない人間ですけど…。」

俺が答えると、少女は不思議そうに小首を傾げた。

「人間?この国の者か?それにしては変な服だな…。」

そう言うと少女はまじまじと服を見始めた。
俺はまだ学ランを着ていた。

(これは一体どういう状況なんだ…。)

ここがもし天国なのだとしても、あまりにリアルすぎる。
それに、身体ごと逝くことなんてあるのだろうか。

「あの…ここはどこなんでしょうか?」

まずは聞いた方がいいだろうと、恐る恐る尋ねてみる。

「…え?お前、ここの国の者じゃなかったのか?」
「いや…ここどこっていうより、まずこの世界どこって感じですね…。」
「は?」









少女はそれからこの世界のこと、ここの国のことを話してくれた。
どうやらこの世界は人間だけでなく沢山の種族が共生しているらしい。
昔は縄張り争いで、よく紛争が起きたようだが、現在ではその紛争を止めた者がこの国、バイゼルを仕切っているようだ。
この世界は、通称[アベノミックス]と呼ばれるらしい。
きっと、地球の日本人なら
「いやそれ、アベノミ◯スじゃね?」
とかなんとか言いそうだがそこは触れないでおこう。

少女には、俺のことも話した。
地球に住んでいたこと、家族のこと、死のうとして気づいたらここにいたこと。

「そうか…。どこからきたとかはわかんないけど、お前苦労してたんだな。」
「……どうだろう。ただ、現実に耐えきれずに逃げてきただけだと思うよ…。」
「……そうだな。でも、生きててよかったんじゃないか?」
「…え?」
「生きてなかったら、こんな綺麗な夕日、二度と見ることも無かっただろ。」

崖の上に並んで座っている少女は遠くを見つめている。
俺はそれにつられて正面に向き直った。
何処からか出てきた淡い金色の夕日が顔を出している。

(綺麗…。)

その声は口には出なかった。
口に出したら、自然と涙がこぼれ落ちそうだったから。
こんな夕日は生まれてから一度でも見たことがない。

「辛いことがあっても、こんないいものが一つや二つあれば、些細な事は忘れられるよ。自分の殻にこもって下を向くなんて、勿体無いだろ。こんなに世界は美しいのに。」

俺は泣いた。
視界がぼやける中、ただひたすらに淡い金色を眺めながら。




俺に仲間が二つ、できた瞬間だった。

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