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第3章 クルデ村
Ⅰ
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ドアルドの一団は、クルデ村へと戻っていた。
最後に飛ばされ林の中へ飛ばされたシンジだったが、偶然にも奇跡的にかすり傷程度で済み、今はレアイア達が済む住居で治療をしてもらっている最中だった。
「ほら、シンジじっとしてなさい!」
レアイアの注意の言葉が聞こえているのかどうか、そわそわとしながら外の方にばかり視線を向けていた。
「あんたが心配しても始まらないんだよ。とにかく、傷口は全部、薬草液で消毒しといたけど、打ち身や打撲の痛みは、当分出るからな」
「う、うん、ありがとう」
「はあー」
レアイアはため息をつきながらシンジの様子を伺う。
この子は将来、とんでもない子に成長するんじゃないだろうか?
と、言っても今の様子じゃまだまだかな。
そわそわと外の方ばかり気にするシンジの様子に、まだ子供だなあと思いながらも、この子の将来に希望を見るレアイアだった。
「ほれ、治療は終わったよ。行ってやんな。色々と謝んなきゃいけないんだろう?」
「うん! 行ってくる! レアイア師匠! ありがとう」
笑顔で部屋を飛び出すシンジに手を振って答える。
外へと出たシンジは、母エレノアールが居る診療所へと一直線に向かった。
そこには、シンジ達が助け出した子供達と鬼の女の子が治療して貰っていたからだ。
診療所の前に立つと、シンジはちょっと緊張してしまう。
彼女には色々失礼な事をしてしまったり、見てしまったりと謝る事が多く、どう謝ったら良いか考えがまとまらないでいた。
でも、早く彼女に会いたい気持ちもあった。
今までこの村で過ごして、同年代の女の子に接した事が無く、単純に興味があったからだ。
「でもどうやって話せば良いんだ? 女の子には優しくしなければいけないと、母様はよく言ってたけど、いきなり戦闘してしまったし、印象良くないよな。」
入口でウロウロとするばかりのシンジに突然中から声を掛けられた。
「シンジだね? そんな所で、ウロウロされてちゃ気が散るから入っておいで!」
「は!はい!」
突然呼ばれてびっくりするが、まあ母様ならお見通しだよね、と思えたのでそのまま入る事にした。
「お邪魔しまーす。」
あまり建て付けの良いとは言えない木製の扉が軋む音を出しながら開いていく。
診療所は村の広場から一番遠くに建てられていて村の中では一番大きく一番丁寧に造られている。
その上、シンジの母エレノアールの魔法により、滅菌仕様に付加されていて、はっきり言って各国家の首都などにある診療所より清潔かもしれなかった。
シンジは、入口から左側の通路に入り最初の部屋の前に立つ。
ここにエレノアールに治療されている鬼の女の子がいる。
ドキドキと心臓の音が鳴り止まない。
普段、どんな魔獣とも互角以上に戦いどんな時にも必要以上に緊張しない自分が、こんなにも緊張するものかと驚いていた。
「コンコン」
「シンジだね。ちょっと待ってるんだよ」
「はい」
エレノアールに少し待つように言われ扉の前で待つ。
中からはゴソゴソとかガサガサとか布が擦れる音や人が歩く音が聞こえて来る。
「何してるんだろう?」
ちょっと気になったシンジは耳を扉に当てて聞き耳を立てる。
「んーーあれ?聞こえなくなったぞ?」
さっきまで聞こえていた音が一切聞こえなくなっていた。
それでも何か聞こえないかと扉に張り付く様に体を預けると、バッ!と扉が勢い良く開かれた。
「うっわ!」
突然の事に体制を崩し体ごと前に転がり込む形で部屋の中の入ってしまった。
「シンジ、何やってるんだい?」
3回程前転をして着地した様な格好になっているシンジを見たエレノアールの言葉に、シンジは返す言葉が無かった。
「すまないね。男の子はこう言うところが、がさつでいけないね」
そう言ってシンジの頭をコツンと小突くと、自分は近くにあった丸椅子に座る。
取り残されたシンジは立ち上がると目の前のベットの上に目が釘付けになった。
そこにはシンジと同じ黒い短髪に神秘的な赤い瞳を持つ美しい少女が座ってシンジを見ていた。
いや、見ていたと言うより睨みつけているようだ。
「この子がさっき話していた、私の息子のシンジって言うんだ」
エレノアールが唐突にシンジを紹介すると、少女が小さく頷いた様に見えた。
「あ、あの!僕はシンジ・コールウェルと言います! は!初めまして!」
あ、あれ?先に初めましてだっけ?
準備も何も無く、いきなり紹介されたものだから極度の緊張で思考が出来ていない様子だ。
「初めてじゃない。さっき戦った」
「あ! そ、そうでした! ごめんなさい! いや、戦闘中に色々恥ずかしい思いさせてごめんなさい! 痛かったよね? 本当にごめんね! 喧嘩も酒も、もうしませんから許してください!ってこれはいつもの父ちゃんと母様のやり取りか」
「ゴン!」
「っ痛っっっっ!!」
「いらん事言うんじゃないよ!」
「ご、ごめんなさい母様」
勢い余って夫婦喧嘩をばらしてしまい思いっきり頭を拳で殴られるシンジ。
「フフ、」
今のやり取りを見て彼女が少し笑った様にシンジには見えた気がした。
最後に飛ばされ林の中へ飛ばされたシンジだったが、偶然にも奇跡的にかすり傷程度で済み、今はレアイア達が済む住居で治療をしてもらっている最中だった。
「ほら、シンジじっとしてなさい!」
レアイアの注意の言葉が聞こえているのかどうか、そわそわとしながら外の方にばかり視線を向けていた。
「あんたが心配しても始まらないんだよ。とにかく、傷口は全部、薬草液で消毒しといたけど、打ち身や打撲の痛みは、当分出るからな」
「う、うん、ありがとう」
「はあー」
レアイアはため息をつきながらシンジの様子を伺う。
この子は将来、とんでもない子に成長するんじゃないだろうか?
と、言っても今の様子じゃまだまだかな。
そわそわと外の方ばかり気にするシンジの様子に、まだ子供だなあと思いながらも、この子の将来に希望を見るレアイアだった。
「ほれ、治療は終わったよ。行ってやんな。色々と謝んなきゃいけないんだろう?」
「うん! 行ってくる! レアイア師匠! ありがとう」
笑顔で部屋を飛び出すシンジに手を振って答える。
外へと出たシンジは、母エレノアールが居る診療所へと一直線に向かった。
そこには、シンジ達が助け出した子供達と鬼の女の子が治療して貰っていたからだ。
診療所の前に立つと、シンジはちょっと緊張してしまう。
彼女には色々失礼な事をしてしまったり、見てしまったりと謝る事が多く、どう謝ったら良いか考えがまとまらないでいた。
でも、早く彼女に会いたい気持ちもあった。
今までこの村で過ごして、同年代の女の子に接した事が無く、単純に興味があったからだ。
「でもどうやって話せば良いんだ? 女の子には優しくしなければいけないと、母様はよく言ってたけど、いきなり戦闘してしまったし、印象良くないよな。」
入口でウロウロとするばかりのシンジに突然中から声を掛けられた。
「シンジだね? そんな所で、ウロウロされてちゃ気が散るから入っておいで!」
「は!はい!」
突然呼ばれてびっくりするが、まあ母様ならお見通しだよね、と思えたのでそのまま入る事にした。
「お邪魔しまーす。」
あまり建て付けの良いとは言えない木製の扉が軋む音を出しながら開いていく。
診療所は村の広場から一番遠くに建てられていて村の中では一番大きく一番丁寧に造られている。
その上、シンジの母エレノアールの魔法により、滅菌仕様に付加されていて、はっきり言って各国家の首都などにある診療所より清潔かもしれなかった。
シンジは、入口から左側の通路に入り最初の部屋の前に立つ。
ここにエレノアールに治療されている鬼の女の子がいる。
ドキドキと心臓の音が鳴り止まない。
普段、どんな魔獣とも互角以上に戦いどんな時にも必要以上に緊張しない自分が、こんなにも緊張するものかと驚いていた。
「コンコン」
「シンジだね。ちょっと待ってるんだよ」
「はい」
エレノアールに少し待つように言われ扉の前で待つ。
中からはゴソゴソとかガサガサとか布が擦れる音や人が歩く音が聞こえて来る。
「何してるんだろう?」
ちょっと気になったシンジは耳を扉に当てて聞き耳を立てる。
「んーーあれ?聞こえなくなったぞ?」
さっきまで聞こえていた音が一切聞こえなくなっていた。
それでも何か聞こえないかと扉に張り付く様に体を預けると、バッ!と扉が勢い良く開かれた。
「うっわ!」
突然の事に体制を崩し体ごと前に転がり込む形で部屋の中の入ってしまった。
「シンジ、何やってるんだい?」
3回程前転をして着地した様な格好になっているシンジを見たエレノアールの言葉に、シンジは返す言葉が無かった。
「すまないね。男の子はこう言うところが、がさつでいけないね」
そう言ってシンジの頭をコツンと小突くと、自分は近くにあった丸椅子に座る。
取り残されたシンジは立ち上がると目の前のベットの上に目が釘付けになった。
そこにはシンジと同じ黒い短髪に神秘的な赤い瞳を持つ美しい少女が座ってシンジを見ていた。
いや、見ていたと言うより睨みつけているようだ。
「この子がさっき話していた、私の息子のシンジって言うんだ」
エレノアールが唐突にシンジを紹介すると、少女が小さく頷いた様に見えた。
「あ、あの!僕はシンジ・コールウェルと言います! は!初めまして!」
あ、あれ?先に初めましてだっけ?
準備も何も無く、いきなり紹介されたものだから極度の緊張で思考が出来ていない様子だ。
「初めてじゃない。さっき戦った」
「あ! そ、そうでした! ごめんなさい! いや、戦闘中に色々恥ずかしい思いさせてごめんなさい! 痛かったよね? 本当にごめんね! 喧嘩も酒も、もうしませんから許してください!ってこれはいつもの父ちゃんと母様のやり取りか」
「ゴン!」
「っ痛っっっっ!!」
「いらん事言うんじゃないよ!」
「ご、ごめんなさい母様」
勢い余って夫婦喧嘩をばらしてしまい思いっきり頭を拳で殴られるシンジ。
「フフ、」
今のやり取りを見て彼女が少し笑った様にシンジには見えた気がした。
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