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「死にたいの?」
時刻はちょうど深夜2時半。
幼さを残した可愛らしい声に私は見事にビビりまくった。
お化けだ!!・・・と。
「同感だよ、僕も・・・死にたい」
その存在に気付いた瞬間、街頭どころか街の光が消え去った。
辺りは真っ暗。ただただ満月の光が不気味に閑静な住宅街を照らしている。
音を付けるならギチギチと鳴っているだろう首を恐る恐る声が聞こえた方へと動かした。
「やぁやぁ、こんばんは」
唯一光を失わず、とは言ってもチカチカと点滅し続ける街頭の上にソイツはいた。
満月がちょうどソイツの後ろに煌々と輝いているものだからシルエットぐらいしか満足にはっきりと目には映らない。
目は合っているのだろうか?
目を細めて、そのシルエットの顔辺りをじっと見つめた。
「あ、あんた誰?お化けだったら今すぐに110番するよ!!!」
私はスマホをバッグから素早く取り出して威嚇体制をとる。
「あはっ!面白い思考回路だねー?でも残念、僕はお化けなんて生易しいものじゃないんだ」
「じゃ、じゃあ・・・お化けじゃないの?」
「そう・・・『死神』だよ」
「・・・は?」
「し・に・が・み」
語尾に音符やらハートやらが付属品として付いてきそうなやっすいグラビアアイドルみたいな喋り方をする死神(仮)に少なくとも苛立ちは覚える。
「ねえ、聞いてるかなー?」
死神(仮)にはもうじき大学生になる私が現実と言うものを教えてあげよう。
きっとコイツはイタイ奴なんだ。そうに違いない。
うんうんと一人で頷き解決していく気持ちはまるで名探偵。
そんな自分もはたから見たら大変人・・・なんてこと、気付きもしない。
「自分のことを死神と思い込む変人には初めて出会ったよ」
やはり結論はこうだ。
危ない奴、ないしイタイ奴。
「へえ?───如月 幸だっけ?やっぱり僕の見立て通り愚かでお馬鹿でとぉーっても可愛いんだね?安心したよ」
「な!なんで名前!?」
「生きている限り、命はみぃーんな死神のモノだよ?命を奪うんだから相手の名前を知っていても不思議じゃない、でしょ?」
「はあ!?あんたやっぱり変人通り越して変態だろ!?人の名前は個人情報!!知り合いでもないのになんで知ってんだよ!!!」
「あら?話し聞いてた?僕は変人でも変態でもなく・・・しに・・・ちょっと待って、変態は認めるかも」
「じゃあ変態なの!?来るなら来い!!返り討ちにしてやる!!!」
「あはは!それでこそ110番でしょ!?面白ろ過ぎるんだけど!!」
あれ・・・?今気付いたけど、コイツ鎌みたいの持ってない?
シルエットから窺えるくらいには大きい鎌。月明かりでキラリと反射している金属は赤黒い血みたいなモノがこびりついている。はっきり鎌だと言い切れるのは、それだけ分かりやすいシルエットで・・・いや、本能が訴えかけている。
───────やっぱりコイツやばい奴。
ふと視線を下に向けたその時だった。
「ねえ、聞いてる?」
声が近く、いや、直ぐ耳元で聞こえる。
───顔を上げるな!奴の顔を見るな!戻れなくなるぞ!!
そう、私の中の本能が訴えかける。
鳥肌が全身に現れ、膝がガクガク震え始めた。冷や汗が止まらない。
「あっれー?さっきの威勢はどこに行ったのー?もしかして・・・・・・」
耳元に生暖かい息がかかった。
「僕が誰だかやっと気付いた?」
言い返そうとした。
怯えている自分を認めたくなかった。だって、私は・・・一人で生きて行くって決めたんだ!
こんなことに怯えてどうする!!
負けるな!負けるな!!!
ぐっと顔を上げて、相手の胸ぐらを掴みながら睨み上げた。
───────────────本能に従え。
確かにこの言葉は正しいかもしれない。特に危険を感じた時には。ただし、命の危険を、だ。
真っ黒のローブは全身を覆い隠す程長くて、端はどこかに引っ掛けたみたいに切れ切れだ。
大鎌は青白く光っているが、血が乾いたみたいにこびりついて、かなり生々しい。
思っていたより背が高いみたいで有り得ないくらい威圧感がある。
目深に被ったフードが風に揺られて顔が見えた。
真っ白の骸骨だった。
正にその異形の姿は───────
「し、死神・・・・・・」
「だーいせーかーい!!!」
ポンと頭に手を置かれてよくやったとばかりに頭を撫でられた。
唯一、点滅していた街灯がついに消えて、月でさえも分厚い雲で隠れた。
真っ暗な闇の中で光っていたのは、骸骨から覗く真っ赤な目だった。
時刻はちょうど深夜2時半。
幼さを残した可愛らしい声に私は見事にビビりまくった。
お化けだ!!・・・と。
「同感だよ、僕も・・・死にたい」
その存在に気付いた瞬間、街頭どころか街の光が消え去った。
辺りは真っ暗。ただただ満月の光が不気味に閑静な住宅街を照らしている。
音を付けるならギチギチと鳴っているだろう首を恐る恐る声が聞こえた方へと動かした。
「やぁやぁ、こんばんは」
唯一光を失わず、とは言ってもチカチカと点滅し続ける街頭の上にソイツはいた。
満月がちょうどソイツの後ろに煌々と輝いているものだからシルエットぐらいしか満足にはっきりと目には映らない。
目は合っているのだろうか?
目を細めて、そのシルエットの顔辺りをじっと見つめた。
「あ、あんた誰?お化けだったら今すぐに110番するよ!!!」
私はスマホをバッグから素早く取り出して威嚇体制をとる。
「あはっ!面白い思考回路だねー?でも残念、僕はお化けなんて生易しいものじゃないんだ」
「じゃ、じゃあ・・・お化けじゃないの?」
「そう・・・『死神』だよ」
「・・・は?」
「し・に・が・み」
語尾に音符やらハートやらが付属品として付いてきそうなやっすいグラビアアイドルみたいな喋り方をする死神(仮)に少なくとも苛立ちは覚える。
「ねえ、聞いてるかなー?」
死神(仮)にはもうじき大学生になる私が現実と言うものを教えてあげよう。
きっとコイツはイタイ奴なんだ。そうに違いない。
うんうんと一人で頷き解決していく気持ちはまるで名探偵。
そんな自分もはたから見たら大変人・・・なんてこと、気付きもしない。
「自分のことを死神と思い込む変人には初めて出会ったよ」
やはり結論はこうだ。
危ない奴、ないしイタイ奴。
「へえ?───如月 幸だっけ?やっぱり僕の見立て通り愚かでお馬鹿でとぉーっても可愛いんだね?安心したよ」
「な!なんで名前!?」
「生きている限り、命はみぃーんな死神のモノだよ?命を奪うんだから相手の名前を知っていても不思議じゃない、でしょ?」
「はあ!?あんたやっぱり変人通り越して変態だろ!?人の名前は個人情報!!知り合いでもないのになんで知ってんだよ!!!」
「あら?話し聞いてた?僕は変人でも変態でもなく・・・しに・・・ちょっと待って、変態は認めるかも」
「じゃあ変態なの!?来るなら来い!!返り討ちにしてやる!!!」
「あはは!それでこそ110番でしょ!?面白ろ過ぎるんだけど!!」
あれ・・・?今気付いたけど、コイツ鎌みたいの持ってない?
シルエットから窺えるくらいには大きい鎌。月明かりでキラリと反射している金属は赤黒い血みたいなモノがこびりついている。はっきり鎌だと言い切れるのは、それだけ分かりやすいシルエットで・・・いや、本能が訴えかけている。
───────やっぱりコイツやばい奴。
ふと視線を下に向けたその時だった。
「ねえ、聞いてる?」
声が近く、いや、直ぐ耳元で聞こえる。
───顔を上げるな!奴の顔を見るな!戻れなくなるぞ!!
そう、私の中の本能が訴えかける。
鳥肌が全身に現れ、膝がガクガク震え始めた。冷や汗が止まらない。
「あっれー?さっきの威勢はどこに行ったのー?もしかして・・・・・・」
耳元に生暖かい息がかかった。
「僕が誰だかやっと気付いた?」
言い返そうとした。
怯えている自分を認めたくなかった。だって、私は・・・一人で生きて行くって決めたんだ!
こんなことに怯えてどうする!!
負けるな!負けるな!!!
ぐっと顔を上げて、相手の胸ぐらを掴みながら睨み上げた。
───────────────本能に従え。
確かにこの言葉は正しいかもしれない。特に危険を感じた時には。ただし、命の危険を、だ。
真っ黒のローブは全身を覆い隠す程長くて、端はどこかに引っ掛けたみたいに切れ切れだ。
大鎌は青白く光っているが、血が乾いたみたいにこびりついて、かなり生々しい。
思っていたより背が高いみたいで有り得ないくらい威圧感がある。
目深に被ったフードが風に揺られて顔が見えた。
真っ白の骸骨だった。
正にその異形の姿は───────
「し、死神・・・・・・」
「だーいせーかーい!!!」
ポンと頭に手を置かれてよくやったとばかりに頭を撫でられた。
唯一、点滅していた街灯がついに消えて、月でさえも分厚い雲で隠れた。
真っ暗な闇の中で光っていたのは、骸骨から覗く真っ赤な目だった。
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