リトルクイーンのいけない魔法(R18+)

のどか

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 男はブリュンに耳打ちしました。
「ブリュン様、いろいろと街を当たってみましたが、誰もついてきませんでした」
「ええ? 王室に反感を持ってる人が1人もいないっていうの、貧民街に?」
「それが・・・ この街には貧民街と呼ばれるブロックはないようなんですよ」
「ええ~?・・・」
「かつてはあったようなんですが、50年以上も前に消滅したようです」
「まったくどうなってんのよ、この国? この国に不満を持ってる人は、ウルズ王国出身者とスクルド王国出身者だけなの?・・・」
 ブリュンは間者に、
「ともかく、できるだけ不満分子をかき集めてきて!」
「了解!」
 間者は駆け出しました。ブリュンは遠くにある王宮を見ました。そして姫を思い出し、
「この国の民はみんなあの女王を愛してるっていうの?・・・」
 ブリュンはグラニ帝国第2皇子ナルヴィの顔を思い出し、
「あのバカ皇子とは正反対ね、まったく・・・」

 西陽が差し込む部屋。ここは王宮の姫がいる部屋。姫がふと窓の外の空中要塞を見ました。そして窓に数歩近づきます。
 先ほどは悪態を晒してた姫ですが、飛行魔法を封じられたせいか、心境に変化があったようです。
 今朝初めてあの空中要塞を見たときは、箒に跨り、空中要塞に突入し、中にいるナルヴィと刺し違えるつもりでした。が、今はノルン王国の女王として、できる限り生き延びる道を模索してました。
 今ノルン王国の王室ファミリーは自分だけ。自分が死んでしまうとノルン王国は滅んでしまう。そうなったらノルン王国の国民は・・・
 ま、それでもナルヴィに対する憎しみは、これっぽっちも薄まってませんが。

 その部屋のドアの外、廊下。1人の少女が申し訳なさそうに話してます。少女は低身長。丸いメガネ。そばかす。背中には巨大な風呂敷があります。
 一見すると田舎の小学校高学年ですが、メイド服を着てるところを見ると侍女のようです。
「すまないだ。先に逃げさせてもらいますだ」
 低身長の侍女はそう言うと振り返り、廊下の奥へ。そこには10人ほどの侍従・侍女がいました。全員大きな荷物を持ってます。
 実は王宮では、非戦闘員に退避命令が出てました。それで侍従、侍女衆は順次退避してました。彼らは最後の退避者なのです。
 侍従・侍女たちは一斉にこちらに頭を下げました。
「失礼しまーす!」
 一同は振り返り、廊下のさらに奥へ消えて行きました。
 彼らを見送ったのは、お側ご用人の2人。2人とも小銃を持ってます。2人にも退避命令が出ましたが、自らの意志で、正確には侍女の固い意志で、最後まで姫をお守りすることにしたのです。
 一方侍従の方ですが、逃げたくって逃げたくってしょうがありません。自分の命は大切です。けど、将来を誓い合った侍女は姫を守る気マンマンなので、逃げることができないのです。
 結局侍従は最後まで彼女に付き合うことにしました。侍従は何もないことを祈るしかないようです。
 侍女が侍従を見て、
「さあ、姫の警護の続きを!」
「うん!」
 侍女はドアを開け、部屋の中へ。侍従も続きます。閉まるドア。

 さらにあたりは暗くなってきました。もう夜と言っていいでしょう。ここはノルン王国の田舎にある街道。1台の馬車がとぼとぼと進んでます。首都イザベルから逃げてきた馬車です。
 その馬車の馬をコントロールする席に2人の男性が並んで座ってます。2人はつぶやくように会話してます。
「グラニ帝国が上陸してきたら、ここいらも占領されちまうんだろうな?」
「ノルン王国の国土すべてがグラニ帝国のものになっちまうのかなあ?・・・」
「オレたち、いったいどこに逃げればいいんだ?・・・」
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