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侍従長がコマンダーの疑問に応えます。
「まあ、今はあると仮定した方がよいじゃろう。あれだけのブツを空に飛ばす技術があるんじゃ。いったい何を積んでることやら?・・・
やはり今夜、闇に乗じて姫を王宮の外に逃がすことにしよう!」
全員一斉に応えます。
「御意!」
コマンダーはまだ疑問があるようです。
「しかし、無事に脱出させることができるんですか、姫を、この王宮から? 闇に乗じて脱出させるにしても、この王宮の周りにはいろんな人がいますよ」
侍従長は再び応えます。
「この国の王室は国民から愛されておる。一般市民は見逃してくれるじゃろう」
侍従長はここで視線をあっちの方に向け、
「しかしじゃ、それでも王室によからぬ感情を抱いてるやつがいるな・・・ 特にウルズ王国とスクルド王国の出身者は何をしてくることやら・・・」
将軍。
「もっと怖いのが、グラニ帝国の間者じゃ。やつら、かなりの数の間者をイザヴェル忍び込ませてるはずじゃ。隙あらば姫の命を狙ってくるじゃろ」
コマンダーは考え込みます。
「う~ん・・・」
と、何かひらめいたようです。
「そうだ!」
コマンダーは侍従長と将軍を見て、
「国境警備隊を呼びましょう!」
国境警備隊とは元々山賊だった連中。この国の軍隊に平らげられ、現場処刑されるはずでしたが、先代の王に国境警備隊になれという条件で赦免されてました。国旗用警備隊とは名ばかりの愚連隊です。
ちなみに、このヒャッハーなコマンダーは、この愚連隊の棟梁格です。
侍従長と将軍はそんな愚連隊を王宮に招き入れると聞いて芳しくない顔をしますが、コマンダー自身はいいアイデアが浮かんだと思ったらしく、ほくそ笑んでます。
「トランシーバーを使って呼んできますよ!」
と言って、ドアを開け、部屋を出て行きました。侍従長と将軍は顔を見合わせました。お互い肩をすぼめ、渋い顔をしてます。
イザヴェル市郊外の街道。たくさんの荷車や馬車が列をなしてます。大渋滞。怒号が飛び交ってます。
「早く行けよ!」
「何やってんだよ! どけよ!」
大渋滞の先頭、道幅いっぱいの大きな荷車がスタックしていて、多くの兵がその荷車を押して道端に寄せようとしてます。
「せーの!」
しかし、なかなか動きません。どうやら車輪の1つが壊れてるようです。明らかに過積載です。
道端には水路があります。このまま押し続けると、荷車は水路に落ちてしまいます。この荷車の所有者らしき中年の男性と女性が、兵たちに訴えてます。
「ああ、やめてくれ。この荷車には我が家の全財産が積んであるんじゃ・・・」
「私たちはこれがないと生きていけないんです!」
さらに小さな子どもたちが2人、泣きわめいてます。
兵の1人が荷車を押しながら、
「悪いが、ここで立ち往生されてると、後ろのみんなの迷惑になるんだ。緊急避難だ、許せ!」
バシャーン! 荷車が水路に落ちました。中年の男性と女性ははそれを見て崩れ落ちました。
「ああ・・・」
「終わった・・・」
兵たちが後ろにいた荷車や馬車たちに手で合図。
「よーし、行けーっ!」
荷車や馬車たちが一斉に動き出しました。が、数台通り過ぎたところでそれが途切れました。兵たちはそれを見て、不思議に思います。
「な、なんだ?」
見ると、数人の兵が1台の馬車に群がってます。
「だめだ、この馬車も車軸が折れてる!」
「まったく、お前ら、荷物を載せ過ぎだろって! 少しは他人の迷惑を考えろよ!」
陽がかなり傾いてきました。街道を埋め尽くしている荷車や馬車の大渋滞はほとんど動いてません。
「まあ、今はあると仮定した方がよいじゃろう。あれだけのブツを空に飛ばす技術があるんじゃ。いったい何を積んでることやら?・・・
やはり今夜、闇に乗じて姫を王宮の外に逃がすことにしよう!」
全員一斉に応えます。
「御意!」
コマンダーはまだ疑問があるようです。
「しかし、無事に脱出させることができるんですか、姫を、この王宮から? 闇に乗じて脱出させるにしても、この王宮の周りにはいろんな人がいますよ」
侍従長は再び応えます。
「この国の王室は国民から愛されておる。一般市民は見逃してくれるじゃろう」
侍従長はここで視線をあっちの方に向け、
「しかしじゃ、それでも王室によからぬ感情を抱いてるやつがいるな・・・ 特にウルズ王国とスクルド王国の出身者は何をしてくることやら・・・」
将軍。
「もっと怖いのが、グラニ帝国の間者じゃ。やつら、かなりの数の間者をイザヴェル忍び込ませてるはずじゃ。隙あらば姫の命を狙ってくるじゃろ」
コマンダーは考え込みます。
「う~ん・・・」
と、何かひらめいたようです。
「そうだ!」
コマンダーは侍従長と将軍を見て、
「国境警備隊を呼びましょう!」
国境警備隊とは元々山賊だった連中。この国の軍隊に平らげられ、現場処刑されるはずでしたが、先代の王に国境警備隊になれという条件で赦免されてました。国旗用警備隊とは名ばかりの愚連隊です。
ちなみに、このヒャッハーなコマンダーは、この愚連隊の棟梁格です。
侍従長と将軍はそんな愚連隊を王宮に招き入れると聞いて芳しくない顔をしますが、コマンダー自身はいいアイデアが浮かんだと思ったらしく、ほくそ笑んでます。
「トランシーバーを使って呼んできますよ!」
と言って、ドアを開け、部屋を出て行きました。侍従長と将軍は顔を見合わせました。お互い肩をすぼめ、渋い顔をしてます。
イザヴェル市郊外の街道。たくさんの荷車や馬車が列をなしてます。大渋滞。怒号が飛び交ってます。
「早く行けよ!」
「何やってんだよ! どけよ!」
大渋滞の先頭、道幅いっぱいの大きな荷車がスタックしていて、多くの兵がその荷車を押して道端に寄せようとしてます。
「せーの!」
しかし、なかなか動きません。どうやら車輪の1つが壊れてるようです。明らかに過積載です。
道端には水路があります。このまま押し続けると、荷車は水路に落ちてしまいます。この荷車の所有者らしき中年の男性と女性が、兵たちに訴えてます。
「ああ、やめてくれ。この荷車には我が家の全財産が積んであるんじゃ・・・」
「私たちはこれがないと生きていけないんです!」
さらに小さな子どもたちが2人、泣きわめいてます。
兵の1人が荷車を押しながら、
「悪いが、ここで立ち往生されてると、後ろのみんなの迷惑になるんだ。緊急避難だ、許せ!」
バシャーン! 荷車が水路に落ちました。中年の男性と女性ははそれを見て崩れ落ちました。
「ああ・・・」
「終わった・・・」
兵たちが後ろにいた荷車や馬車たちに手で合図。
「よーし、行けーっ!」
荷車や馬車たちが一斉に動き出しました。が、数台通り過ぎたところでそれが途切れました。兵たちはそれを見て、不思議に思います。
「な、なんだ?」
見ると、数人の兵が1台の馬車に群がってます。
「だめだ、この馬車も車軸が折れてる!」
「まったく、お前ら、荷物を載せ過ぎだろって! 少しは他人の迷惑を考えろよ!」
陽がかなり傾いてきました。街道を埋め尽くしている荷車や馬車の大渋滞はほとんど動いてません。
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