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箒に乗って空を飛んでる姫と準一。準一が姫に質問してます。
「ただの一兵卒だろ、戦死した人? なんで姫・・・ 女王自ら弔問に廻ってるんだよ?」
「私、初めて見たんだ。自分の軍の兵隊さんが殺されるところを・・・
あは、敵の兵隊が殺されていくところは喜んで見てるクセに、自分の国の兵隊が殺されるところはショックだった。
私が出しゃばって戦場なんかに行かなきゃ、あの人たちは死なずにすんだのに・・・ 親族に直接お詫びしないと、自分の気が休まらないんだ」
「優しいな。君が国王でこの国の人たちはとても幸せだよ」
「あは、そう?」
準一は地図を見て、
「さー あと1人だ!」
「うん!」
小さな女の子とその母親らしき人物が道を歩いてます。女の子の眼がふと空を飛ぶ姫と準一を捉え、2人を指差しました。
「お母さん、あれ、な~に?」
「あ、あれは女王様?・・・」
「え、女王様?」
「この国の一番偉い人よ。もしあの人がいなかったら、今頃ここはグラニ帝国に占領されてたかもしれないわね・・・」
「もし占領されてたら?」
「私たちはきっと奴隷になってたわよ」
「奴隷?・・・」
「私たちの国では奴隷は法律で禁止になってるけど、世界のほとんどの国では、弱い立場の人はみんな奴隷にされてるの」
「奴隷にされたら、どうなるの?」
「それはとても恐ろしいことよ。私たちの自由は奪われ、毎日牛や馬のようにこき使われるの。もし逃げ出そうとしたら・・・」
「逃げ出そうとしたら?」
「みんなが見てる前で命を取られるの」
「へ~・・・」
ここは海峡の向こう側にある港の広場。無数の首吊り死体が展示してあるように並んでます。その死体を前にたくさんの女性や子どもたちが泣いてます。
実はこれは、ノルン王国侵攻戦争で負け、逃げ帰ってきた漕ぎ手=奴隷なのです。
この戦争でグラニ帝国軍の兵は1人も帰ってきませんでした。なのに奴隷たちは百人以上も帰ってきたのです。
これにグラニ帝国軍最高指揮官は激怒。逃げ帰ってきた奴隷を見つけては捕らえ、次々とここに連行してきて、生きたまま吊るしてるのです。奴隷化した市民への完全な見せしめです。
ここは大きな空間。何か宮殿の中の謁見の間のようです。奥中央には玉座があります。そこに20代の男性が座ってます。肘掛けに片肘をついてます。
この男の名はナルヴィ。グラニ帝国軍西部方面最高指揮官にして、グラニ帝国皇帝の次男。
ナルヴィの眼の前に1人の男が跪いてます。正装した兵です。
「逃走した奴隷は発見次第港の広場に吊るしてます。しかし、何分相手には土地勘がありまして、いろんなところに上陸しては、身を隠してるようで・・・」
だらだらとしゃべる兵にナルヴィはしびれを切らしたようです。思わず怒鳴りました。
「もういい! ともかく逃げてきた奴隷は全員ひっ捕らえて吊るせ!」
「わ、わかりました・・・」
兵はすごすごと引き下がりました。ナルヴィはここで悔しそうな表情を見せました。
「くっ・・・」
この大陸はかなり広大。グラニ帝国はそのど真ん中に建国され、ものすごい勢いで西へ東へ拡張されていきました。しかし、初代皇帝は病気で倒れてしまい、領土拡大は2人の息子に託されました。
東に侵攻した長男の軍は、かなり苦戦してました。一方西に進んだ次男のナルヴィの軍は破竹の勢いで領土を広げていきました。ここまで無敗。今日初めて敗北を味わったのです。
なんとしても欲しい皇帝の地位。通常なら長男がその地位を継ぐのですが、より多くの領土をより早く占領できれば、次期皇帝の地位は次男ナルヴィのものになるかもしれません。
「ただの一兵卒だろ、戦死した人? なんで姫・・・ 女王自ら弔問に廻ってるんだよ?」
「私、初めて見たんだ。自分の軍の兵隊さんが殺されるところを・・・
あは、敵の兵隊が殺されていくところは喜んで見てるクセに、自分の国の兵隊が殺されるところはショックだった。
私が出しゃばって戦場なんかに行かなきゃ、あの人たちは死なずにすんだのに・・・ 親族に直接お詫びしないと、自分の気が休まらないんだ」
「優しいな。君が国王でこの国の人たちはとても幸せだよ」
「あは、そう?」
準一は地図を見て、
「さー あと1人だ!」
「うん!」
小さな女の子とその母親らしき人物が道を歩いてます。女の子の眼がふと空を飛ぶ姫と準一を捉え、2人を指差しました。
「お母さん、あれ、な~に?」
「あ、あれは女王様?・・・」
「え、女王様?」
「この国の一番偉い人よ。もしあの人がいなかったら、今頃ここはグラニ帝国に占領されてたかもしれないわね・・・」
「もし占領されてたら?」
「私たちはきっと奴隷になってたわよ」
「奴隷?・・・」
「私たちの国では奴隷は法律で禁止になってるけど、世界のほとんどの国では、弱い立場の人はみんな奴隷にされてるの」
「奴隷にされたら、どうなるの?」
「それはとても恐ろしいことよ。私たちの自由は奪われ、毎日牛や馬のようにこき使われるの。もし逃げ出そうとしたら・・・」
「逃げ出そうとしたら?」
「みんなが見てる前で命を取られるの」
「へ~・・・」
ここは海峡の向こう側にある港の広場。無数の首吊り死体が展示してあるように並んでます。その死体を前にたくさんの女性や子どもたちが泣いてます。
実はこれは、ノルン王国侵攻戦争で負け、逃げ帰ってきた漕ぎ手=奴隷なのです。
この戦争でグラニ帝国軍の兵は1人も帰ってきませんでした。なのに奴隷たちは百人以上も帰ってきたのです。
これにグラニ帝国軍最高指揮官は激怒。逃げ帰ってきた奴隷を見つけては捕らえ、次々とここに連行してきて、生きたまま吊るしてるのです。奴隷化した市民への完全な見せしめです。
ここは大きな空間。何か宮殿の中の謁見の間のようです。奥中央には玉座があります。そこに20代の男性が座ってます。肘掛けに片肘をついてます。
この男の名はナルヴィ。グラニ帝国軍西部方面最高指揮官にして、グラニ帝国皇帝の次男。
ナルヴィの眼の前に1人の男が跪いてます。正装した兵です。
「逃走した奴隷は発見次第港の広場に吊るしてます。しかし、何分相手には土地勘がありまして、いろんなところに上陸しては、身を隠してるようで・・・」
だらだらとしゃべる兵にナルヴィはしびれを切らしたようです。思わず怒鳴りました。
「もういい! ともかく逃げてきた奴隷は全員ひっ捕らえて吊るせ!」
「わ、わかりました・・・」
兵はすごすごと引き下がりました。ナルヴィはここで悔しそうな表情を見せました。
「くっ・・・」
この大陸はかなり広大。グラニ帝国はそのど真ん中に建国され、ものすごい勢いで西へ東へ拡張されていきました。しかし、初代皇帝は病気で倒れてしまい、領土拡大は2人の息子に託されました。
東に侵攻した長男の軍は、かなり苦戦してました。一方西に進んだ次男のナルヴィの軍は破竹の勢いで領土を広げていきました。ここまで無敗。今日初めて敗北を味わったのです。
なんとしても欲しい皇帝の地位。通常なら長男がその地位を継ぐのですが、より多くの領土をより早く占領できれば、次期皇帝の地位は次男ナルヴィのものになるかもしれません。
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