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侍従長は地図上のノルン連合王国の中央の国境線を指さしました。
「この国境線沿いに山脈があります。かなり高い山々が並んでいて、馬で乗り越えることは到底ムリ。徒歩でもなかなか乗り越えることはできません。
海を廻るという手もありますが、海上では王の地震魔法は威力を発揮することはできませんでした。結局7代前の王は、この2つの国の併合を諦めました。
しかし、5代前の王は違ってました。7代前の王は自身がその地に行かないと地震を起こすことはできませんでしたが、5代前の王は遠隔地からでも地震を起こすことが可能だったのです。
ウルズ王国とスクルド王国では毎日地震が発生し、人口は半分以下になってしまいました。さらにヴェルザンディ公国にも地震が発生し、これら3つの国は我が国に使者を送り、恭順の意を示しました。
こうして我が国は、ウルズ王国とスクルド王国、それにヴェルザンディ公国を手に入れることができたのです。
けど、先ほども話した通り、これら3つの国を常時征服しておくことは地形的に絶対不可でした。そこで半年に1回3つの国が貢物を我が国に謙譲することで、恭順の意を示してると解釈することにしたのです」
準一は昔習った歴史用語を思い出しました。
「朝貢ていうやつかな?」
侍従長は大陸の方を指差し、
「5代前の王はさらに大陸に進出し、その意志は4代前の王にも受け継がれ、ノルン連合王国は広大な領地を獲得しました。
しかし、困ったことに、続く3代前の王と2代前の王は女王でした」
「え? なんで女王だと困ったことになるんですか?」
「実はこの2人、地震魔法が使えなかったのです」
「ええ~?・・・ 他に地震魔法を使える人はいなかったんですか?」
「先ほども話した通り、この国で魔法が使える者は、この国の王のみなのです。
けど、世間的には女王もふつーに地震魔法が使えると思われてました。ノルン王国としても、謀反を起こした地域は直ちに女王の怒りに触れるだろうと、何度も何度も喧伝したようです。
しかし、2代前の女王の時、ついに地震魔法が使えないことが露呈してしまい、ここぞとばかりにウルズ王国とスクルド王国は船団を組んで我が国に同時に攻め入ってきました。
我が国が絶体絶命になったとき、新たな王が就任しました」
「それが先代の王様?」
「左様。先代12歳の時でした」
「あは、今の女王様と同じ年齢だ」
「先代の王は地震魔法が使えました。それで南海岸から攻めてきたウルズ王国を撃破。これを見たスクルド王国はすぐに撤退しました。
しかし、先代の王の怒りはこれで収まるはずがありませんでした。両国を徹底的に破壊すると宣言したのです。
けど、家来たちは反対しました。先代の王は自らの足で踏み込んだ土地でないと地震を起こすことができなかったからです。自らの命を顧みず地震を起こして万が一があっては一大事と考えたようですな、当時の家来たちは。
また、両国市民からの陳情もあり、税金を大幅に上げ、両国の王を処刑することで、王の怒りを鎮めることになりました。
我が国に連れて来られた両国の王は、この先の広場であまりにも惨たらしく処刑されました。私はそのとき学校に通ってた少年でしたが、そのときの光景は今でも鮮明に覚えてます」
「どんな処刑?」
「私にそれを言えと?」
「あ、いや・・・」
準一はかなり凄惨な処刑をしたんだろうなあと思い、苦笑しました。侍従長の話が続きます。
「それから49年間、ノルン連合王国は先代の王によって静かに治められてました」
「この国境線沿いに山脈があります。かなり高い山々が並んでいて、馬で乗り越えることは到底ムリ。徒歩でもなかなか乗り越えることはできません。
海を廻るという手もありますが、海上では王の地震魔法は威力を発揮することはできませんでした。結局7代前の王は、この2つの国の併合を諦めました。
しかし、5代前の王は違ってました。7代前の王は自身がその地に行かないと地震を起こすことはできませんでしたが、5代前の王は遠隔地からでも地震を起こすことが可能だったのです。
ウルズ王国とスクルド王国では毎日地震が発生し、人口は半分以下になってしまいました。さらにヴェルザンディ公国にも地震が発生し、これら3つの国は我が国に使者を送り、恭順の意を示しました。
こうして我が国は、ウルズ王国とスクルド王国、それにヴェルザンディ公国を手に入れることができたのです。
けど、先ほども話した通り、これら3つの国を常時征服しておくことは地形的に絶対不可でした。そこで半年に1回3つの国が貢物を我が国に謙譲することで、恭順の意を示してると解釈することにしたのです」
準一は昔習った歴史用語を思い出しました。
「朝貢ていうやつかな?」
侍従長は大陸の方を指差し、
「5代前の王はさらに大陸に進出し、その意志は4代前の王にも受け継がれ、ノルン連合王国は広大な領地を獲得しました。
しかし、困ったことに、続く3代前の王と2代前の王は女王でした」
「え? なんで女王だと困ったことになるんですか?」
「実はこの2人、地震魔法が使えなかったのです」
「ええ~?・・・ 他に地震魔法を使える人はいなかったんですか?」
「先ほども話した通り、この国で魔法が使える者は、この国の王のみなのです。
けど、世間的には女王もふつーに地震魔法が使えると思われてました。ノルン王国としても、謀反を起こした地域は直ちに女王の怒りに触れるだろうと、何度も何度も喧伝したようです。
しかし、2代前の女王の時、ついに地震魔法が使えないことが露呈してしまい、ここぞとばかりにウルズ王国とスクルド王国は船団を組んで我が国に同時に攻め入ってきました。
我が国が絶体絶命になったとき、新たな王が就任しました」
「それが先代の王様?」
「左様。先代12歳の時でした」
「あは、今の女王様と同じ年齢だ」
「先代の王は地震魔法が使えました。それで南海岸から攻めてきたウルズ王国を撃破。これを見たスクルド王国はすぐに撤退しました。
しかし、先代の王の怒りはこれで収まるはずがありませんでした。両国を徹底的に破壊すると宣言したのです。
けど、家来たちは反対しました。先代の王は自らの足で踏み込んだ土地でないと地震を起こすことができなかったからです。自らの命を顧みず地震を起こして万が一があっては一大事と考えたようですな、当時の家来たちは。
また、両国市民からの陳情もあり、税金を大幅に上げ、両国の王を処刑することで、王の怒りを鎮めることになりました。
我が国に連れて来られた両国の王は、この先の広場であまりにも惨たらしく処刑されました。私はそのとき学校に通ってた少年でしたが、そのときの光景は今でも鮮明に覚えてます」
「どんな処刑?」
「私にそれを言えと?」
「あ、いや・・・」
準一はかなり凄惨な処刑をしたんだろうなあと思い、苦笑しました。侍従長の話が続きます。
「それから49年間、ノルン連合王国は先代の王によって静かに治められてました」
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