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 部屋の中央には大きなテーブルがあり、いくつかのイスがあります。侍従長はイスの1つを見て、
「ここにお座りください」
 準一は言われるままイスに座りました。
 この部屋には窓がないようです。ちなみに、今外は夜です。
 壁の一面には巻物が床と平行に取り付けてあります。かなり幅がある巻物です。侍従長がその巻物を結ぶ紐をほどき、ゆっくりゆっくりと下ろし始めました。巻物を最後まで下ろすと、それは地図でした。
 地図の中央やや左側に島が描かれてます。横に長い長方形な島です。
 島の右側には大きな陸地があります。陸地全体を描き切れないほどの巨大な陸地。どうやら大陸のようです。
 大陸の少し出っ張ったところと島との間の海はかなり狭くなってます。所謂いわゆる海峡です。
 侍従長は地図の島の一番右端を指差しました。海峡に面した箇所です。
「ここが今私たちがいるノルン王国の首都、イザヴェルです」
 準一が質問。
「その島全体がノルン王国?」
「左様」
「にしては、国境線らしきものがあるけど」
 その通り。島を真っ二つに分ける国境線らしき鎖線が島の中央に南北に引かれてました。さらにその鎖線の中央から左(西)にも鎖線が引かれていて、その鎖線が終わるあたりにも何か都市を示すような鎖線がありました。
 侍従長はニヤッと笑い、応えます。
「ふふ、鋭い。さすが姫が選んできた男」
 侍従長は左下のエリアを指差し、
「ここがウルズ王国」
 次にその上のエリアを指差し、
「ここがスクルド王国」
 最後に左端の都市国家のような場所を指差し、
「そしてここがヴェルザンディ公国。この3つの国とノルン王国をまとめてノルン連合王国と言います」
 侍従長は今度は海峡の向こう側の広大な陸地(大陸)を指差し、
「実は少し前までこちらもノルン連合王国の領土でした」
「へ~ そんな広大な領土があったんだ」
「左様」
 侍従長はその広大な陸地のさらに外側、地図からはずれた空間を指差し、そのまま指で見えない線を描きました。
「このへんまでがノルン連合王国の領土でした。ノルン連合王国は最大で今の10倍以上の面積を誇ってました。
 しかし、東の方から不吉な噂が流れてきました。大陸のはるか向こうで建国されたグラニ帝国が、ものすごい勢いで西へ西へと領土を広げてると。
 はたして1年と1ケ月前、グラニ帝国の斥候部隊が我が国の領土に侵入し、その部分を奪ってしまう事件が発生しました」
 準一は思いました。
「モンゴル帝国かよ」
「先代の王は早速軍艦に乗り、最前線に向かいました」
 ここで準一の脳に疑問が浮かび、ストレートに言葉しました。
「ん、なんで王様自ら出撃を?」
「魔法です」
「魔法?」
「先ほども話した通り、この国にはたった1人魔法を使える者がいます。この国の王です。先代の王の魔法は地震でした」
 準一は苦笑。
「なんですか、その恐ろしい魔法は?」
 侍従長は地図のヴェルザンディ公国の部分を指差し、
「実はノルン王国は、元々このヴェルザンディ公国同様、港湾都市国家だったのです」
「へ~・・・」
「しかし、今から約200年前、我が国の王に不思議な力が宿りました。地震を起こす魔法が具現したのです」
「へ~ いきなりそんな魔法が?」
「いいえ。それ以前から我が国の王は、魔法を使えることができました。しかし、それまでの魔法はささやかなものでした。天変地異を起こす魔法などなかったのです。
 7代前の王は地震魔法を会得すると、それを武器に周囲の国々を次々と吸収していきました。さらに現在のウルズ王国とスクルド王国にも侵攻を考えました。しかし・・・」
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