リトルクイーンのいけない魔法(Ｒ18＋)

15

　バシーッ！　フィギュアが載ったサイドボードにバールが叩きこまれました。撥ね上がるフィギュアたち。その１つが準一のつま先に転がってきました。それはパトロール魔女ジェニーのフィギュアでした。
　が、そのフィギュアには頭がありません。バールに直撃されてしまったようです。それを見た準一は、ただ茫然とするばかり。
「ああ･･･」
　今朝看病した少女＝姫にそっくりなジェニーのフィギュア。いや、実際はそんなに似てないのですが、準一にとってこのフィギュアは、もっとも大切にしてたフィギュアでした。それを父親が無残にも破壊してしまったのです。
　準一はまるで姫が殺されてしまったような感覚に陥り、怒りが一気に沸き上がりました。
「うぉーっ！」
　そして父親に振り返りました。当の父親はマンガ本やＤＶＤなどが収蔵された本棚をバールで破壊してるところでした。
　準一はその父親に突進します。
「親父おやじーっ！」
　準一は父親の顔面にパンチを入れました。フローリングに倒れる父親。その顔は唖然。む、息子に殴られた？
「くそーっ！」
　父親の血はさらに沸騰しました。
　父親は心にリミッターをかけてました。バールで準一を狂わせてるアイテムをすべて破壊するが、準一自身には絶対手を出さない。
　しかし、この瞬間、そのリミッターは吹っ飛んでました。
　父親は立ち上がると、準一にバールを振り上げ、突進します。
「うぉーっ！」
　バールを振り下げる父親。けど、準一は今度は冷静に見てました。バールをひらりと交わすと、振り返り、父親に突進。
「うおーっ！」
　準一は肩で父親の胸にタックル。そのまま２人の身体は絡まったままドアを通り抜け、廊下に出ました。準一の勢いは止まりません。
　廊下はなくなり階段に。２人の身体は階段を下りることなく、宙を舞いました。
　階段の下からこれを見てた母親は、思わず悲鳴をあげました。
「きゃーっ！」
　バキッ！　この家の階段は下階の最後の３段のみＬ字に曲がってるのですが、その曲がりの部分の壁に父親の後頭部が激突しました。一瞬の静寂。
　上になってる準一は父親の眼を見ました。父親の眼は開きっ放し。瞳孔も開いてます。焦る準一。
「お、親父おやじ･･･？」
　父親の後頭部から血がじわ～と漏れてきました。それを見て数歩下がる母親。
「あ、あなた･･･」
　お、父親おやじが死んだ？　オレが殺した？･･･ 準一はそう覚さとると、
「うわーっ！」
　と大声を出し、そのまま玄関から外に飛び出して行きました。母親はその場にへたれ込んでしまいました。

　夕暮れ。明石家の家の前にパトカーが何台か駐まってます。規制線が張ってあって、その外側に何人かやじ馬の姿がありました。
　付近では２人の主婦がひそひそ話をしていました。そこに別の主婦が割り込みました。今割り込んだ主婦は、あたりが騒然としてる理由がわからないようです。２人に質問しました。
「お、奥さん、何があったの？」
　それに応える主婦。
「あら、奥さん、明石さんが殺されたのよ」
「ええ!?」
　もう１人のうわさ話をしてた主婦。
「殺したのは引き籠ってた息子なんですって」
「ええ、あの準一君が!?」
「いつかは何かやるんじゃないかと思ってたけど･･･」
「怖いわねぇ･･･」

　明石家内部、階段。明石父が倒れていた場所は白い線で囲まれており、その付近を写真撮影してる鑑定人が見えます。
　一方ここは居間。明石母がソファに座ってます。眼はうつろ。生きた屍しかばねって感じ。それをちょっと離れた位置から見てる２人の刑事。
「こりゃ、しばらくは、事情聴取はムリですね」
「ああ･･･」