リトルクイーンのいけない魔法(Ｒ18＋)

2

　一方、ヘリコプターの中で狙撃銃を構えてる乗員も、防御魔法スヴェルクーゲルの光の球体に気づきました。
「ん、なんだ、あの光？　まあ、いい！」
　再び少女の頭部を捉える十字マークレティクル。が、乗員は何か思うところがあるようです。スコープから眼を離しました。
「ち、やっぱ頭は狙いたくねぇなあ･･･」
　スコープは少し動き、少女の左腕を捉えました。
　箒に乗った少女の身体が、自衛隊基地の敷地から出ようとします。ヘリコプターを操縦してる乗員が焦ります。
「おい、あいつ、逃げちまうぞ！　撃つんなら早く撃てよ！」
　狙撃銃を構えてる乗員が棘のある声で応えます。
「わかってんよ！」
　狙撃銃の銃爪ひきがねにかかる指が動きました。
　バキューン！　発射された弾丸は、光の球体の後方から前方へ突き抜けていきました。光の球体はあっという間に微粒子サイズに砕け散ってしまいました。少女は唖然。
「防御魔法スヴェルクーゲルが破られた？･･･」
　と、少女は左二の腕に何か違和感があることに気づきました。
「へ？」
　下を見ると、腕が１本落ちていくところ。
「何、あれ？」
　次の瞬間、少女は左腕にとんでもない痛みを感じ、大きな悲鳴をあげました。
「ぐぎゃーっ！」
　なんと少女の左腕が無くなってるのです。破れた左袖から鮮血がしたたり落ちます。防御魔法スヴェルクーゲルの光は、最新の狙撃銃の前ではなんの役にも立たなかったのです。
　少女は姿勢を保つことができなくなり、箒ごと錐もみ状態で落ちて行きました。消え消えの意識の中、少女は必死に思考します。
「くーっ、処女のまま死にたくないよーっ！
　自己治癒魔法ハイルングクーゲル！」
　少女がそう宣言すると、少女の身体はまたもや淡いボール状の光に包まれました。先ほどとは違う色の光です。すると破れた袖の隙間から見える少女の左腕の切断面は、あっという間に皮膚に覆われました。
　が、次の危機が少女に迫ってました。巨大な街道のアスファルトが眼の前に迫ってきたのです。基地のフェンスと平行に走る片側３車線の幹線道路です。少女の顔が引きつりました。
「うわーっ！」
　ヘリコプターの２人の乗員も、思わず声をあげました。
「やばい！」
「あそこに落ちて車両に触れたら、大事故になるぞ！」
　少女は右手で箒の先端を掴みました。
「くっ、なんとか！･･･」
　そして思いっきり箒の先を引き上げました。
「上がれーっ！」
　するとアスファルトに激突する寸前、箒は90度角度を変え、アスファルトと平行に飛び始めました。
　ヘリコプターの２人の乗員はそれを見て安堵。
「ふーっ、事故にならずに済んだ･･･」
「しかし、よく曲がることができたなあ、あんな角度で？･･･」
　クルマの間を縫うように飛ぶ少女。そのスピードは驚くほど速く、クルマは次々と抜かれて行きます。これを見て道行くクルマのドライバーたちが驚いてます。
「うわっ！」
「な、なんなんだ、あれは!?」
　ちなみに、アスファルトと箒の間は、わずか数十cmしかありません。超低空飛行です。
　少女は少しだけ上空に眼を向け、真上を飛ぶヘリコプターを見ました。
「振り切らないと、あいつを･･･」
　と、少女の進行方向に交差点が。信号は赤。たくさんのクルマが横切ってます。けど、少女の注意はヘリコプターに集中していて、なかなかそれに気づきません。ようやく気付いたときは、交差点はすぐ眼の前。少女はびっくり。
「ええーっ!?」
　ちょうど今右側から巨大なトレーラートラックが現れました。このままだと少女の身体はこのトラックに激突してしまいます。
「くっ！･･･」