2 / 62
第一章:異世界漂流
プロローグ2:リタ
しおりを挟む
誰? 人間?
こんなところに? 私の結界を破って?
まさか……!
私の名前はリタ。
リタ・アーヴル・スカンディナ
種族はエルフ族。今年で121歳になる。
ここは中央部からかなり離れた場所にある森だ。一般には《辺境》と呼ばれる部類に入る。
ここから一番近い砦までだって、森の中を二日は歩かなければならない。
私は訳あって、ここに一人で住んでいる。
あー、でも、なにか悪さしてコミュニティを追い出されたとか、禁断の得体の知れない魔法の開発とかするためなんて危ない理由じゃないから安心して。
まぁ、一身上の都合ってやつよ。
よくあるでしょ?
そういった個人的に混み合った理由ってのが、さ。
今日は風が優しい。
ベルのようなリーンリーンと澄んだ音が聞こえる。
家の後ろの巨木〈マザーツリー〉の枝葉が奏でる特徴ある音が歌のように辺りに響いている。
なにか良いことありそうな予感がして、私は今日の昼食を外で食べることに決めた。
メニューは手軽なサンドイッチ。
茹でた卵にポテトのサラダ、薄くスライスしたハムにチーズ。
パンの中央にナイフで切れ目を入れ、バターを塗って、あとはそこに挟んでいくだけ。
お腹が空いているので彩りは二の次。
山葡萄の蔓で編んだバスケットに出来たてのそれとミルクを詰め込むと、お気に入りの場所へと急いだ。
私のお気に入りの場所、そこはこの家の後ろにある巨木〈マザーツリー〉の下に置いた長椅子だ。
3人も座れば窮屈になりそうな古い木製の椅子。私はそこからの森の眺めが好きだった。
ここは周りに比べて少し高い丘のようになっている。
〈マザーツリー〉ほどではないけれど、それでも大木と呼べるクラスのものが至るところに根を下ろしている。
魔物だって彷徨いている。
だから魔物除けの結界は二重に張り巡らしてある。
なのに、なんなの、こいつは!
どっから、い~や、どうやって入ってきたのよ。
ここは私の場所なんだってば。
見たところ人間族よね。
黒い髪に丸い耳、エルフほどではないけど白い肌。
着ているものも品が良い。
でも、こんな服、見たことないわ。
私はそっと手を伸ばし触れてみる。
興味を惹かれるものには、なにより優先して好奇心が勝ってしまう。
よく師匠に叱られたことを思い出す。
紺色で甲虫のような光沢があって、なにより柔らかくスベスベとして手触りがいい。極上品だ。
どこかの貴族か豪商の御曹司?
いやいや盗品かもしれないじゃないか。
しかし、なんだろ、これ。
なんでこいつ、こんなにいい匂いがするの。
まさか、フェロモン。罠?
危険をかえりみず、私はつい、そいつの顔に自分の顔を近づけた。
花とも違う甘い香りに、私は一瞬、虜になる。
その時だ、そいつの両手が私の身体、腰に回された。
咄嗟のことに反応できず、私はグイッと抱き寄せられる。
密着する身体、近づく顔。
手に持っていたバスケットが落ちる。
そして奪われた、唇を。
刹那のことだったかもしれない。
それでも私には永遠に思えた。
不思議と嫌ではなかった。
でも、でもでもでもでもでもぉお~!
解放されたと同時にそいつの顔からパン! といい感じの音が響く。
我ながら会心の一振りだ。
剣を持ってなかったことを幸運に思うことね。
そうじゃなかったら、あんた、斬り刻まれて魔物の餌よ!!
こんなところに? 私の結界を破って?
まさか……!
私の名前はリタ。
リタ・アーヴル・スカンディナ
種族はエルフ族。今年で121歳になる。
ここは中央部からかなり離れた場所にある森だ。一般には《辺境》と呼ばれる部類に入る。
ここから一番近い砦までだって、森の中を二日は歩かなければならない。
私は訳あって、ここに一人で住んでいる。
あー、でも、なにか悪さしてコミュニティを追い出されたとか、禁断の得体の知れない魔法の開発とかするためなんて危ない理由じゃないから安心して。
まぁ、一身上の都合ってやつよ。
よくあるでしょ?
そういった個人的に混み合った理由ってのが、さ。
今日は風が優しい。
ベルのようなリーンリーンと澄んだ音が聞こえる。
家の後ろの巨木〈マザーツリー〉の枝葉が奏でる特徴ある音が歌のように辺りに響いている。
なにか良いことありそうな予感がして、私は今日の昼食を外で食べることに決めた。
メニューは手軽なサンドイッチ。
茹でた卵にポテトのサラダ、薄くスライスしたハムにチーズ。
パンの中央にナイフで切れ目を入れ、バターを塗って、あとはそこに挟んでいくだけ。
お腹が空いているので彩りは二の次。
山葡萄の蔓で編んだバスケットに出来たてのそれとミルクを詰め込むと、お気に入りの場所へと急いだ。
私のお気に入りの場所、そこはこの家の後ろにある巨木〈マザーツリー〉の下に置いた長椅子だ。
3人も座れば窮屈になりそうな古い木製の椅子。私はそこからの森の眺めが好きだった。
ここは周りに比べて少し高い丘のようになっている。
〈マザーツリー〉ほどではないけれど、それでも大木と呼べるクラスのものが至るところに根を下ろしている。
魔物だって彷徨いている。
だから魔物除けの結界は二重に張り巡らしてある。
なのに、なんなの、こいつは!
どっから、い~や、どうやって入ってきたのよ。
ここは私の場所なんだってば。
見たところ人間族よね。
黒い髪に丸い耳、エルフほどではないけど白い肌。
着ているものも品が良い。
でも、こんな服、見たことないわ。
私はそっと手を伸ばし触れてみる。
興味を惹かれるものには、なにより優先して好奇心が勝ってしまう。
よく師匠に叱られたことを思い出す。
紺色で甲虫のような光沢があって、なにより柔らかくスベスベとして手触りがいい。極上品だ。
どこかの貴族か豪商の御曹司?
いやいや盗品かもしれないじゃないか。
しかし、なんだろ、これ。
なんでこいつ、こんなにいい匂いがするの。
まさか、フェロモン。罠?
危険をかえりみず、私はつい、そいつの顔に自分の顔を近づけた。
花とも違う甘い香りに、私は一瞬、虜になる。
その時だ、そいつの両手が私の身体、腰に回された。
咄嗟のことに反応できず、私はグイッと抱き寄せられる。
密着する身体、近づく顔。
手に持っていたバスケットが落ちる。
そして奪われた、唇を。
刹那のことだったかもしれない。
それでも私には永遠に思えた。
不思議と嫌ではなかった。
でも、でもでもでもでもでもぉお~!
解放されたと同時にそいつの顔からパン! といい感じの音が響く。
我ながら会心の一振りだ。
剣を持ってなかったことを幸運に思うことね。
そうじゃなかったら、あんた、斬り刻まれて魔物の餌よ!!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
12
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる