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第8話 I'm your……
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そのまま、スーパーへ買い物に行った。3人分だけど、そこまで多く無い。僕からしたら足りないかもしれないけど。
両手に買い物袋を提げて。3人並んで。
「縄跳びか。確かに小学生以来かなあ」
「でしょ? そういえば優愛、運動は他の子と比べて少ないかなあって思って」
「やりたい!」
夕陽を背に。家に帰る。
凄く、『家族』って感じがした。なんだろう。一瞬ドキッとした。
「あとそろそろ読み書きとかね。来年は入学だよ」
「そっか。優愛小学生か」
「そろそろ準備しようかなって。まだ7月だけどさ。あっという間だよ多分」
僕たちは家族じゃない。恐らく、一番近い言葉だと『友達』。でも、友達という表現は、僕たちからしたら違和感がある。
「店行ったら閉まっててよ」
「?」
ふたりの住むアパートまでやってきた。実は買い物の途中からもうお腹が空いていた。
とか、思ってる時。
「え……」
カンカンカン、とアパートの階段を降りる音がした。強い音だった。僕や真愛さんが通ってもそんな音は鳴らない。
「えっ? ちょ」
「………………」
階段を降りてからも。ずんずんと、まるで威圧するように。
こっちに。
「待って。えっ」
黒いタンクトップ。下はジャージ。無精髭から上は。
怖くて見れなかった。
「かえれ」
「………………っ!」
筋肉質だ。それに背も高い。目を見れなかった。
1歩、2歩、後ずさって。
回れ右して。
背を向けてしまった。
「ちょ、ちょっと、こーちゃん」
「休みなら言えよ真愛。久々に飯行こうぜ。なあ」
「ま、待って。ちょ、重明くん。えっと、ご飯——」
「行くぞ」
「ちょっ」
怖い。たった、3文字だけ。
かえれと言われた。心臓が、バクンバクン言ってる。
終わった。殺されなかっただけ、マシなんじゃないだろうか。
あんなに、怖い人だったんだ
——
「あああああああっ!」
「!」
ずん、と。
お腹に鉄塊が落とされたように、響いた。
僕は立ち止まった。
「ゆ、優愛っ?」
「ああああああああん!」
「うるせえって。おい泣き止ませろ」
「え。えっ。ちょ。優愛っ。ほら大丈夫。ね」
「あああああ!」
初めて聞いた。
僕は。
いや。
僕に。
——
「おいうるせえっ! 俺嫌いなんだよ!」
「ま。待ってって。怖がってるから。優愛っ。大丈夫大丈夫」
「ああああああ——」
「優愛」
「!」
いつ、振り返ったのか。どうやって歩いたのか。覚えてない。
この子は。公園で転けても泣かない。
真愛さんが遅くなってお腹が空いても泣かない。
偉い子だ。賢い子だ。
「どうした? どっか痛いか」
僕がぽん、と頭を撫でた途端に。
「…………帰っちゃ、や」
ぴたりと泣き止んだ。
「……優愛」
「おにいちゃんと、ばんごはんなの。こーちゃんが帰って」
「…………」
見た。今度こそ。怖い。ヤンキーだ。めっちゃ睨んでくる。それは当然なんだけど。
「俺ァ彼氏だ」
「!」
胸ぐらを。掴まれた。
「ぐっ」
「おめーはよぉ!」
痛い。強い。よく、胸ぐらをを掴むなんてことは、漫画とかではあるけど。本当に、身動きが取れない。掴むだけじゃなくて、持ち上げようとするんだ。力が強すぎて、顎が痛いし、喋れない。爪先で立って背伸びみたいにするけど、そんなんじゃ抵抗できない。
「真愛の【何】なんだよコラァ!」
「待ってこーちゃん! やめて!」
そのまま向かいの家の石垣まで押されて。
「!!!」
ゴン、と。
思いっきり、コンクリートの壁に、後頭部を打ち付けられた。
「きゃぁぁあっ!」
「……あああああああ!」
悲鳴と、泣き声がまた聴こえて。僕は意識を失った。
——
——
僕は『家族』に、詳しくない。よく読むネット小説には、血縁はあまり関係無いとか、結構書かれているのを見るけど。
家族になる、というのは、結婚や養子縁組以外にどんなものがあるのか知らない。多分僕と真愛さんは、どうやっても姉弟にはなれないんだろうなと、漠然と思う。
ああ、当然、恋愛関係になることは無いよ。僕は1円も稼げないし、そもそもなんかの法律? 条例? で、16歳の僕は青少年と扱われるとどこかで聞いた。別にそれが間違ってても問題ない。そんな気は、お互い無いのだから。
それでも、真愛さんの彼氏である『こーちゃん』からしたら、僕の存在は許せなくて当然だとも思う。結局は、弟じゃなくて他人だから。
僕は、真愛さんや優愛の、【何】なんだろうか。
彼女達は、僕の【何】なんだろうか。
「…………っつ」
「重明くんっ」
「!」
視界がぼやけたまま、僕は目覚めた。すぐに、真愛さんの声がして、そっちを向こうとして。
頭が痛くて、起き上がれなかった。
「大丈夫? わたしのこと分かる? あのね、ごめんね。本当に」
「…………真愛さん」
「……うん」
お腹の辺りに、熱くて重い感覚があった。なんとか視線を下にやって見ると、可愛らしい寝顔があった。
「優愛」
「あっ。ごめんね。引っ付いて離れなくて。……優愛ったら」
「…………えっと」
病室で、しかも個室だった。あの後どうなったのかは、なんとなく分かるけど。
「取り敢えず命に別状は無いって」
「…………うん」
まだ、意識がはっきりしてない。頭が痛い。
「あっ。先生、読んで来ないと。ちょっと待っててね」
身体が動かない。
白い天井を見て、また優愛を見た。僕に抱き付くように、眠っている。
「…………」
可愛いこの子は、僕の【何】なんだろうか。
両手に買い物袋を提げて。3人並んで。
「縄跳びか。確かに小学生以来かなあ」
「でしょ? そういえば優愛、運動は他の子と比べて少ないかなあって思って」
「やりたい!」
夕陽を背に。家に帰る。
凄く、『家族』って感じがした。なんだろう。一瞬ドキッとした。
「あとそろそろ読み書きとかね。来年は入学だよ」
「そっか。優愛小学生か」
「そろそろ準備しようかなって。まだ7月だけどさ。あっという間だよ多分」
僕たちは家族じゃない。恐らく、一番近い言葉だと『友達』。でも、友達という表現は、僕たちからしたら違和感がある。
「店行ったら閉まっててよ」
「?」
ふたりの住むアパートまでやってきた。実は買い物の途中からもうお腹が空いていた。
とか、思ってる時。
「え……」
カンカンカン、とアパートの階段を降りる音がした。強い音だった。僕や真愛さんが通ってもそんな音は鳴らない。
「えっ? ちょ」
「………………」
階段を降りてからも。ずんずんと、まるで威圧するように。
こっちに。
「待って。えっ」
黒いタンクトップ。下はジャージ。無精髭から上は。
怖くて見れなかった。
「かえれ」
「………………っ!」
筋肉質だ。それに背も高い。目を見れなかった。
1歩、2歩、後ずさって。
回れ右して。
背を向けてしまった。
「ちょ、ちょっと、こーちゃん」
「休みなら言えよ真愛。久々に飯行こうぜ。なあ」
「ま、待って。ちょ、重明くん。えっと、ご飯——」
「行くぞ」
「ちょっ」
怖い。たった、3文字だけ。
かえれと言われた。心臓が、バクンバクン言ってる。
終わった。殺されなかっただけ、マシなんじゃないだろうか。
あんなに、怖い人だったんだ
——
「あああああああっ!」
「!」
ずん、と。
お腹に鉄塊が落とされたように、響いた。
僕は立ち止まった。
「ゆ、優愛っ?」
「ああああああああん!」
「うるせえって。おい泣き止ませろ」
「え。えっ。ちょ。優愛っ。ほら大丈夫。ね」
「あああああ!」
初めて聞いた。
僕は。
いや。
僕に。
——
「おいうるせえっ! 俺嫌いなんだよ!」
「ま。待ってって。怖がってるから。優愛っ。大丈夫大丈夫」
「ああああああ——」
「優愛」
「!」
いつ、振り返ったのか。どうやって歩いたのか。覚えてない。
この子は。公園で転けても泣かない。
真愛さんが遅くなってお腹が空いても泣かない。
偉い子だ。賢い子だ。
「どうした? どっか痛いか」
僕がぽん、と頭を撫でた途端に。
「…………帰っちゃ、や」
ぴたりと泣き止んだ。
「……優愛」
「おにいちゃんと、ばんごはんなの。こーちゃんが帰って」
「…………」
見た。今度こそ。怖い。ヤンキーだ。めっちゃ睨んでくる。それは当然なんだけど。
「俺ァ彼氏だ」
「!」
胸ぐらを。掴まれた。
「ぐっ」
「おめーはよぉ!」
痛い。強い。よく、胸ぐらをを掴むなんてことは、漫画とかではあるけど。本当に、身動きが取れない。掴むだけじゃなくて、持ち上げようとするんだ。力が強すぎて、顎が痛いし、喋れない。爪先で立って背伸びみたいにするけど、そんなんじゃ抵抗できない。
「真愛の【何】なんだよコラァ!」
「待ってこーちゃん! やめて!」
そのまま向かいの家の石垣まで押されて。
「!!!」
ゴン、と。
思いっきり、コンクリートの壁に、後頭部を打ち付けられた。
「きゃぁぁあっ!」
「……あああああああ!」
悲鳴と、泣き声がまた聴こえて。僕は意識を失った。
——
——
僕は『家族』に、詳しくない。よく読むネット小説には、血縁はあまり関係無いとか、結構書かれているのを見るけど。
家族になる、というのは、結婚や養子縁組以外にどんなものがあるのか知らない。多分僕と真愛さんは、どうやっても姉弟にはなれないんだろうなと、漠然と思う。
ああ、当然、恋愛関係になることは無いよ。僕は1円も稼げないし、そもそもなんかの法律? 条例? で、16歳の僕は青少年と扱われるとどこかで聞いた。別にそれが間違ってても問題ない。そんな気は、お互い無いのだから。
それでも、真愛さんの彼氏である『こーちゃん』からしたら、僕の存在は許せなくて当然だとも思う。結局は、弟じゃなくて他人だから。
僕は、真愛さんや優愛の、【何】なんだろうか。
彼女達は、僕の【何】なんだろうか。
「…………っつ」
「重明くんっ」
「!」
視界がぼやけたまま、僕は目覚めた。すぐに、真愛さんの声がして、そっちを向こうとして。
頭が痛くて、起き上がれなかった。
「大丈夫? わたしのこと分かる? あのね、ごめんね。本当に」
「…………真愛さん」
「……うん」
お腹の辺りに、熱くて重い感覚があった。なんとか視線を下にやって見ると、可愛らしい寝顔があった。
「優愛」
「あっ。ごめんね。引っ付いて離れなくて。……優愛ったら」
「…………えっと」
病室で、しかも個室だった。あの後どうなったのかは、なんとなく分かるけど。
「取り敢えず命に別状は無いって」
「…………うん」
まだ、意識がはっきりしてない。頭が痛い。
「あっ。先生、読んで来ないと。ちょっと待っててね」
身体が動かない。
白い天井を見て、また優愛を見た。僕に抱き付くように、眠っている。
「…………」
可愛いこの子は、僕の【何】なんだろうか。
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