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第83話 精神憑依
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「うぐ……っ!」
「さあ、『カナタ・ギドー』の精神が流れ込んでくるだろう!? 受け入れろ! 楽になるぞ!」
紫の珠が光る。その光に充てられた者は、グロリオの操り人形となる。機械であるサスリカには効かなかった為に、クリューを連れてくる必要があったのだ。
『ますたーっ!』
もう、どうしようもない。クリューは対抗する術を何ひとつ持ってはいないのだ。トレジャー武器など持っていない。その辺の武器屋で買える銃しか無い。そして銃しか、彼には戦いの術が無い。
選んだのが剣であれば、オルヴァリオに対抗できただろうか。だが銃だ。殺すか無傷かしかない。戦いになどならない。
「あああああああああ!!」
「はっはっはぁー! ようやく、この日が来たぞ! 夜明けと共に、ネヴァンの時代の幕開けだっ!!」
クリューの叫びと、グロリオの高笑いが響く。
「ああ!」
ガクン、と。クリューの気が一瞬だけ切れた。次に目を開けた時には、その瞳は珠と同じ紫色に染まっていた。
「よし。離してやれオルヴァリオ。こいつはもう『ネヴァン信者』だ」
「…………ああ」
グロリオに従い、オルヴァリオが剣の拘束を解く。クリューは倒れそうになるが、虚ろな表情で立ち上がる。
「クリュー・スタルース」
「……ああ」
「あの人形に命令しろ。『シロナ・イケガミの冷凍保存装置を解け』と」
「…………ああ」
クリューはふらふらと、サスリカの元へ歩いていく。
『ますたー……?』
「……サスリカ。済まないな」
『ますたー。サスリカは、ますたーの命令に逆らえません。いくらサスリカに心があっても、それだけはできないように造られています』
「……ああ」
『ますたー。はっきりとした命令でないのなら、ワタシの解釈で抜け道はできます。サスリカはそれほど、高性能です』
「ああ。知っている」
『今、彼女を解かしては。ますたーの目的は達成されません』
「俺の目的は解かすことだ。お前が解かせばその時点で達成される」
『違います。解かした後に、目的があります』
「違わない」
『ワタシがこの耳で聞きました。ますたーの口から』
「人の心は変わる。目的も夢も、変わっていくものだ。サスリカ」
『ハイ』
呼ばれれば。返事をしなくてはならない。次の言葉を待たなくてはならない。奥でグロリオが破顔する。
「『氷漬けの美女』を解かしてくれ」
『………………ハイ』
命令されれば。
断ることはできない。
『拘束を、解いてくださらないと』
「クリュー・スタルース。暴れさせるなよ」
「……ああ。サスリカ。解かすことだけをしろ。猊下やオルヴァに攻撃をするなよ」
『…………ハイ』
そう命令してから、クリューはサスリカの拘束を解いた。サスリカは、悲しそうに駆動音をキューンと鳴らした。
『……では、作業に入ります。冷凍保存装置のシステムへ接続します。古くなっているので、しばらく時間が掛かります』
「ああ」
そして氷塊が置かれてある機械を、触り始めた。サスリカは自身の腕と氷塊をプラグで繋ぎ、何やら作業を開始する。もうしばらくすると、氷は解ける。
「くっくっく。上手く行き過ぎだな。いや、当然か。ネヴァン教祖、『カナタ・ギドー』の意思だ」
クリューの隣に、グロリオがやってくる。笑いを堪え切れない様子だった。
「『宿願の御子』は、全世界全ての古代遺物の『適応者』となる。つまり世界を支配できる。それを支配するのがこのグロリオだ。安心しろ。それの貢献をしたお前たちにもそれなりの地位をくれてやる」
「………………」
その間。クリューはじっと。
『氷漬けの美女』を眺めていた。
「さあ、『カナタ・ギドー』の精神が流れ込んでくるだろう!? 受け入れろ! 楽になるぞ!」
紫の珠が光る。その光に充てられた者は、グロリオの操り人形となる。機械であるサスリカには効かなかった為に、クリューを連れてくる必要があったのだ。
『ますたーっ!』
もう、どうしようもない。クリューは対抗する術を何ひとつ持ってはいないのだ。トレジャー武器など持っていない。その辺の武器屋で買える銃しか無い。そして銃しか、彼には戦いの術が無い。
選んだのが剣であれば、オルヴァリオに対抗できただろうか。だが銃だ。殺すか無傷かしかない。戦いになどならない。
「あああああああああ!!」
「はっはっはぁー! ようやく、この日が来たぞ! 夜明けと共に、ネヴァンの時代の幕開けだっ!!」
クリューの叫びと、グロリオの高笑いが響く。
「ああ!」
ガクン、と。クリューの気が一瞬だけ切れた。次に目を開けた時には、その瞳は珠と同じ紫色に染まっていた。
「よし。離してやれオルヴァリオ。こいつはもう『ネヴァン信者』だ」
「…………ああ」
グロリオに従い、オルヴァリオが剣の拘束を解く。クリューは倒れそうになるが、虚ろな表情で立ち上がる。
「クリュー・スタルース」
「……ああ」
「あの人形に命令しろ。『シロナ・イケガミの冷凍保存装置を解け』と」
「…………ああ」
クリューはふらふらと、サスリカの元へ歩いていく。
『ますたー……?』
「……サスリカ。済まないな」
『ますたー。サスリカは、ますたーの命令に逆らえません。いくらサスリカに心があっても、それだけはできないように造られています』
「……ああ」
『ますたー。はっきりとした命令でないのなら、ワタシの解釈で抜け道はできます。サスリカはそれほど、高性能です』
「ああ。知っている」
『今、彼女を解かしては。ますたーの目的は達成されません』
「俺の目的は解かすことだ。お前が解かせばその時点で達成される」
『違います。解かした後に、目的があります』
「違わない」
『ワタシがこの耳で聞きました。ますたーの口から』
「人の心は変わる。目的も夢も、変わっていくものだ。サスリカ」
『ハイ』
呼ばれれば。返事をしなくてはならない。次の言葉を待たなくてはならない。奥でグロリオが破顔する。
「『氷漬けの美女』を解かしてくれ」
『………………ハイ』
命令されれば。
断ることはできない。
『拘束を、解いてくださらないと』
「クリュー・スタルース。暴れさせるなよ」
「……ああ。サスリカ。解かすことだけをしろ。猊下やオルヴァに攻撃をするなよ」
『…………ハイ』
そう命令してから、クリューはサスリカの拘束を解いた。サスリカは、悲しそうに駆動音をキューンと鳴らした。
『……では、作業に入ります。冷凍保存装置のシステムへ接続します。古くなっているので、しばらく時間が掛かります』
「ああ」
そして氷塊が置かれてある機械を、触り始めた。サスリカは自身の腕と氷塊をプラグで繋ぎ、何やら作業を開始する。もうしばらくすると、氷は解ける。
「くっくっく。上手く行き過ぎだな。いや、当然か。ネヴァン教祖、『カナタ・ギドー』の意思だ」
クリューの隣に、グロリオがやってくる。笑いを堪え切れない様子だった。
「『宿願の御子』は、全世界全ての古代遺物の『適応者』となる。つまり世界を支配できる。それを支配するのがこのグロリオだ。安心しろ。それの貢献をしたお前たちにもそれなりの地位をくれてやる」
「………………」
その間。クリューはじっと。
『氷漬けの美女』を眺めていた。
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