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第75話 3人
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「侵入者だ!」
「くそっ! 昇降機が破壊されたぞ!」
「迎え撃て! グロリオ様の元へは行かせるな!」
クリュー達は黄金の城へ突入した。リディは両手に拳銃を持っている。この場で最も制圧力が高い。
「昇降機破壊はあたし達じゃないっつーのよ」
「大勢の兵士が居るな。だが銃持ちすら居ない」
剣や槍を持って突っ込んできても、彼らにはあまり意味は無い。雨のように弾丸を降らせて、瞬く間に制圧していく。
「くそっ!」
「オルヴァ!」
だが、オルヴァリオだけは手が止まっていた。その剣を抜いて構えてはいるが、刃は未だ、血のひとつも着いておらず綺麗だ。
「無理しなくて良いわよ。あんたは父親だけ斬りなさい」
「…………いや、何の為にここへ来たのか分からないだろ」
「殺せないなら、斬らなくて良い。剣の腹で叩け。そんな鉄の塊をぶつけられれば、斬られなくても気絶する」
「……!」
クリューのアドバイスにより、オルヴァリオの剣は遂に人間相手に振るわれた。だが刃は使わない。剣を『鉄の板』として、相手を叩いて周っていく。
「それで良い。肉厚の剣は盾にもなる。先頭を頼むぞオルヴァ」
「……任せろ」
「…………」
クリューは、オルヴァリオのことをよく理解している。同郷というだけではない。彼らは親友なのだ。
リディは、ふたりを見てにこりと笑った。
「階段はどっち?」
「いや、この城専用の昇降機がある。一気に天守へ上がるぞ」
「この高さを階段無しで上がれるの? さっすが古代文明!」
「ここは未開地『断崖線』の上。目に入るもの全てが『超特級トレジャー』という訳だな」
戦意の残った者は居なくなった頃。3人は小型の昇降機へ乗り込んだ。この建物の金属は全て黄金で造られているようで、昇降機の手摺も黄金だった。
「どんだけ贅沢なのよ。ていうかこれ本当に金なのかしら」
「いや、未知の金属だ。『黄金水の壺』の水を固めて加工してある。古代文明の根幹かもしれないな」
オルヴァリオが昇降機を起動させる。城は高い。これまで見てきたどの建造物より高いのだ。いちいち階段など使っていられない。
「……あんたらに付き合ってこんな所まで来ちゃったわよ」
リディが呟いた。昇降機から、ガラスの窓を通して外の景色が見える。街灯の光がぽつぽつと見える。居住用の建物からも電気の明かりが見える。現代には無い『夜景』である。それは初めて見る彼らの目には、幻想的に映っている。
気温は低い。雪は見えないが、吐く息は白かった。
「そうだな。サスリカと『氷漬けの美女』を取り戻して、彼女の氷を解かす。そうしたらどうする?」
「俺はまだまだ冒険し足りねえよ。まだ一度も、自分でトレジャー見付けてねえ」
「あたしだって。サスリカの問題も解決してないし。ていうか家捨てて何も無くなったのよ? もっともっと稼がなきゃ」
クリューとオルヴァリオとリディ。始まりはこの3人だった。
「バルセスで遺跡を探索した。猛獣も沢山狩って冬を越した。ガルバ荒野へドラゴン討伐にも行った。そして西方大陸を離れ、中央大陸へ。その最大の秘境、断崖線の上。……結構冒険したんじゃないか」
「足りねえって。俺は人生懸けてやりてえの」
「でもあんた達まだまだよ。すぐ死にそう」
「じゃあ一緒に来てくれよ。クリューもリディも」
「…………そう、だな」
「馬鹿あんた。クリューは家のこともあるじゃない。トレジャーハンターやってるのは『グレイシア』の為に一時的なのよ。今回の件が終われば、クリューは就職でしょ」
「あっ」
「…………」
ゴウンゴウンと、昇降機の音がする。
「……まあ、終わってから考えれば良い。今は戦いに集中しよう」
「……そうね」
「ああ」
その時。昇降機が急に停止した。
「うおっ!?」
ガクンと衝撃が来る。このままでは落ちそうだ。彼らは昇降機から脱出し、途中の階へ降りた。
「なんだ? 故障か?」
「いや、あいつだ」
「!」
その階には。
広い部屋だった。何も置いていない殺風景。壁は全面ガラスで、星々がよく見える。
「『クリュー・スタルース』ってのァどいつだ」
黒づくめの男がひとりだけ、立っていた。
「くそっ! 昇降機が破壊されたぞ!」
「迎え撃て! グロリオ様の元へは行かせるな!」
クリュー達は黄金の城へ突入した。リディは両手に拳銃を持っている。この場で最も制圧力が高い。
「昇降機破壊はあたし達じゃないっつーのよ」
「大勢の兵士が居るな。だが銃持ちすら居ない」
剣や槍を持って突っ込んできても、彼らにはあまり意味は無い。雨のように弾丸を降らせて、瞬く間に制圧していく。
「くそっ!」
「オルヴァ!」
だが、オルヴァリオだけは手が止まっていた。その剣を抜いて構えてはいるが、刃は未だ、血のひとつも着いておらず綺麗だ。
「無理しなくて良いわよ。あんたは父親だけ斬りなさい」
「…………いや、何の為にここへ来たのか分からないだろ」
「殺せないなら、斬らなくて良い。剣の腹で叩け。そんな鉄の塊をぶつけられれば、斬られなくても気絶する」
「……!」
クリューのアドバイスにより、オルヴァリオの剣は遂に人間相手に振るわれた。だが刃は使わない。剣を『鉄の板』として、相手を叩いて周っていく。
「それで良い。肉厚の剣は盾にもなる。先頭を頼むぞオルヴァ」
「……任せろ」
「…………」
クリューは、オルヴァリオのことをよく理解している。同郷というだけではない。彼らは親友なのだ。
リディは、ふたりを見てにこりと笑った。
「階段はどっち?」
「いや、この城専用の昇降機がある。一気に天守へ上がるぞ」
「この高さを階段無しで上がれるの? さっすが古代文明!」
「ここは未開地『断崖線』の上。目に入るもの全てが『超特級トレジャー』という訳だな」
戦意の残った者は居なくなった頃。3人は小型の昇降機へ乗り込んだ。この建物の金属は全て黄金で造られているようで、昇降機の手摺も黄金だった。
「どんだけ贅沢なのよ。ていうかこれ本当に金なのかしら」
「いや、未知の金属だ。『黄金水の壺』の水を固めて加工してある。古代文明の根幹かもしれないな」
オルヴァリオが昇降機を起動させる。城は高い。これまで見てきたどの建造物より高いのだ。いちいち階段など使っていられない。
「……あんたらに付き合ってこんな所まで来ちゃったわよ」
リディが呟いた。昇降機から、ガラスの窓を通して外の景色が見える。街灯の光がぽつぽつと見える。居住用の建物からも電気の明かりが見える。現代には無い『夜景』である。それは初めて見る彼らの目には、幻想的に映っている。
気温は低い。雪は見えないが、吐く息は白かった。
「そうだな。サスリカと『氷漬けの美女』を取り戻して、彼女の氷を解かす。そうしたらどうする?」
「俺はまだまだ冒険し足りねえよ。まだ一度も、自分でトレジャー見付けてねえ」
「あたしだって。サスリカの問題も解決してないし。ていうか家捨てて何も無くなったのよ? もっともっと稼がなきゃ」
クリューとオルヴァリオとリディ。始まりはこの3人だった。
「バルセスで遺跡を探索した。猛獣も沢山狩って冬を越した。ガルバ荒野へドラゴン討伐にも行った。そして西方大陸を離れ、中央大陸へ。その最大の秘境、断崖線の上。……結構冒険したんじゃないか」
「足りねえって。俺は人生懸けてやりてえの」
「でもあんた達まだまだよ。すぐ死にそう」
「じゃあ一緒に来てくれよ。クリューもリディも」
「…………そう、だな」
「馬鹿あんた。クリューは家のこともあるじゃない。トレジャーハンターやってるのは『グレイシア』の為に一時的なのよ。今回の件が終われば、クリューは就職でしょ」
「あっ」
「…………」
ゴウンゴウンと、昇降機の音がする。
「……まあ、終わってから考えれば良い。今は戦いに集中しよう」
「……そうね」
「ああ」
その時。昇降機が急に停止した。
「うおっ!?」
ガクンと衝撃が来る。このままでは落ちそうだ。彼らは昇降機から脱出し、途中の階へ降りた。
「なんだ? 故障か?」
「いや、あいつだ」
「!」
その階には。
広い部屋だった。何も置いていない殺風景。壁は全面ガラスで、星々がよく見える。
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黒づくめの男がひとりだけ、立っていた。
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