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第71話 荒野の果てに
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「燃やして良いのか? 昇降機は」
「ああ。建物内には昇降機は無いから問題ない」
「よし。俺がまずぶちかますぜ」
エフィリスが、その背中の大剣を持ち構える。強く握ると反応し、夜を照らす炎が噴き出した。
「炎は夜に目立つな」
「良いじゃねえか派手でよ」
その肉厚の刃には古代文字が刻まれているが、解読できない為に剣の銘は分からない。
文字の形としては、『こう』だ。
【Gloria in excelsis Deo.】
「オラァ!!」
「!」
大爆発が起きた。
エフィリスの剣の炎は、ただ燃やすだけではなく、破壊力がある。仕組みや科学は勿論未解明。彼が自ら手に入れた『特級トレジャー』である。
敵の本拠地が分かれば、潜入など不要。攻略も不要。ただ外部から吹き飛ばせば良い。
「行けェ!」
全員が、崩れた建物に侵入する。
「なんだ!?」
「うおお!」
「はぁ!? 敵!?」
中に居た者達は衝撃と驚愕で動けない。何も対処ができない。完全に不意打ちである。
「サーガ! 全員縛れ! オルヴァリオも手伝え! 俺達は『対応してきた』戦闘員をやるぞ! クリュー! リディ!」
「おう!」
戦争とは、『正面からよーいドン』で始まらない。いつだって不意打ちである。奇襲が基本である。何故なら『勝たなければ死ぬ』からだ。最もこちらの被害を抑える方法が、不意打ちであるからだ。
「くそっ! 敵襲だ! 古代武器持ちはどうした!」
「いくら武器が強かろうが関係ねぇんだよ!」
炎は。生物の『弱点』である。燃やされて生きられる生物は居ない。そんな死の熱を持った剣を振り回すエフィリスは、文字通り死神だ。彼へ突っ込む勇気のある者はこの場には居なかった。
「クソがぁぁっ!!」
「!」
だが、理屈を理解できない者や混乱したままの者、怒りで我を忘れた者は、構わずに向かってくる。エフィリスだけではなく、クリューやリディにも。
「クリュー。あんたが『トレジャーハンター』『銃』『戦闘』に向いてる理由教えてあげるわ」
「なんだ?」
そしてそういった者は全て、クリューとリディに撃ち殺された。
剣では銃に勝てない。射程の優位は絶対的だ。例え銃を持っても、動揺した精神状態では当たらない。
「冷静なのよ。一番大事な要素だわ」
「そう言うリディもだな」
「あたしのは経験」
時間にして、約6分弱。2階建ての『商会』は、またたく間に制圧された。
中に居たネヴァンメンバーは20人。4人が瓦礫に潰されて死亡、残りの10人がサーガとオルヴァリオによって拘束。6人は彼らに向かって行って返り討ちに遭った。
「さて。マル呼んで行くぞ。昇降機はどこだ?」
「こっちだ」
建物の奥に、崖の側に出る扉がある。外からは天幕で隠されたそこには、崖を切り崩して造られた登り階段があった。
「はっは。天国への階段みてぇだな」
「古代人はこの崖を登って、その上に文明を築いた訳だよな。確かに神でも居そうだ」
「山は、よく宗教で神と同一視されますからね」
「で、昇降機は?」
「もっとずっと上だ。この階段を結構登らなくちゃならない」
「便利なんだか不便なんだか……」
ここで初めて、彼らは星空を見た。幾億の星が煌めく満天の空を。
「……古代人が切り拓いた階段だ。この崖は金属みたいに硬くてな。現代人じゃお手上げなんだ。やり方も使った道具も分かってない」
「ずっと発見されなかったのか?」
「特級トレジャーの能力で隠されていたんだ。そして『カナタ・ギドー』の記憶の中に、その情報があった」
「……ネヴァン教祖か。そりゃあ、本拠地をここにするわな」
そこでマルが合流した。これから全員で登る。
「行くぞ」
「うん」
「ああ」
この先にサスリカと『氷漬けの美女』が居る。
「ああ。建物内には昇降機は無いから問題ない」
「よし。俺がまずぶちかますぜ」
エフィリスが、その背中の大剣を持ち構える。強く握ると反応し、夜を照らす炎が噴き出した。
「炎は夜に目立つな」
「良いじゃねえか派手でよ」
その肉厚の刃には古代文字が刻まれているが、解読できない為に剣の銘は分からない。
文字の形としては、『こう』だ。
【Gloria in excelsis Deo.】
「オラァ!!」
「!」
大爆発が起きた。
エフィリスの剣の炎は、ただ燃やすだけではなく、破壊力がある。仕組みや科学は勿論未解明。彼が自ら手に入れた『特級トレジャー』である。
敵の本拠地が分かれば、潜入など不要。攻略も不要。ただ外部から吹き飛ばせば良い。
「行けェ!」
全員が、崩れた建物に侵入する。
「なんだ!?」
「うおお!」
「はぁ!? 敵!?」
中に居た者達は衝撃と驚愕で動けない。何も対処ができない。完全に不意打ちである。
「サーガ! 全員縛れ! オルヴァリオも手伝え! 俺達は『対応してきた』戦闘員をやるぞ! クリュー! リディ!」
「おう!」
戦争とは、『正面からよーいドン』で始まらない。いつだって不意打ちである。奇襲が基本である。何故なら『勝たなければ死ぬ』からだ。最もこちらの被害を抑える方法が、不意打ちであるからだ。
「くそっ! 敵襲だ! 古代武器持ちはどうした!」
「いくら武器が強かろうが関係ねぇんだよ!」
炎は。生物の『弱点』である。燃やされて生きられる生物は居ない。そんな死の熱を持った剣を振り回すエフィリスは、文字通り死神だ。彼へ突っ込む勇気のある者はこの場には居なかった。
「クソがぁぁっ!!」
「!」
だが、理屈を理解できない者や混乱したままの者、怒りで我を忘れた者は、構わずに向かってくる。エフィリスだけではなく、クリューやリディにも。
「クリュー。あんたが『トレジャーハンター』『銃』『戦闘』に向いてる理由教えてあげるわ」
「なんだ?」
そしてそういった者は全て、クリューとリディに撃ち殺された。
剣では銃に勝てない。射程の優位は絶対的だ。例え銃を持っても、動揺した精神状態では当たらない。
「冷静なのよ。一番大事な要素だわ」
「そう言うリディもだな」
「あたしのは経験」
時間にして、約6分弱。2階建ての『商会』は、またたく間に制圧された。
中に居たネヴァンメンバーは20人。4人が瓦礫に潰されて死亡、残りの10人がサーガとオルヴァリオによって拘束。6人は彼らに向かって行って返り討ちに遭った。
「さて。マル呼んで行くぞ。昇降機はどこだ?」
「こっちだ」
建物の奥に、崖の側に出る扉がある。外からは天幕で隠されたそこには、崖を切り崩して造られた登り階段があった。
「はっは。天国への階段みてぇだな」
「古代人はこの崖を登って、その上に文明を築いた訳だよな。確かに神でも居そうだ」
「山は、よく宗教で神と同一視されますからね」
「で、昇降機は?」
「もっとずっと上だ。この階段を結構登らなくちゃならない」
「便利なんだか不便なんだか……」
ここで初めて、彼らは星空を見た。幾億の星が煌めく満天の空を。
「……古代人が切り拓いた階段だ。この崖は金属みたいに硬くてな。現代人じゃお手上げなんだ。やり方も使った道具も分かってない」
「ずっと発見されなかったのか?」
「特級トレジャーの能力で隠されていたんだ。そして『カナタ・ギドー』の記憶の中に、その情報があった」
「……ネヴァン教祖か。そりゃあ、本拠地をここにするわな」
そこでマルが合流した。これから全員で登る。
「行くぞ」
「うん」
「ああ」
この先にサスリカと『氷漬けの美女』が居る。
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