GLACIER(グレイシア)

弓チョコ

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第67話 現代の探求者

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「オルヴァリオ。良いか。お前はまだ若い。若い奴はよく失敗する。だが、お前は既にトレジャーハンターとしてプロの世界に居る。その中の頂点である俺と仕事をしている。……一度の過ちは許す。『お前は俺達の仲間だろ』」
「……!!」

 出掛けに、エフィリスがオルヴァリオを叱った。だがそれは、決別の怒りではなかった。

「行くぞ。取り返せよ、信頼」

 剣士として。エフィリスはオルヴァリオに、伝えたいことがあるのだ。

 一行はエヴァルタの屋敷を出た。情報において形勢逆転したとは言え、まだまだ不利だ。相手はそもそも、山程の特級トレジャーを持っている。戦力自体はひっくり返らない。とにかく少数の利点を使い、速く行動をすることだ。

「頑張ってね。『現代いま探求者トレジャーハンター』」
「エヴァルタさん。世話になった。あんたの実力も、ちょっと見たかったけどな」
「あはは。またの機会にね」
「……じゃあ、全部終わったらまた寄るよ」
「うん。腕の良い料理人揃えとく。特級料理でパーティね」
「ほう。この国の料理は楽しみだ」
「ええ。食は美。喜びよ。それが、私が長年生きてきて、達した結論」

 エヴァルタは笑顔で彼らを見送った。詳しい話は知らない。だが、トレジャーハンターとして何かと戦っている。時代の最先端に居る彼らを見て。

「……なんだか懐かしくなっちゃったなあ」

 空に呟いた。

 それからクリュー達は、各地のギルドを回りながらオルヴァリオの案内の元、『氷漬けの美女』とサスリカの囚われている場所へと向かう。

「予想はしていたが、未開地か」
「ああ。国際政府機関には何の申告もなく、未開地の一部を領土として使ってる。ゴルザダ平原の向こうの未開地だ。あそこは『断崖線』のせいでそれより向こうが未開拓の割に、途中までは観光地として栄えてる。大勢の人の流れに紛れて移動できるんだ」
「あの『断崖線』を超えたのか? ネヴァンが。それで、独占してやがるのか」

 馬車の中で、移動しながらオルヴァリオが説明する。ネヴァン商会の本拠地が未開地にあるなら、見付けられる筈は無かった。確かに詰んでいたのだ。

「その通りだ。奴らが未開地に持つ支配領域は、既に大国の領土並みなんだ」
「……!」
「まあ、古代の都市を発見してそのまま使ってるだけなんだけどな」
「古代都市だと……!? 『超特級』どころじゃねえぞ……!」
「……ああ」

 エフィリスは驚愕した。特級ハンターの彼は、言わば古代文明を一番体験している人材だ。だが。

「……ネヴァン商会は、トレジャーハンターより『最前線』に居る。金と道具と人材を揃えて、力任せに開拓してるんだ。世界中から孤児を集めて労働力にしてな。毎日何人も死んでる」
「そんなこと、今の国際社会じゃ許されないな。……だからこそ、『探索』の一点突破な訳か。……いずれにせよムカつくが」
「いやエフィリス。ここは中央大陸だ。俺達の居たルクシルアやラビアのある西方大陸とは違って、戦争がある。トレジャーハンターの質自体は西方の方が高いが、古代文明の解明の『必要度』的には、中央各国の方が躍起になってるんだ。ネヴァン商会の協力者もその分集まるんだ」

 オルヴァリオの話では。西方大陸では全くの謎の組織だったネヴァン商会は、中央大陸では知る人ぞ知る、非公式の闇の組織だった。国境を越えて、有力者が出資しているのだ。各国での犯罪も、その手助けがあるのだろう。最早国家では手の付けられないほど巨大になっている。
 その話に、エフィリスは笑ったがリディは溜め息を吐いた。そしてクリューは。

「国家だどうのは関係ない。気にしなくて良い。俺達は俺達の目的を達するだけだ」
「……まあ、そうだけど」

 最初から最後まで、彼はブレない。
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