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第52話 ネヴァン教祖
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「つまり『ネヴァン商会』とは、宗教団体を母体としている『イカれた』集団だ」
「……宗教。神様、か」
「ああ。1万年前、『古代文明』時代に居た人物と思われる。古い言葉では『黒い天使』という意味があるらしい」
「……黒い天使」
レアダスは新聞をいくつか持ち、クリューに渡した。
「これは……」
「ルクシルアだけではない。ラクス皇国で『黄金水の壺』。ベリヘルム連合国で『動く絵画』。ローゼ帝国で『海を割る剣』。各国で『特級トレジャー』が盗まれている。どれも当局は発表してないが、恐らくは奴らだろう。全て、この1年以内に起きている」
「!」
今、西方大陸ではこのような大事件が連続して起きていた。いくつかはクリューも、家を出る前に読んで知っていた。だが外国のことだと気に留めていなかったのだ。それらが全て、『ネヴァン商会』の犯行だとは。
「そして先日の『氷漬けの美女』だな。奴らは『特級トレジャー』を集めて何かを企んでいる。古代文明を復活させた国でも作る気なのか。真相は分からんが」
「……悪党ですね。しかし各国が追っているのに、足取りは掴めていない」
「そうだ。恐らくは古代文明を駆使して見つからぬような犯行をしている」
「…………許さん」
「それと、クリューよ」
「はい?」
レアダスは改まってクリューを呼んだ。視線を合わせる。
「奴らの『教祖』の名は知っているか」
「知りません」
「『カナタ・ギドー』と言うらしい。これも昔、中央に居た頃に聞いた。それまではまだ、土着の宗教として受け入れられていたからな」
「……?」
クリューは。
その名に、違和感を覚えた。あれ? よくある名前なのか? と言った風に。
「……『ギドー』?」
「ああそうだ。お前は知っているだろう?」
——
その頃。
——
「はぁ。最悪だ」
「あれ、オルヴァリオ。結局来たんだ」
リディとサスリカの居る客室に、オルヴァリオがやってきた。彼は項垂れたように足取りが重く、溜め息も深く漏らしていた。
「……ようリディ」
「なによ、元気無いわね。家に帰ったの?」
「…………まあなぁ。見付かっちまって」
「ふぅん。喧嘩?」
「……そんなとこかなぁ」
「なによ歯切れの悪い。もしかしてあんた、親に内緒で家を出たとか?」
「うーん……。まぁ半分」
「そりゃ怒られるわよ。良家の息子も大変ね」
やれやれと、ソファに座る。テーブルにはふたり分の茶が用意されていたが、サスリカは飲まない。一度目配せをしてから、彼がカップを手に取った。
「ふぅ。クリューは?」
『お父様とお話中です。ネヴァン商会について何か知っているご様子でした』
「なるほどな。……サスリカ、ちょっと良いか」
『ハイ?』
一気に飲み干してから、また立ち上がる。オルヴァリオはサスリカを呼んで、部屋を出た。
「なによ」
「ちょっとな。聞きたいことが」
『ハイ』
「?」
サスリカも素直に付いていく。不思議に思いながらも、リディもそこまで気にしない。ふたりは部屋を出ていった。
——
——
「確かお前の学友だったろう。ここ半年ほどで引っ越したのか、更地になっていたが」
「……は? 更地?」
「知らんのか。よくお前の口から聞いたがな。確かファーストネームは……」
クリューは。
心臓の鼓動が、速くなるのを感じた。嫌な汗が出てくる。そんなまさか。あり得ない。だが。
「ああ、思い出した。『オルヴァリオ・ギドー』。最後に会ったのはいつだ? 何か変わったことは無かったか? 偶然かもしれんが、一応珍しいファミリーネームだからな。もしかしたら中央大陸から引っ越してきた家族だったのかもしれん」
「…………!!」
顔がひきつった。
「……宗教。神様、か」
「ああ。1万年前、『古代文明』時代に居た人物と思われる。古い言葉では『黒い天使』という意味があるらしい」
「……黒い天使」
レアダスは新聞をいくつか持ち、クリューに渡した。
「これは……」
「ルクシルアだけではない。ラクス皇国で『黄金水の壺』。ベリヘルム連合国で『動く絵画』。ローゼ帝国で『海を割る剣』。各国で『特級トレジャー』が盗まれている。どれも当局は発表してないが、恐らくは奴らだろう。全て、この1年以内に起きている」
「!」
今、西方大陸ではこのような大事件が連続して起きていた。いくつかはクリューも、家を出る前に読んで知っていた。だが外国のことだと気に留めていなかったのだ。それらが全て、『ネヴァン商会』の犯行だとは。
「そして先日の『氷漬けの美女』だな。奴らは『特級トレジャー』を集めて何かを企んでいる。古代文明を復活させた国でも作る気なのか。真相は分からんが」
「……悪党ですね。しかし各国が追っているのに、足取りは掴めていない」
「そうだ。恐らくは古代文明を駆使して見つからぬような犯行をしている」
「…………許さん」
「それと、クリューよ」
「はい?」
レアダスは改まってクリューを呼んだ。視線を合わせる。
「奴らの『教祖』の名は知っているか」
「知りません」
「『カナタ・ギドー』と言うらしい。これも昔、中央に居た頃に聞いた。それまではまだ、土着の宗教として受け入れられていたからな」
「……?」
クリューは。
その名に、違和感を覚えた。あれ? よくある名前なのか? と言った風に。
「……『ギドー』?」
「ああそうだ。お前は知っているだろう?」
——
その頃。
——
「はぁ。最悪だ」
「あれ、オルヴァリオ。結局来たんだ」
リディとサスリカの居る客室に、オルヴァリオがやってきた。彼は項垂れたように足取りが重く、溜め息も深く漏らしていた。
「……ようリディ」
「なによ、元気無いわね。家に帰ったの?」
「…………まあなぁ。見付かっちまって」
「ふぅん。喧嘩?」
「……そんなとこかなぁ」
「なによ歯切れの悪い。もしかしてあんた、親に内緒で家を出たとか?」
「うーん……。まぁ半分」
「そりゃ怒られるわよ。良家の息子も大変ね」
やれやれと、ソファに座る。テーブルにはふたり分の茶が用意されていたが、サスリカは飲まない。一度目配せをしてから、彼がカップを手に取った。
「ふぅ。クリューは?」
『お父様とお話中です。ネヴァン商会について何か知っているご様子でした』
「なるほどな。……サスリカ、ちょっと良いか」
『ハイ?』
一気に飲み干してから、また立ち上がる。オルヴァリオはサスリカを呼んで、部屋を出た。
「なによ」
「ちょっとな。聞きたいことが」
『ハイ』
「?」
サスリカも素直に付いていく。不思議に思いながらも、リディもそこまで気にしない。ふたりは部屋を出ていった。
——
——
「確かお前の学友だったろう。ここ半年ほどで引っ越したのか、更地になっていたが」
「……は? 更地?」
「知らんのか。よくお前の口から聞いたがな。確かファーストネームは……」
クリューは。
心臓の鼓動が、速くなるのを感じた。嫌な汗が出てくる。そんなまさか。あり得ない。だが。
「ああ、思い出した。『オルヴァリオ・ギドー』。最後に会ったのはいつだ? 何か変わったことは無かったか? 偶然かもしれんが、一応珍しいファミリーネームだからな。もしかしたら中央大陸から引っ越してきた家族だったのかもしれん」
「…………!!」
顔がひきつった。
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