GLACIER(グレイシア)

弓チョコ

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第41話 作戦

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「エフィリス様。よくぞ来てくださいました」
「……ひでぇな」

 ガルバ荒野に到着した。国境付近で一番大きい街にまず入った。市長が彼らを歓迎しつつ、状況説明を行う。

「この街も既に半壊。市民の避難は終わりましたが、次にドラゴンが現れれば都市の機能は完全に停止し復旧は困難になるでしょう」
「ギリギリ間に合ったってところか。ドラゴンはどこだ?」

 街の周りは巨大な防壁が築かれていたが、それが無惨にも崩されていたのを街に入る前に遠くから確認できた。家ほどの巨体を持つドラゴンが暴れたのだ。

「北西の湖をねぐらにしているようです。これまでの周期的に、次に活動を始めるのは明日の夜頃かと」
「了解だ。早速向かう。お前ら付いてこい。馬は置いていく」

 素早く情報伝達を行ったエフィリスは、すぐさま街を出ていった。一行はそれに続く。

「どうするんだ? 寝込みを襲うのか」
「いえ。近付けば起きますので寝込みを襲うことはできません。それでは寧ろ怒りを買うだけです」

 しばらく荒野を進んでから、エフィリスが立ち止まった。まだドラゴンの居る湖までは距離がある。

「マル。地図を出せ」
「えっ。う、うんっ」
「?」

 街と周辺の地図を、7人で囲む。

「配置だ。クリューは銃でリディが弓だったな。やるか? 見てるか?」
「……」

 その質問に、ふたりは顔を一瞬だけ見合わせて。

「やる」
「やるわ」

 即答した。エフィリスはにやりと口角を上げる。

「良い返事だ。じゃあお前らはここだ。俺がここまでドラゴンを誘導するから、この高台から撃て。目を狙えよ。それ以外は弾かれて効かねえ」
「ああ」
「分かったわ。でもどうやって誘導するの?」
「ああ、俺は見付かっても死なねえから囮ができる」
「えっ……」

 見付かると死に至るから、デッドリィドラゴン。
 俺は見付かっても死なねえ。
 意味不明の説明にリディは固まった。

「で、サーガはここに罠。マルはクリュー達と反対側だ。任せたぞ」
「お任せください」
「う、うん。緊張するけどがんばる」

 誘導する場所は、高台に囲まれた窪地だった。湖からほど近い。ここに呼び込んで罠に落とし、火器で一気に仕留める作戦だ。説明を受ければ、単純に見える。

「俺は?」

 オルヴァリオが手を挙げた。エフィリスは彼の背にある大剣を見た。

「死なねえ自信があるなら俺と囮だ」
「!」

 エフィリスの背中にも、肉厚の剣があった。ポジションが同じなのだ。つまり、剣士とは接近して正面から『直接戦闘』する、最も危険な仕事である。

「やるさ。俺だって」
「良い返事だ。さて、今日中に罠、張っちまおう。サーガ、指示してくれ」
「かしこまりました。では道中、こんな色の植物があれば採っていてください」
『ワタシはどうしますか?』
「……お前は『グレイシア』を解かすって死ぬほど大事な仕事がある。俺からは万が一にも危険な目に合わせられねえよ。クリュー達と一緒に居てくれ」
『なるほど』

 地図を仕舞い、荒野を進む。作戦は単純で簡単なものだった。本当にこれで上手く行くのか。クリューは少し気になり、周りに聴こえないよう小さくリディに話し掛けた。

「大丈夫なのか?」
「……さあね。囮のエフィリスがどこかで殺されたら終了。罠に嵌めている間に仕留められなければ終了。暴れるドラゴンの眼球を精確に撃ち抜かないとね」
「…………精一杯やるが、必ず当てるという保証はできないな」
「あたしもよ。でも、多分『やる』。あたし達が居なくても『やる』。半分見学の気持ちで居ましょう。オルヴァリオの無事だけ祈って」
「……ああ」

 同じく、サーガもエフィリスに小声で話し掛けていた。

「正直、どう見ますか? 彼らは」
「ふん。良くて中級、まあ中の下だな。大型猛獣なら問題なく狩れるだろ」
「……ならば危険では? 特にオルヴァリオさんは」
「はっ。本人がやるってんだ。止められねえよ。トレジャーハンターは『自由』だ」
「しかし……それでもしものことがあれば今後の関係や、『グレイシア』捜索に支障が」
「いんだよ。それも含めて『自由』だ。俺は奴らの保護者じゃねえし」

 エフィリスは、期待していた。久々に、トレジャーハンターとしてわくわくしていたのだ。
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