31 / 99
第31話 仲間
しおりを挟む
厳かな門を抜けて。深く頭を下げる門番とメイドの群れを抜けて。
「お帰りなさいませ。リディ様」
メイド服を着た中年の女性が出迎えた。広い庭と、巨大な屋敷。ここが、リディの実家だという。
「あら、そちらは」
「仲間よ。今誰か居る? エリー」
「いえ。旦那様もハッシュ様も今はお出掛けに」
「そ。なら良いわ。はいこれ」
「?」
リディはメイドに紙を渡す。そこには『グレイシア盗難事件』についてが書かれてあった。事件概要と、エフィリスのこと、捜査協力すること、ここを拠点として連絡報告をすることなど。
「……これは?」
「取り敢えずそれだけ。あとよろしく。ほらあんた達、付いてきなさい」
エリーと呼ばれたメイドの脇を通り抜けて、屋敷の億へ進む。クリューとオルヴァリオ、サスリカも付いていく。
屋敷は高級そうな絨毯が敷かれ、天井にはシャンデリア。壁には絵画が飾られている。
「オルヴァの家もこんな感じだったな」
「いや俺んちは中流だよ。お前の家のことだろ。大商人の大屋敷」
そんな廊下をずんずんと進んでいく。ふたりがあまり驚かないのは、『こういう家』に割りと慣れているからだった。それにしても、クリューの実家の屋敷より大きいが。
「ここよ」
「?」
ある扉に辿り着く。観音開きになっており、相当広いのだと想像できる。ギィ、と開くと、様々なものが目に飛び込んできた。
並べられたいくつもの武器。世界中の剣に弓、銃、槍、斧、鎚。仕掛けの罠や、手投げの武器など。武器屋かと思うくらい、部屋中びしりと、整頓されていた。
「……武器庫?」
「あたしのコレクションルームよ。この部屋には武器関係しか置いてないけど」
「なる、ほど」
口振りから、他にもコレクションルームがあるらしい。そう言えばお酒コレクターなどとも言っていたなと、オルヴァリオは思い出した。
「さて。じゃああんた達の武器、『強化』するわよ。なんてったって相手は『特級』をものともしない犯罪組織なんだから」
「!」
「良いのか?」
よく見なくても分かる。どれも相当、高級だ。それだけじゃない。古代文明の技術が用いられた『トレジャー武器』だってあるだろう。とても貴重なものだ。
「リディはコレクターだろう。これらは、使用するために集めた訳じゃない」
「あのねえ。あたし達は今から、『組織』と戦うのよ?」
「?」
クリューとオルヴァリオは、分かっていなかった。先程の、サスリカを巡る会話を経て。リディの中ではもう、彼らは『仲間』なのだ。大切な。
「武器に妥協して誰かが死ぬくらいなら。『これら』はゴミよ。だけど仲間の命を守れる可能性が上がるなら。あたしが『これら』を集めてたことを、誇れる」
「!」
嬉しかったのだ。今までひとりでやってきたから。誰も信用せず、自分の身だけ守れば良かった。楽ではあったが、今回のサスリカのように、ひとりでは為し得ない仕事も当然ある。リディが今以上のトレジャーをコレクションしようとするなら、避けては通れない。
「オルヴァリオ、腕出して。もう1回計るから。クリューは、庭に射撃場があるからいくつか試しましょう。サスリカは……好きなの選びなさい」
「おっ」
「おう」
『ハイ。リディ様』
一緒にチームを組む。それはリディ視点よりも、クリューとオルヴァリオにとってとても頼もしいことなのだ。知識、経験、武芸。この世界、この時代のこと、トレジャーハンターについてはサスリカより頼りになる。
「……気合いを入れ直そう」
「ああ。エフィリスに啖呵切って首突っ込んだ手前もある。俺達はもう『トレジャーハンター』なんだから」
俺達が活躍せねば。ふたりはそう強く思った。
「お帰りなさいませ。リディ様」
メイド服を着た中年の女性が出迎えた。広い庭と、巨大な屋敷。ここが、リディの実家だという。
「あら、そちらは」
「仲間よ。今誰か居る? エリー」
「いえ。旦那様もハッシュ様も今はお出掛けに」
「そ。なら良いわ。はいこれ」
「?」
リディはメイドに紙を渡す。そこには『グレイシア盗難事件』についてが書かれてあった。事件概要と、エフィリスのこと、捜査協力すること、ここを拠点として連絡報告をすることなど。
「……これは?」
「取り敢えずそれだけ。あとよろしく。ほらあんた達、付いてきなさい」
エリーと呼ばれたメイドの脇を通り抜けて、屋敷の億へ進む。クリューとオルヴァリオ、サスリカも付いていく。
屋敷は高級そうな絨毯が敷かれ、天井にはシャンデリア。壁には絵画が飾られている。
「オルヴァの家もこんな感じだったな」
「いや俺んちは中流だよ。お前の家のことだろ。大商人の大屋敷」
そんな廊下をずんずんと進んでいく。ふたりがあまり驚かないのは、『こういう家』に割りと慣れているからだった。それにしても、クリューの実家の屋敷より大きいが。
「ここよ」
「?」
ある扉に辿り着く。観音開きになっており、相当広いのだと想像できる。ギィ、と開くと、様々なものが目に飛び込んできた。
並べられたいくつもの武器。世界中の剣に弓、銃、槍、斧、鎚。仕掛けの罠や、手投げの武器など。武器屋かと思うくらい、部屋中びしりと、整頓されていた。
「……武器庫?」
「あたしのコレクションルームよ。この部屋には武器関係しか置いてないけど」
「なる、ほど」
口振りから、他にもコレクションルームがあるらしい。そう言えばお酒コレクターなどとも言っていたなと、オルヴァリオは思い出した。
「さて。じゃああんた達の武器、『強化』するわよ。なんてったって相手は『特級』をものともしない犯罪組織なんだから」
「!」
「良いのか?」
よく見なくても分かる。どれも相当、高級だ。それだけじゃない。古代文明の技術が用いられた『トレジャー武器』だってあるだろう。とても貴重なものだ。
「リディはコレクターだろう。これらは、使用するために集めた訳じゃない」
「あのねえ。あたし達は今から、『組織』と戦うのよ?」
「?」
クリューとオルヴァリオは、分かっていなかった。先程の、サスリカを巡る会話を経て。リディの中ではもう、彼らは『仲間』なのだ。大切な。
「武器に妥協して誰かが死ぬくらいなら。『これら』はゴミよ。だけど仲間の命を守れる可能性が上がるなら。あたしが『これら』を集めてたことを、誇れる」
「!」
嬉しかったのだ。今までひとりでやってきたから。誰も信用せず、自分の身だけ守れば良かった。楽ではあったが、今回のサスリカのように、ひとりでは為し得ない仕事も当然ある。リディが今以上のトレジャーをコレクションしようとするなら、避けては通れない。
「オルヴァリオ、腕出して。もう1回計るから。クリューは、庭に射撃場があるからいくつか試しましょう。サスリカは……好きなの選びなさい」
「おっ」
「おう」
『ハイ。リディ様』
一緒にチームを組む。それはリディ視点よりも、クリューとオルヴァリオにとってとても頼もしいことなのだ。知識、経験、武芸。この世界、この時代のこと、トレジャーハンターについてはサスリカより頼りになる。
「……気合いを入れ直そう」
「ああ。エフィリスに啖呵切って首突っ込んだ手前もある。俺達はもう『トレジャーハンター』なんだから」
俺達が活躍せねば。ふたりはそう強く思った。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる