杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜

メロのん

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第3章 身代わり

第126話 打開の一手

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 もうどれだけの時間が経ったのだろうか。すでに日は跨ぎ、そこからの時間感覚は無くなった。今が午前なのか午後なのかも分からない。

 身体的疲労も限界を迎えつつある。そしてそれは僕だけではない。

 僕より体力のあるテンでさえ、攻撃と回避をこなし続けることにより溜まった疲労は相当なものだ。

 奴の攻撃が回避できない危険な状態に何度も陥り、その都度僕が転移でなんとか助けている。

 こっちは命からがらという状況なのに、奴はいまだに弱った様子はない。攻撃もいまだ止む様子はなく、絶えずこちらを狙い続けてくる。

 唯一の希望は、テンの攻撃がなんとか通じているというその一点だけだ。

 ただその攻撃も奴を弱らせるには至っていない。

 決してテンの攻撃が弱かったわけではない。奴の攻撃を避けながら、同じ箇所に絶えず攻撃をやり続けたテンはよくやっただろう。

 しかしそれ以上に奴が化物だった。攻撃も耐久も持久力も、どれもがこの世の生物とは思えないほどだ。

 きっとこのまま続けていても、奴に致命傷を与えるよりも先に僕らが潰れるだろう。

 ずっと考えていた。テンの攻撃頼りで僕は何も出来ることがなかった。いったい僕に何が出来るのかと。

 出来ることなどほとんどない、そんな中でも一つだけ見つけた。

 でも、それは賭けにも等しい。しかも成功する確率よりも失敗する確率の方が高いだろう。それに…これをしたらテンを含め周りの者たちが悲しむだろう。

 でも…もしここで僕がやらなきゃ周りの者たちに被害が出る。もう、僕は一人じゃない。守りたい者たちが増えた。奴はここで止めるんだ。僕がやらなきゃ、僕がやらなきゃ大切な者たちを失うんだ。

 ふー……

 もう大丈夫、決心はついた。

 出し惜しみは必要ない。どちらにせよこれで終わりだ。

 集中し魔力を集める。今からやるのは異空間の作成だ。だが、最初に作った異空間とは違い、中の空間は大雑把でいい。必要なのは呪いを吸い込み、外に出さないこと。だから取り出す事は考えなくていい。そして中の時間の流れは戻るように。

 よし…これで準備は整った。

「テン! ありったけの呪いを祓う魔力を僕に!」

「キュー」

 テンはウカノの言葉に嫌な予感を感じていた。それは特別理論的なものではない、あくまで直感的なものだ。いつもならウカノの指示には信頼と共に考えるよりも早く従う。しかし今回はいつもと違うウカノの雰囲気に躊躇いが生まれた。

「テン!」

「キュ キュー!」

 それでも、いつになく必死なウカノの様子に従わざるを得なかった。ウカノの指示通り、自分に残っているありったけの魔力をテンへと放つ。いままでなんとか気合いで動き続けてきたが、とうとう動けなくなる。だがこれで良いと思った。だって今までウカノを信じる事で、困難な状況を打破してきたのだから。
 
 (これで条件は揃った…後は僕次第だ。)
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