杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜

メロのん

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第3章 身代わり

第123話 化物

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 元凶のいる場所に近づくにつれて天候が悪くなっていく。今日は雲一つ無い快晴だったのに、空にはどんよりとした雲が太陽の光を遮る。

 ポツ…ポツ…

 とうとう雨まで降り出してきた。

 奴との距離まですぐそこだ。全く隠す様子もなく己の存在感を撒き散らしているので間違うはずもない。

 そしてとうとう、樹々を抜けた先に奴を見つける。

「うぅっ…」

「キュ!」

 (なんだ…あれは。)

 奴の存在を視界に捉え、その気色悪さに思わず顔を顰め口元を抑える。

 山かと見間違うほどの巨体……だが、最も目を惹くのはその巨体ではない。

 光すら吸い込んでしまうかの様な黒い表面に、ヒトのカオやカラダの一部が無造作に生えている。そして、そのカオは苦悶の表情を浮かべたり、手足の一つ一つが動いている。

 だが、最も悍ましいのは……それらの体表が、おびただしいほどのドス黒い命で出来ていること。

 どう生きたらあんな命が出来上がるのか。どうしてそんな命で奴は構成されているのか。

 そして、どうしてこんな巨体を持つ奴が、こんな存在感を放つ奴が今まで僕たちに存在を気づかせずに過ごしてきたのか分からないことばかりだ。

 その存在を隠す術を持っていて、今は隠す必要が無くなったのか。それとも奴が一夜にして生まれたか。

 そんな疑問しか持てない存在だが、分かることが一つだけある。

 それは、コイツを野放しにしてはいけないということ。

「テン、コイツは必ずここで仕留める」

「キュ」

 もし、コイツが拠点へと攻めて来たら……ゾンとルア、巨人族もヨタドリたちも、全員無慈悲にもその命を奪われるだろう。

 それだけは何があっても許さない。たとえこの命にかけても。
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