杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜

メロのん

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第3章 身代わり

第120話 厄災

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 大蜘蛛によってされていた封印が壊れた。何も縛られることのなくなったソレは、ゆっくりと、だが着実に進む。

 進む方向は決まってない。ただ、気の向くままに。

 ソレが通った周囲は、緑豊かだった自然が嘘のように朽ち果て、活力を、色を失っていく。まるでその場所だけ時が止まったかのように。

「grrrrr…?」

 森の生き物たちが、ソレの存在から離れるように逃げていく。どんなに好戦的な、力を持った魔物ですら、今ばかりは恐怖を感じながら出来るだけ遠くへと逃げていく。

 そんな、ソレが自由に進行している中で、進行を妨げるモノたちが前を塞ぐ。

 双頭の白い大蛇

 人間部分がかなりの筋力を持つ半身半馬の生き物

 様々な生き物の特徴を併せ持つ合成獣

 獅子の下半身に大鷲の上半身を持つ生き物

 全身が真っ赤な業火に包まれた鳥

 その生き物たちは元を辿れば根幹は同じ。この世界の願いによって生み出された。

 この世に生きる生物たちとは生態が異なる。種を存続するために子孫を残すこともなければ食事も必要としない。

 魔物が、生き物として動物たちと格が違うように、その生き物たちは魔物とも格が違う。

 どんなに強力な力を持つ魔物が束になろうと、その生き物一体にすら及ばない。そんな生物としての格の違う強さを持つ生き物。

 そんな生き物たちがソレの進行を阻止するように前方を阻む。その理由は明確。ソレの進行を阻むためだ。

 その生き物たちとソレも、元は同じ。違ったのは、ソレ一体に宿命を背負わせてしまったこと。そして、そんなソレを救う力が無かったこと。

 姿、形は違えど魂の繋がりがある。そんな同胞をこんな醜い姿に変えてしまったこと、辛い役目を一体に背負わせてしまったこと、そしてソレが苦しんでいたのを知っていたのに救えなかったこと。

 それぞれが後悔と懺悔を胸に、せめてもの今出来ることはここで終わらしてやることだと決心する。

 そして、今や自分たちの姿など認識できなくなってしまったソレへと攻撃を仕掛けていく。
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