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第3章 身代わり
第118話 異変
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「ふあ~…」
(眠いな…起きるのが早かったか……と、そういえばエルフ族の集落に泊まらせてもらったのか。あまり環境によって眠れなくなるとかは無いと思っていたんだけどな。)
「キュー」
「おはようテン、テンも早起きだね。昨日は大人しくしてくれてありがとね、偉いぞー。」
「キュイキュイ!」
昨日我慢させた分わしゃわしゃと撫でやると、僕の手にぐりぐりと頭を擦り付けてくる。
そのまま胸に抱いて撫で続けていると段々と眠気が増してきた。まだ起きるには早い時間だしもう一眠りするとしよう。
☆
「ここでは我々が食べる野菜を主に育ててるんです。」
今日はエルフ族の集落を王と姫自ら案内してもらっている。集落の規模は500人ほどと、集落と評するには多く国と評するには少ない人数だ。
ただそれなりの人数がいるため区画ごとに役割を持たせ、それぞれの人に役職を分けているのだとか。
「これは王様に姫様、本日はこの場所に何かご入用ですか?」
「いや、特に用事があってきたわけでは無い。お客人にこの集落を案内しているのだよ。」
「この農場を管理している他の人は今は居ないのか?」
(農場に居るのは今声を掛けてきた農夫らしき1人しか見当たらない。しかし農場はかなりの大きさでとても1人では管理できるとは思えない。
僕が知ってる農業の知識は巨人族に教えてもらった程度だが、あの力と体力が規格外の巨人族でさえこの農場より小さい規模を数人で管理していた。)
「おやお客人、今はこの農場を管理するものは私1人ですよ?」
「そうなのか、でも普段は1人で管理するわけではないのだろう?」
「ふむ?ここを管理するのは5人ほどおりますがそれぞれが交代で1人ずつ管理しておりますが。」
「この規模を1人ずつだと?それはかなりの労力を要するのでは?」
「ははは、何をおっしゃいますか。この農場の管理程度魔法を扱って管理するため1人でも十分ですよ。」
「魔法?農業に魔法が活かせるの?」
「あらルアちゃん、もしかして魔法が好きなのかしら?そうよ、農業に魔法を活用してるのだけれど是非私が教えてあげるわ!」
(ルアは錬金術など魔法を扱って日常生活を豊かにする工夫が好きだからな、この農業に活用してるのも気になったのだろう。)
そしてルアに教えるのが嬉しいのだろうエリンが嬉々としてルアに農業に魔法を活かす技術を教えている。
(こういうのは僕よりもルアの方が上手く活かせるからな、帰ったらルアの好きにイジらせてみよう。)
☆
「集落の案内は一通り終わったな。」
「ありがとう、色々と為になったよ。僕たちの知らない魔法や植物の活用方法など、帰ったら僕らの方でも試してみるよ。」
「おいしい調味料いっぱいー!これからはご飯がもっと美味しくなるねー!」
「ふふふっ、ゾン君にとっては食事が1番なのね。でも自分たちだけで美味しい食事が作れたとなっても、また私の料理を食べにきて欲しいわ…」
「もちろんだよー!エリンさんの作る料理毎日食べたいもんー!」
「わあ!なんて良い子なの!!」
「色々と世話になった分僕たちからもお礼をしないとな。」
(お礼は何が良いかと考え、そういえば魔物に対するエルフ族の反応を思い出す。あの恐れようからすると、魔物を狩ったことはなさそうだしその素材ともなると貴重だろう。ならばお礼は魔物の素材がいいか。)
そうして空間魔法で魔物の素材を取り出す。
「「いったいどこから!?」」
「ん?ああこの魔法か。普段から常用してたから忘れていたが僕が創り出したほぼオリジナルの魔法だな。空間魔法と呼んでいるんだが、異空間を創り出して、そこに物などを保管しているんだ。」
「オリジナル魔法を創り出すなど稀代の魔法使いではないか…」
「ははは、そうでもないぞ。たまたまお手本となる存在が身近にいただけだからな。」
「キュルー?」
「それに単純な魔法の扱いなら僕よりもゾンとルアの方が上手いからな。」
「なに?ウカノ殿よりゾン君とルアちゃんの方が上手く魔法を扱えるのか?」
「少なくとも攻撃魔法に関してはそうだな。僕が魔物を1人で倒すとなると、まあ倒せないことはないだろうがかなりキツイし倒したこともないがゾンとルアはすでに魔物を何度も狩っているからな。」
「「「「え?」」」」
「えへへー!」
「それは本当なのか?」
「本当だよー!」
「…さっきから驚きの連続で言葉が出ないよ。それとその素材はまさか…?」
「これは僕たちからのお礼を込めて魔物の素材を贈らせてもらうよ。」
「い、いいのか?」
「ああ構わない。素材はかなり持ち合わせているからな。何かそちらで活かしてもらえればいい。」
「そうか、それならばありがたく頂くとしよう。」
それからは空間魔法についてやゾンとルアについてのこと、普段の生活の様子などこちらの事を話した。ホーンとエリンはゾンとルアについて、サハンとマーシャは空間魔法について興味津々だった。
和気あいあいと会話をしていたその時、今までに感じたことのないほどの強烈な悪寒を感じ取った。
「今のは……?」
「キュー…」
テンは毛を逆立て僕らの拠点がある方角、森の深層部を見つめ続ける。
「い、いったい今のはなんなのだ?」
「分からない…だが森の深層部で何かよくない事が起こったことだけは分かる。」
(眠いな…起きるのが早かったか……と、そういえばエルフ族の集落に泊まらせてもらったのか。あまり環境によって眠れなくなるとかは無いと思っていたんだけどな。)
「キュー」
「おはようテン、テンも早起きだね。昨日は大人しくしてくれてありがとね、偉いぞー。」
「キュイキュイ!」
昨日我慢させた分わしゃわしゃと撫でやると、僕の手にぐりぐりと頭を擦り付けてくる。
そのまま胸に抱いて撫で続けていると段々と眠気が増してきた。まだ起きるには早い時間だしもう一眠りするとしよう。
☆
「ここでは我々が食べる野菜を主に育ててるんです。」
今日はエルフ族の集落を王と姫自ら案内してもらっている。集落の規模は500人ほどと、集落と評するには多く国と評するには少ない人数だ。
ただそれなりの人数がいるため区画ごとに役割を持たせ、それぞれの人に役職を分けているのだとか。
「これは王様に姫様、本日はこの場所に何かご入用ですか?」
「いや、特に用事があってきたわけでは無い。お客人にこの集落を案内しているのだよ。」
「この農場を管理している他の人は今は居ないのか?」
(農場に居るのは今声を掛けてきた農夫らしき1人しか見当たらない。しかし農場はかなりの大きさでとても1人では管理できるとは思えない。
僕が知ってる農業の知識は巨人族に教えてもらった程度だが、あの力と体力が規格外の巨人族でさえこの農場より小さい規模を数人で管理していた。)
「おやお客人、今はこの農場を管理するものは私1人ですよ?」
「そうなのか、でも普段は1人で管理するわけではないのだろう?」
「ふむ?ここを管理するのは5人ほどおりますがそれぞれが交代で1人ずつ管理しておりますが。」
「この規模を1人ずつだと?それはかなりの労力を要するのでは?」
「ははは、何をおっしゃいますか。この農場の管理程度魔法を扱って管理するため1人でも十分ですよ。」
「魔法?農業に魔法が活かせるの?」
「あらルアちゃん、もしかして魔法が好きなのかしら?そうよ、農業に魔法を活用してるのだけれど是非私が教えてあげるわ!」
(ルアは錬金術など魔法を扱って日常生活を豊かにする工夫が好きだからな、この農業に活用してるのも気になったのだろう。)
そしてルアに教えるのが嬉しいのだろうエリンが嬉々としてルアに農業に魔法を活かす技術を教えている。
(こういうのは僕よりもルアの方が上手く活かせるからな、帰ったらルアの好きにイジらせてみよう。)
☆
「集落の案内は一通り終わったな。」
「ありがとう、色々と為になったよ。僕たちの知らない魔法や植物の活用方法など、帰ったら僕らの方でも試してみるよ。」
「おいしい調味料いっぱいー!これからはご飯がもっと美味しくなるねー!」
「ふふふっ、ゾン君にとっては食事が1番なのね。でも自分たちだけで美味しい食事が作れたとなっても、また私の料理を食べにきて欲しいわ…」
「もちろんだよー!エリンさんの作る料理毎日食べたいもんー!」
「わあ!なんて良い子なの!!」
「色々と世話になった分僕たちからもお礼をしないとな。」
(お礼は何が良いかと考え、そういえば魔物に対するエルフ族の反応を思い出す。あの恐れようからすると、魔物を狩ったことはなさそうだしその素材ともなると貴重だろう。ならばお礼は魔物の素材がいいか。)
そうして空間魔法で魔物の素材を取り出す。
「「いったいどこから!?」」
「ん?ああこの魔法か。普段から常用してたから忘れていたが僕が創り出したほぼオリジナルの魔法だな。空間魔法と呼んでいるんだが、異空間を創り出して、そこに物などを保管しているんだ。」
「オリジナル魔法を創り出すなど稀代の魔法使いではないか…」
「ははは、そうでもないぞ。たまたまお手本となる存在が身近にいただけだからな。」
「キュルー?」
「それに単純な魔法の扱いなら僕よりもゾンとルアの方が上手いからな。」
「なに?ウカノ殿よりゾン君とルアちゃんの方が上手く魔法を扱えるのか?」
「少なくとも攻撃魔法に関してはそうだな。僕が魔物を1人で倒すとなると、まあ倒せないことはないだろうがかなりキツイし倒したこともないがゾンとルアはすでに魔物を何度も狩っているからな。」
「「「「え?」」」」
「えへへー!」
「それは本当なのか?」
「本当だよー!」
「…さっきから驚きの連続で言葉が出ないよ。それとその素材はまさか…?」
「これは僕たちからのお礼を込めて魔物の素材を贈らせてもらうよ。」
「い、いいのか?」
「ああ構わない。素材はかなり持ち合わせているからな。何かそちらで活かしてもらえればいい。」
「そうか、それならばありがたく頂くとしよう。」
それからは空間魔法についてやゾンとルアについてのこと、普段の生活の様子などこちらの事を話した。ホーンとエリンはゾンとルアについて、サハンとマーシャは空間魔法について興味津々だった。
和気あいあいと会話をしていたその時、今までに感じたことのないほどの強烈な悪寒を感じ取った。
「今のは……?」
「キュー…」
テンは毛を逆立て僕らの拠点がある方角、森の深層部を見つめ続ける。
「い、いったい今のはなんなのだ?」
「分からない…だが森の深層部で何かよくない事が起こったことだけは分かる。」
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