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第3章 身代わり
第115話 魔女
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かつて賢者と呼ばれたエルフ族の者がいた。七色の魔法を扱いその魔法は見る者を魅了し、その魔法の標的にされた者で生き残った者はいない。そう語られるほどの魔法の腕を持ち、全種族の中で最も偉大な魔法使い。故に賢者と呼ばれた。
彼女が生きた時代は異種族間での争いが絶えなかった。異種族間での助け合いなど存在せず、争いに敗れた弱き種族は住むところを奪われ淘汰されていった。
エルフ族は自ら攻めることはなく、攻められれば護るために戦うといったスタンスであった。そこに属する賢者と呼ばれた彼女もまた自分の住む国を護るために戦った。
1人で軍相手に圧倒する彼女に、エルフ族を攻める種族は無惨にも散っていった。しかし相手は数度の敗北で進行を止めるほど諦めが悪く無かった。
厄介なのはとてつもない魔法を扱う存在1人だけ、アイツさえどうにか出来れば勝利を手にできる。そう考えた国の上層部はあらゆる手を尽くした。
彼女の気を引くための囮部隊を作り、彼女の気を引いているうちに別の場所から攻め立てる戦法。彼女の魔力が切れるまで何度も攻め立てる戦法。
しかしどの戦法も虚しく犠牲を増やすだけだった。囮を引くための部隊も彼女の魔法に対抗する術を持たず囮の役割を持たなかった。彼女の魔力が切れるまで数人のグループを細かく特攻させたが、最小限の魔力だけであしらわれ彼女の魔力が切れることも無かった。
そうして彼女に対抗する為の策が悉く敗れていき徐々に彼女を世界一の魔法の使い手、賢者だと畏れ敬う声が広がっていった。そうして噂が広まっていくにつれて彼女の住まう国を攻めようとする種族も無くなっていった。
そして彼女の住む国を攻めた周辺諸国は彼女から受けた甚大な被害により戦争が出来なくなった。賢者1人の影響力で次第に争いが無くなっていき、平和な世の中へと移り変わっていった。
そんな世の中で彼女旅をし、心優しきヒト族の青年と出逢い恋に落ちた。彼は力は無けれど真摯に商売を行い、小ぢんまりながら自分の商店を営んでいた。
他の商店では彼女が毎度持ってくる希少な素材目当てに金儲けしか考えていない人間しかいなかった。そんな中で彼は変に吹っかけるどころか、滅多に手に入らない希少な素材だからということで多少の色をつけてくれる始末。
彼女にとってそんな真摯な対応に好感を持ち、それからは彼の店を利用するようになった。そうして何度も交流する内に深い仲となり子供も産まれた。
賢者と呼ばれた彼女が卸す商品を取り扱う商店は順調に大きくなっていった。愛する者に自分の商売に、順調な生活を送っていた。
しかし成長し続ける商店、その富を狙う者たちがいた。その者たちはエルフ族の女が賢者だとは知らず、ただ強者だとは知っていた。それ故彼女のいない時に決行し、トンズラすればいいと気楽に考えていた。
そうして強盗を決行する日、予定通りに侵入した店には店主とその子供がいた。強盗にとっては邪魔存在。抵抗する力の無い青年とその子供の命を呆気なく奪い、店の金品をあらかた奪って引いていった。
やがて帰ってきた彼女は悲惨な現場を目にする。愛する旦那と愛する子供の冷たくなった姿。無抵抗の、逃げようとしたその姿を後ろから躊躇いなく襲ったであろう傷跡。これからどんな風に成長するのか毎日話し合っていた子供の、もう成長しなくなった姿。
なぜこんな事をしたのか、誰がこんな事をしたのか、どうして自分の身近な人間が。色んな感情が、考えが駆け巡った。だが、瞬時にどうでもいいも一蹴する。
彼女が生きている理由、その根幹たらしめる者たちは今や居ない。そんな世界に縋り付くほど未練もない。もうどうでもいい。自分も、2人のいない世界も。
そうして賢者の住むヒト族の国は一夜にして滅んだ。
どのように滅んだのか等は一切言い伝えは残っていない。残っている言い伝えは一つ。
「あれは魔女の呪い」だと。
彼女が生きた時代は異種族間での争いが絶えなかった。異種族間での助け合いなど存在せず、争いに敗れた弱き種族は住むところを奪われ淘汰されていった。
エルフ族は自ら攻めることはなく、攻められれば護るために戦うといったスタンスであった。そこに属する賢者と呼ばれた彼女もまた自分の住む国を護るために戦った。
1人で軍相手に圧倒する彼女に、エルフ族を攻める種族は無惨にも散っていった。しかし相手は数度の敗北で進行を止めるほど諦めが悪く無かった。
厄介なのはとてつもない魔法を扱う存在1人だけ、アイツさえどうにか出来れば勝利を手にできる。そう考えた国の上層部はあらゆる手を尽くした。
彼女の気を引くための囮部隊を作り、彼女の気を引いているうちに別の場所から攻め立てる戦法。彼女の魔力が切れるまで何度も攻め立てる戦法。
しかしどの戦法も虚しく犠牲を増やすだけだった。囮を引くための部隊も彼女の魔法に対抗する術を持たず囮の役割を持たなかった。彼女の魔力が切れるまで数人のグループを細かく特攻させたが、最小限の魔力だけであしらわれ彼女の魔力が切れることも無かった。
そうして彼女に対抗する為の策が悉く敗れていき徐々に彼女を世界一の魔法の使い手、賢者だと畏れ敬う声が広がっていった。そうして噂が広まっていくにつれて彼女の住まう国を攻めようとする種族も無くなっていった。
そして彼女の住む国を攻めた周辺諸国は彼女から受けた甚大な被害により戦争が出来なくなった。賢者1人の影響力で次第に争いが無くなっていき、平和な世の中へと移り変わっていった。
そんな世の中で彼女旅をし、心優しきヒト族の青年と出逢い恋に落ちた。彼は力は無けれど真摯に商売を行い、小ぢんまりながら自分の商店を営んでいた。
他の商店では彼女が毎度持ってくる希少な素材目当てに金儲けしか考えていない人間しかいなかった。そんな中で彼は変に吹っかけるどころか、滅多に手に入らない希少な素材だからということで多少の色をつけてくれる始末。
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そうして強盗を決行する日、予定通りに侵入した店には店主とその子供がいた。強盗にとっては邪魔存在。抵抗する力の無い青年とその子供の命を呆気なく奪い、店の金品をあらかた奪って引いていった。
やがて帰ってきた彼女は悲惨な現場を目にする。愛する旦那と愛する子供の冷たくなった姿。無抵抗の、逃げようとしたその姿を後ろから躊躇いなく襲ったであろう傷跡。これからどんな風に成長するのか毎日話し合っていた子供の、もう成長しなくなった姿。
なぜこんな事をしたのか、誰がこんな事をしたのか、どうして自分の身近な人間が。色んな感情が、考えが駆け巡った。だが、瞬時にどうでもいいも一蹴する。
彼女が生きている理由、その根幹たらしめる者たちは今や居ない。そんな世界に縋り付くほど未練もない。もうどうでもいい。自分も、2人のいない世界も。
そうして賢者の住むヒト族の国は一夜にして滅んだ。
どのように滅んだのか等は一切言い伝えは残っていない。残っている言い伝えは一つ。
「あれは魔女の呪い」だと。
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