杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜

メロのん

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第3章 身代わり

第96話 エルフ族

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 先にいるのは2人か。まだ相手はこちらに気づいていない。まだ森を抜けていない。森の中にどうしてヒトがいるのかという疑問は残るがそれは当人たちに聞くとしよう。

「ゾン、ルアは僕の後ろで付いてきて。」

「「うん。」」

「テンと樹鼠も僕の服の中で大人しくしておいてね。」

「キュイ!」

「キュル!」

 テンと樹鼠が服の中に入り込むが、2匹でじゃれているのか少しくすぐったい。服の上から2匹を撫でる事でようやく落ち着いた。

 そうして進み、目算5メートルほどのところで樹の上にいる相手がこちらに気づく。

「止まれ!何者だ!」

 分かってはいたがやはり歓迎はされないみたいだな。

「僕はウカノだ、そして後ろの2人は僕の子供だ。そちらに危害を与えるつもりはない。」

 両手を上げ、危害を加えない事をアピールするがそう簡単に信じることが出来ないのだろう。2人で話し込み始めてしまった。こそこそ話しているつもりなのだろうがちょくちょくと会話の内容が耳に入ってくる。

「おいどうする?」

「どうするもなにもみるからに怪しいだろう。しかもあいつら森の中からやって来たんだぞ?もしかしたらヒトに化けたナニカかも知れないぞ?」

「な、なんだよナニカって。でも子供もいるんだぞ?何か困っているなら助けてやった方がいいんじゃないか?」

「馬鹿!お前…子供がいるからこそおかしいんだろ。この森の中を子連れで歩くことなんて出来やしねえよ。」

「確かに…」

「あー、話してる所悪いがいいか?」

「な、なんだ?」

「僕らは南の国から森を渡ってここまで来たんだ。南の国でたまたまこの2人と出会ってな。そこからだと見づらいだろうがこの2人はおそらくエルフ族だ。この2人を保護する目的もかねて南の国を抜け出し別の国を目指していた所、たまたまここに辿り着いたというわけだ。」

「「ッ!?」」

 ある程度用意していた設定を話したら、エルフ族という単語を言った途端動揺が伝わって来た。

「念の為確認させてもらっても構わないか?」

「ああ、危害を加えないと約束するのなら。」

「もちろんだ、危害は加えない。」

「ならば構わない。」

 そうして2人の内1人が樹の上から降りて来てこちらへと警戒しながらやってくる。相手の姿がハッキリと見えた所で、どうしてエルフ族という単語にあそこまで動揺したのかが分かった。

 こちらへやって来るのは若い、正に青年という年頃の美青年。金髪の肩まで靡かせた長髪からチラッと見える耳は長く尖っている。コイツらもエルフ族という訳か。

「少し確認させてもらうな。」

「「ウカノ…?」」

 少し不安げな様子で僕を窺う2人。

「大丈夫だよ、危害は加えさせないから。」

「「うん。」」

 そう言って2人を僕の横へと出す。2人が出来るだけ安心できるように肩へと手を乗せる。

「っ!?いや違うな…。ああ、エルフ族で間違いない。疑ってすまなかったな。その詫びという訳ではないが我らの国へと案内させてもらえないか?」

 これは渡りに船か。もしかしたら何か呪いの手がかりが得られるかもな。

「それはこちらとしてもありがたい。」

 ゾンとルアを除いたら初めての異種族との交流になる。目の前の青年が、ゾンとルアをエルフ族だと分かってからの柔らかくなった態度を見ればそこまでおかしな事にはならないだろう。
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