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第3章 身代わり
第72話 一心同体
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獲物の正体に驚くゾンとルアだが、戦場でいつまでも呆けたままではいられない。正気を取り戻し一瞬2人で視線を交わしゾンが右から回り込むように駆けていく。
おそらく昨日のうちに2人で戦い方を練ってきていたのだろう、2人の中で言葉を交わさずとも意思疎通を図れている。ゾンは炎の魔法が1番得意としており、ルアは非戦闘系の錬金術などの魔法が1番得意だがそれを除けば風魔法が得意としている。ゾンの炎魔法は森の中では扱いづらく、周囲に被害が出る規模の魔法は命の危険が迫るまで禁止している。
そんななかで2人がどんな戦い方をするのか楽しみだ。
ゾンがルアと挟み込むように回り込んだ後、相手の注意が別の所へ向いた瞬間に駆け出す。それと同時に周囲に炎の玉を3つ展開する。炎の玉はテンより2回りほど大きい。とはいえテンの場合は緻密な魔力操作により恐るべき濃度で圧縮してあるので、それに比べると魔力の濃度も威力もテンには遠く及ばないだろう。ただ動きながら魔法を展開しそれを維持するのは大した技術だ。
「グルァァ!」
ある程度まで近づいた所で狼の魔物に気づかれる。まだ距離としては遠い。あの距離では魔法を当てるのは難しいだろう。
だが2人にとっては最初の奇襲が成功すれば御の字くらいの感覚だったのだろう。ゾンが駆け出すと同時に魔法を練り出していたルアが不可視の刃を獲物の後ろ脚目掛け放つ。
「グルァッ!?」
ゾンに注意が向いていたため後ろ脚に命中するが、せいぜい擦り傷を与えた程度だ。それでも相手としては見えない何かに攻撃されたことに恐怖を抱く。どこから攻撃されたと周囲を見渡すが、すでにそこにはルアはいない。2人にとって一撃が致命傷になるとは元より思ってないようで手数で勝負する作戦のようだ。
そしていつまでも見えない何かを探しているようだがゾンの存在が頭から抜けてんじゃないのか?
存在が薄れたゾンが今度は炎の玉を命中させる。それに対し今度はゾンへと注意を向けるが、そうするとまた見えない位置からルアが不可視の刃を放つ。
なるほど。確かにいい作戦だ。相手に致命傷を与えるほどの攻撃が難しいなら手数で勝負する。そしてその手数を増やすためにお互いが交互に注意を引く。
自分たちの手札を存分に活かし、普段からの僕とテンの狩りを参考にした獲物の注意の引き方。作戦面でもしっかり考えられている。初めての狩りでここまで惚れ惚れする連携を取ることができるのは、2人の関係が密接である事を何よりも示しているな。
だがしかし、それで獲物が仕留められるわけではない事は2人が何よりも知っているだろう。
致命傷というほどのダメージを負っていないがいつまでも攻撃が当たらない事。見えない何かに攻撃されてることに痺れを切らした相手はその場に佇みゾンを一心に睨み魔力を集める。
そう、あの時と同じように。
離れているのに2人が一瞬身を強張らせたのが分かった。2人に魔物という存在の、狩りという行為の恐ろしさを教えたトラウマ。2人で乗り越えてみせるんだ。
おそらく昨日のうちに2人で戦い方を練ってきていたのだろう、2人の中で言葉を交わさずとも意思疎通を図れている。ゾンは炎の魔法が1番得意としており、ルアは非戦闘系の錬金術などの魔法が1番得意だがそれを除けば風魔法が得意としている。ゾンの炎魔法は森の中では扱いづらく、周囲に被害が出る規模の魔法は命の危険が迫るまで禁止している。
そんななかで2人がどんな戦い方をするのか楽しみだ。
ゾンがルアと挟み込むように回り込んだ後、相手の注意が別の所へ向いた瞬間に駆け出す。それと同時に周囲に炎の玉を3つ展開する。炎の玉はテンより2回りほど大きい。とはいえテンの場合は緻密な魔力操作により恐るべき濃度で圧縮してあるので、それに比べると魔力の濃度も威力もテンには遠く及ばないだろう。ただ動きながら魔法を展開しそれを維持するのは大した技術だ。
「グルァァ!」
ある程度まで近づいた所で狼の魔物に気づかれる。まだ距離としては遠い。あの距離では魔法を当てるのは難しいだろう。
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「グルァッ!?」
ゾンに注意が向いていたため後ろ脚に命中するが、せいぜい擦り傷を与えた程度だ。それでも相手としては見えない何かに攻撃されたことに恐怖を抱く。どこから攻撃されたと周囲を見渡すが、すでにそこにはルアはいない。2人にとって一撃が致命傷になるとは元より思ってないようで手数で勝負する作戦のようだ。
そしていつまでも見えない何かを探しているようだがゾンの存在が頭から抜けてんじゃないのか?
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なるほど。確かにいい作戦だ。相手に致命傷を与えるほどの攻撃が難しいなら手数で勝負する。そしてその手数を増やすためにお互いが交互に注意を引く。
自分たちの手札を存分に活かし、普段からの僕とテンの狩りを参考にした獲物の注意の引き方。作戦面でもしっかり考えられている。初めての狩りでここまで惚れ惚れする連携を取ることができるのは、2人の関係が密接である事を何よりも示しているな。
だがしかし、それで獲物が仕留められるわけではない事は2人が何よりも知っているだろう。
致命傷というほどのダメージを負っていないがいつまでも攻撃が当たらない事。見えない何かに攻撃されてることに痺れを切らした相手はその場に佇みゾンを一心に睨み魔力を集める。
そう、あの時と同じように。
離れているのに2人が一瞬身を強張らせたのが分かった。2人に魔物という存在の、狩りという行為の恐ろしさを教えたトラウマ。2人で乗り越えてみせるんだ。
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