杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜

メロのん

文字の大きさ
上 下
76 / 132
第3章 身代わり

第71話 リベンジ

しおりを挟む
「どうした2人とも?眠れないかい?」

「うん。ワクワクして眠れない。」

「私は今から緊張しちゃってる…」

 明日、2人だけで狩りをする。2人にその話をした時は喜んだり簡単に即断する事はなかった。それでもいつか必ず通る道であり、僕が2人だけで出来ると判断したのであれば出来るという自信の元最終的に2人だけで狩りをする判断をした。

 よく狩りに同行しているといっても狩りをするのは初めてなのだ。興奮して眠れないのも無理ないか。

「おいで2人とも。」

 2人を両脇に寝かせ頭を撫でてやる。しれっとテンも僕のお腹の上で頭をお腹に擦り付けてくる。しょうがないので2人の合間を縫ってテンも撫でやる。

 しばらくすると安心したかのように穏やかな寝息が両隣から聞こえてきた。大丈夫だぞ、2人のことは何がなんでも僕が守るから。

 ☆

「「おはようウカノ!」」

「ああおはよう2人とも。早起きだね。」

「いつもより早く目が覚めちゃった。」

「そうか。今から興奮しすぎて疲れないようにね。」

「「うん。」」

 いつも通りご飯を済ませ、少しの食後休憩を挟む。その間も2人はソワソワとどこか落ち着きがない様子だった。

 だが2人のそんな時間もそろそろ終わりだ。

「2人ともそろそろ行こうか。」

「「うん…」」

 どこかいつもと違う様子の2人。ただあえてそれに気づかないフリをしながら、僕はいつも通りの態度でいつも通りの狩りに行くように振る舞う。そしてそのまま霧の領域外へと転移する。

 「ここからは2人に任せるよ。2人の思うように行動してくれ。」

「「分かった。」」

 獲物と戦うだけが狩りではなく、獲物を見つける過程もまた狩りなのだ。こちらが相手より先に気づければかなり優位に、相手に先に気づかれれば逆に不利となる。だからこそ獲物を探すという行為は狩りにおいて重要なためここから2人に任せる。

 いつもより遅い速度で進む2人。2人の間に会話は無いがそれでも注意すべき所をそれぞれ別の所を担当出来ているのはただ2人が双子だからという理由だけではないだろう。いつも狩りに同行する上で、ただ付いてくるだけでなく何に注意するべきか、どこを見るべきかを学んでいたのだろう。

 さらに時間をかけて進んでいくと僕の感知範囲に生き物の気配が入った。これは…なるほどおもしろい。2人にとってこれ以上いい相手はいないだろう。

 僕がその存在に気づいてから数分。2人もその気配を感じ、そしてその正体を視認する。

「「ンッ…」」

 少し離れた僕の元まで2人が息を呑む音が聞こえた気がした。目の前にいるのは狼型の魔物。2人を初めて狩りに同行させた時に狩った獲物であり、2人に狩りの、命のやり取りの恐ろしさをその胸に刻み込んだ魔物だ。

 アイツを乗り越えていくんだ。ゾンとルアにはそれが出来るはずだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...