杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜

メロのん

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第2章 拠点開発

第60話 お前らの強さを認めるしかないみたいだ

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 狩りという言葉を聞いて、いや言葉が通じている様子は無いからなんとなくそのニュアンスを感じ取ってだろうか、ヨタドリたちが自分たちもと興奮し始めた。

 だがこいつら間違ってないか?僕たちの狩りは地上の獲物を狩るのだ。ヨタドリたちは水中での狩りが上手いというのは、水中での華麗な泳ぎを見ればまあ分かる。とはいえ地上の獲物の場合全く機動力の無いヨタドリが狩れるとは思えない。そこらへんわかっているのだろうか?

「なあ、僕らは地上の獲物を狩りに行くのだがそれを分かっているか?」

「「「「クァクァァ!!」」」」

 ……だめだコイツら。僕の言葉なんてどうでも良く早くいこうぜ!といった感じだ。

 僕らの狩りの仕方は基本隠れて相手の背後を取り、テンの機動力を活かした戦い方なんだがコイツらと狩りに行くとそれも出来なそうだ。今更行かないなんて言えないし僕はなんとか被害が出ないように注意を払うしか無いか。

「しょうがないからお前らを狩りに連れて行くがせめて被害が出ないように注意深く戦ってくれよ。それで、お前ら全員で行くのか?」

「ククァ クァ」

 おそらく群れの中でリーダー的存在なのだろう1番大きな個体が鳴くと、5頭が前に出て来た。4頭は群れの中でも体が大きい個体で戦闘力に秀でているのだろうと分かる。ただ残り1頭は群れの中でも1回り小さく、体の線も細い。子供…というほど小さくなさそうだが少し異質な存在だな。

「お前らが一緒に狩りに行くという事でいいんだな。さっき見せたようにみんなまとめて転移するから僕の周りに集まってくれ。よし、とりあえず霧の領域外まで行くから驚かないようにな。」

 そうして僕とテン、ヨタドリ6頭と共に霧の領域外へと転移する。ヨタドリたちは先ほどまで見ていた景色から一瞬で別の景色に変わった事に驚いて周りをキョロキョロ見渡しているが、最初の転移に関しては驚くなという方が無理だろう。

「とりあえずヨタドリたちのやりたいようにやってくれ。テンは僕と一緒にヨタドリたちのサポートだ。もしヨタドリが危険になったらいつでも助けに入れるようにしてくれ。」

「キュイ!」

 ヨタドリとの狩りはこれが初めてだ。ただヨタドリたちの狩りの仕方は分からず、そんな状態で共闘しようとするとかえって危険になってしまう可能性がある。なのでひとまずヨタドリたちに全面的に任せ、僕とテンはいつでもサポート出来るように準備をする。

 ヨタドリたちは前3、後ろ3の配置を取りながら周囲を警戒しながら獲物を探す。あの配置が前後左右警戒出来る配置なのだろう。

 そのまま進む事数分、僕の感知範囲に1体の気配を感じた。テンも気づいているが、ヨタドリたちはまだ気づいていないようだ。自慢というほどでも無いが僕とテンの気配感知はそこら辺の魔物よりも幾分も優れているから、それに比べてヨタドリたちはまだ相手を捉えられないのも仕方ない。

「クァ」

 さらに少し進んだ所で先頭の1頭が前方の敵に気付いたようだ。そして全員が敵に気づく。そこからの行動が早い。特にやり取りなしに相手を囲むように散開し敵に近づいていく。視界に入った敵は馬型の魔物だ。馬型の魔物はこの森では種類が多いが、あいつは身体強化の魔法のみを扱うシンプルなタイプだ。ただシンプルがゆえに強く、単純な身体強化による機動力の上昇と後ろ蹴りは侮れない。

 機動力の高い相手はヨタドリには相性が悪そうだと思いながらいつでも助けに入れる準備をしておく。相手もヨタドリたちに気づいたようだがヨタドリたちが先に仕掛ける、がヨタドリたちの行動に思わず驚いてしまう。

 なんとそれまで2足歩行でよたよた歩いていたヨタドリたちが、腹ばいになり地面を滑るように驚くほどのスピードで移動し始めた。いや、滑るようにではなく実際に滑っていた。移動跡をよく見てみると薄っすらと地面が氷に覆われている。魔力が動いているから魔法を使って氷を生み出したのだろう。

「ブルルルル!」

 6頭のヨタドリたちが獲物の周りをグルグル回るように翻弄し、馬型の魔物は狙いを定められず困惑している。

 そんなヨタドリたちの中で1際存在感を放っているのはあの小さいヨタドリだ。周りのヨタドリよりも圧倒的に速いスピードで移動し、馬型の魔物に近づいては離れを繰り返し積極的に注意を引いている。

 そしてそんな小さいヨタドリが注意を引いている隙に残りの5頭が嘴に、まるで槍のように氷を纏いその嘴で攻撃し続ける。そして馬型の魔物は為す術もなくそのまま倒されてしまった。

「キュイー!」

 凄いな…あの機動力を出す移動方法はもちろん、何より群れでの完璧な狩り。戦闘中にコミュニケーションは取っていなかったが、それでも完璧な意思疎通で獲物の注意を引く個体、攻撃する個体と別れ己の役割を全うしていた。

 僕たちも複数を相手取ることは何度もあったがあそこまで完璧な意思疎通を図っていた魔物には出会った事がない。最初にヨタドリと出会った時のアホの印象が強すぎて侮っていたが、群れでの戦闘力はかなりのものだな。

「「「「「「クァ!」」」」」」

「お疲れ様。正直みくびっていたよ。あそこまで強いとは見直した。お前らあんな事が出来たんだな。」

 この森に来てからどんな相手であれ侮らないよう気を付けていたんだけどな…
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