杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜

メロのん

文字の大きさ
上 下
58 / 132
第2章 拠点開発

第56話 な、仲間…?

しおりを挟む
 複数の生き物の気配を感じながら、これらの気配が大蜘蛛が言っていた魔物だろうと半ば確信しながらそちらに進んでいく。それらの気配が全く動いていない事に少しの不信感を抱きつつさらに進むとようやくその姿が見えてきた。

 そうして僕の目に入ってきたその姿に思わず困惑する。全長は僕と同じくらいだろうか?頭部は体に比べると大分小さく黒色で更に口元がまるで嘴のように先に伸びている。首元に黄色と白のマークがあり、背中は黒くお腹は白い。腕は黒色でその形はまるで魚のヒレだろうか。足はかなり短いものが2つ。そして何より僕を困惑させたのがアイツらが2足で立っているという事だ。

 僕が今までにみた2足歩行の生き物は多くない。いや、鳥類とヒトに連なる種族しか見た事がないからむしろ少ない。アイツらはもしかしてどちらかなのだろうか?嘴は鳥に近いだろう。ただあの薄っぺらい腕であの体が飛べるとは思えない。アイツらのお腹は丸く、空を飛ぶにはあまりに非効率な体型だ。いや、もしかしたら魔法で飛ぶような事が出来るのかもしれないがそれはもはや鳥である必要は無いだろう。

 となると薄そうだがヒト族に連なる種族か?僕は見たことが無いが、どうやらこの世界には動物の特徴を1部持った獣人という種族がいるらしい。薄いと思うが可能性としてはあるのか…?

 さて、ファーストコンタクトをどうするべきか。ヒト族に連なる種族であれば友好的に、鳥類の魔物であれば敵意が無いことをアピールしながら近づいていけば良いのだが。

「テンはアイツらの事をどう思う?魔物かヒト、どちらに近いかな?」

「キュ…キュキュ…キュイ……?」

 テンの勘ならもしやと思ったがどうやらテンにも区別がつかないようだ。

「キュウ…」

「いや、僕にも分からなかったんだ。落ち込む必要はないさ。それに今から確かめに行けば良いんだしな。もし襲われたらその時は頼りにさせてもらうよ。」

「キュ!」

 考えても埒が明かないと結論づけ、敢えて気配を隠さず音を出し、相手に敵意が無いことをアピールしつつ接触する事にする。

 相手を刺激しないようゆっくり、ゆっくり一歩ずつ踏みしめて相手に近づき、ようやく相手の索敵範囲に入る。相手の複数がこちらに気づき、その場から動く事なく首だけをこちらに向ける。今の所特に敵意は感じないが、相手がこちらを探っているようなものも感じず何を考えているのか分からない。

 まさかの拒否されるでもなく相手が何を考えているのか分からないという予想外の展開だが、それでも相手に近づきほとんどの視線がこちらに向く。まだ距離としては10メートルほどあるが驚かせないためにもここら辺でいいか。

「あー、こちらに敵意はない。言葉が通じるか?」

 こちらの言葉に相手方が一斉に首を傾げる。30ほどの群れが一斉に首を傾げるその様子はシュールでなんだか可愛くも見える。

 ただそうなるとどうしようかと考えていると、群れの中でもいざ一際大きな、体調3メートルあるのではというモノが近づいてきた。近づいてきているが特に敵意は持ってなさそうだ。体調は3メートルあるが足が短いからか歩く速度は遅く、ヨタヨタと左右に揺れながらこちらに向かってくる。そしてこちらの目の前に来て僕の顔を見据え…

「クァー?」

「え?」

 そんな変な鳴き声を発しながら首を傾げるその姿に思わず困惑の声が漏れてしまった。相手がこちらの周りを回りながらに ジロジロと観察されるがそれを受け入れる。隣にはテンもいるのだがそちらよりも僕の方に強い興味があるようです、テンには全く視線を向けない。

 やがて観察し終えたのか僕の目の前に止まり、

「クァァァァァァァ」

 そんな鳴き声を発しながら僕に向かってペコリと頭を下げてお辞儀をする。

 な、なんなんだ…もしかしてこれがこの種族の礼儀なのか?とりあえず僕もやったほうがいいのか…?

 「よろしく頼む。」

 こちらも相手に倣って礼儀をしておく。

 こうして僕たちの初めて出会いはなんだか奇抜な出会いで始まった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...