杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜

メロのん

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第1章 安住の地を求めて

第31話 月と太陽

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「早速テンの出来るようになったことを見せておくれ」

「キュイ!」

 双子を寝かせたので外に出てテンの新しい能力を確認しに来た。

「キュー キュー キュー キュ!」

 まだ新しい力に慣れていないからか、踏ん張りながら魔法を発動しようとする。少しの間の後、周囲に紫色の玉が出来上がる。生物としての本能で忌避したくなるその玉は、近くの岩へと飛んでいく。そして岩に着弾すると、ジュワァと音をたてて岩が溶けはじめた。

「おお…すごいな」

「キュイー」

 毒…と酸か。体内へと入ったら恐ろしい強力な毒、そしてそれが効かないような強力な外皮を持つ相手なら酸で溶かす。テンの新しい能力はなかなかにえげつないようだ。
 
「テンにはこれまで以上に戦闘で頼りにさせてもらうな!」

「キュキュ!」

「それと実はな、今回新しい力を身につけたのはテンだけじゃないんだよ」

「キュ?」

「いくぞ…」

「キュキュ!? キュ!?」

 空間魔法を発動させ、テンの前から拠点内へとワープすると、外から戸惑ったテンの鳴き声が聞こえてくる。

「ははは、ビックリしてくれたか?」

「キュキュ!」

「ああごめんな、いきなりテンの前からいなくなって不安になってしまったか。これが僕の新しい力なんだ。これを使うと狩った獲物を保管したり移動するのが楽になるんだ。こちらにおいでテン。一緒に体験してみようか。いくよ」

「キュ!?  キュイキュイ!」

「ははは、くすぐったいよテン。」

 ☆

 テンが眠っている間の時間を埋めるかのようにテンとはしゃぎまくった。拠点に戻ると双子も目を覚まし、羊と雪フクロウにあやされていた。

「「だあー だうー」」

 そろそろこの子たちの名前を決めないとな。名前をつける、それは僕にとって覚悟の表れ。今までは、この子たちの本当の親ではないし、育てられるのか不安に思う部分はあった。親というにはまだ若い僕だけど、それでもこの子を育てると、護るという覚悟がついた。この子たちと最初に出会い、自分の心を奮い立たせるための覚悟とは違う。僕の命を賭けてもいい、そういう覚悟だ。今だって不安がないといえば嘘になる。でもそれでいいと思う。不安に思うならより周囲に気を配ればいい、襲いかかってくる不安を取り除けばいい。僕にはそれが出来るはずだ。いや…僕たち、だな。

 特徴的なのは髪色だろう。白髪の男の子に黒髪の女の子…そうだな、ずっとどんな名前にしようか考えていたが決まった。

「白髪の男の子、君にはゾンという名前を授ける。君の髪の色から太陽をイメージした名前だ。将来はゾン自身が、そして周りを元気にしてくれるような子になっておくれ。」

「だあ」

「黒髪の女の子、君にはルアという名前を授ける。君の髪の色から月をイメージした名前だ。将来ゾンが元気に活発になるなら、ルアは落ち着いて周りを宥められるような存在になっておくれ。」

「だあ」

隠と陽、お互いに対立した存在、かつ依存した関係。どちらかなくして存在はあり得ない。ゾンとルアがいつまでも離れませんように。
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